ペーパーウェイトのDタイプですが、A、B、C、D、Eとある中でいちばん数が出ているものです(A~Cは現在は廃番)。もっとも当工房のメインは家具で、小物類はその合間に作っているだけなので量はたかが知れています。
このDタイプは幅24mm、高さ30mm、長さ180mm、重さは約300gです。木だけではいくら比重の高い木であってもペーパーウェイトとして使うにはとうてい重さが足りないので、中にステンレススチールの丸棒を仕込んでいます。形状としては断面は下のほうがややすぼまった台形で、長手は上面だけがほんのすこしカーブを描いています。
この製品の場合、材質自体の面白さ幻妙さを味わうということが狙いなので、普通によく使われる材料ではなく特殊な材種や紋様の出た、いわゆる「銘木」を用いています。サイズが小さいので普通一般の木ではただの木片みたいになってしまいますから。これまで10種以上の材料を使ってこのペーパーウェイトをこしらえてきましたが、もっとも人気があるのが写真上の黒柿です。次は写真下のセンの縮み(カーリー)や、タモの波状杢などです。
黒柿はそういう名前の木があるわけではなく、カキノキに稀に出現する黒っぽい模様のことで、それが入った木材のことを慣習的に古来から黒柿と称してきました。日本特産で大昔から珍重されてきた材料ですが、柿渋の需要が減退するとともに現在ではたいへん希少で高価なものになってしまいました。カキノキそのものは白っぽい、木目も目立たない硬く滑らかな材質の木ですが、その地肌に対して黒い紋様の入り方は千差万別です。最終的には個人の好みの問題ですが、「孔雀杢」といわれるような特に細密な羽毛様・さざ波様の黒柿はやはりばつぐんの人気があります。希少価値があることはもちろん、眺めているだけでも吸い込まれそうな不思議な魅力があります。
センは植物学的な正式な名前はハリギリといい、ウコギ科ハリギリ属の落葉広葉樹。樹高25m、直径1mにもなる大きな木です。家具材としても重用されますが、写真のような細かい縮緬様の杢が生じたセンはまた格別な味わいがあります。縮みは単なる表面的な模様ではなく、材質全体におよぶ構造的なものなので、見る角度によって輝きや凹凸具合が異なります。仕上げはむろんきわめて平滑であり鏡面塗装を施していますが、一見すると材料自体が波打っているように錯覚しそうです。
黒柿とセン、ともにいま在庫として手元にあるのはこれだけです。黒柿のほうは紋様の細かいものから先に売れてしまったので、黒柿としては「並」の品です。価格は黒柿とセンともに税込定価8000円(化粧箱入。送料は個数にかかわらず500円)です。ご希望の方はメールにてご連絡ください。
※ 在庫切れです。近くまとめて数十個製作する予定でいますが、杢の出ている銘木を使用しますので、値段は個別に変わります(2014.11)。
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