海浜植物

鳥海山の西端は日本海に没しています。つまり標高0mから2236.4mまで鳥海山だということです。もちろん0m以下の地中深いところまでさらに山体は広がっています。日本は山国で、25000分の1の地形図に記されている山名だけでも5万を超えます。日本はいたるところ山だらけなわけですが、しかしその山国でさえ標高2000mをこえるような大きな山が海からじかに聳え立っている例は、じつは他にはありません。子どもの頃から今日に至るまで日々鳥海山を眺めながら生活している人間にとって、大きな山のその裾が海に達している光景は、それで当たり前のようにしか感じていませんが(私も以前はそうでした)、じつは希有なことだったんですね。

鳥海山は「花の山」として登山者には非常に有名な山です。とはいえそれはほぼ100%高山植物のことを指しています。たしかに鳥海山には固有または稀産の高山植物がいくつかありますし、他の高山植物の種類も個体数もたいへん多く、山自体の景観とあいまってそれは文句なくすばらしいものです。おおぜいの人が全国から花を目当てに鳥海山をおとずれるのはしごく当然のことでしょう。

けれども鳥海山の花の魅力は高山域にとどまりません。波が打ち寄せるような海際の海岸植物から、低中山域、森林限界〜頂上にかけての高山植物までの多種多様な草木が連続的に生息しています。「海から山の花」、そのように視点を変える、あるいは拡張するだけで「鳥海山の花」は飛躍的に広がり、また独自性をおびることになります。他の山ではそれを観察し体験しようとしても不可能なことなので、貴重な観光資源としておおいにアッピールしてもいいと思います。

以下の写真は6月21日に海のすぐそばの砂地で撮ったものですが、厚い葉や短い草丈、毛が密に生えているので銀色の体色、といった海岸の植物の典型的な姿を見ることができます。


ハマボウフウ(セリ科ハマボウフウ属)


マンテマ(ナデシコ科マンテマ属)


コモチマンネングサ(ベンケイソウ科キリンソウ属)


シロヨモギ(キク科ヨモギ属)


ハマナス(バラ科バラ属)


カワラヨモギ(キク科ヨモギ属)

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