足袋

工房では足袋をはいて仕事をしています。作業場の母屋は4×6間=24坪の広さがありますが、そのうちの3分の2ほどは板張の床です。木取や下拵などの一次加工を終えたら、あとは靴を脱いで座業中心の作業となります。油圧のテーブルリフターを利用した立ち作業台も併用しますが、比率としては床に座り「馬」を使っての座業のほうが多いです。

座業中心なのは昔、木工を始める前に5年ばかり大工をしていたことも大きな理由です。大工の現場仕事ではむろん立ち作業用のテーブルなどはなく、床に馬を二三台並べその上に加工部材を置いての作業が基本です。材料を押さえるのはクランプなどではなくまずは自分の手足や胴体。膝で固定したり、材に座ったり。足も足袋なら仕上が済んだ材料にもじかに上がることができます。スニーカーなどの靴履きだと靴底の跡が付くのでそういうわけにはいきません。

作業用の足袋は厚手の木綿でできています。指付きの靴下を履いてからさらにこの足袋を履くのですが、重ねているとはいえ布地のみの足ごしらえですから、裸足にわりあい近い感じで仕事をすることができます。これに慣れると、ちょっとした加工でも必ずクランプを必要とする立ち作業は逆にわずらわしくてしかたがありません。

ただし短所もあります。厚手とはいってもしょせん布だけでできているので、作業内容にもよりますが短かければ3ヶ月くらいしか保ちません。いつもこすれるあたりが薄くなって穴があいてしまいます。また真冬はさすがに冷たいです。あまり冷たいので厚手の靴下の上に無理矢理足袋を履いたり、足用のホッカイロを使うこともあります。まあ、当地ではぎりぎりなんとかセーフというところで、今以上に寒ければ冬は足袋は無理ですね。

昔は木工に限らず室内での作業では職人は足袋をはくことが普通だったようですが(足袋のみ、または足袋+草履)、現在ではそうとうに珍しい、まぎれもなく少数派といっていいでしょう。知り合いの木工家でも足袋を日常的に用いている人は片手で数える程度。そのため足袋を扱っているお店が年々少なくなっていることも悩みのたねです。もっと需要があれば耐久性を高めるために化学繊維を用いたり、冬用に中綿入りの足袋にする。あるいは色柄のバリエーションを増やしてファッション性を加味するなど、さまざまな展開がありそうですが。

 

足袋」への12件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA