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ササニシキ

わが工房では昼食は自炊ですが、ここ2ヶ月以上はほとんど「ご飯+みそ汁+漬物」というきわめてシンプルな食事です。ときおりそれに納豆や佃煮などが加わる程度。以前はスパゲッティ(オリーブオイル+しょうゆ+胡椒、たまに+ソーセージなど)が多かったのですが、最近はあまり食べなくなってしまいました。それは圧倒的にご飯がおいしいからです。

先日来書いているようにわが工房の米は遊佐町藤井の鳥海山麓齋藤農場の特別栽培米です。いくつかの種類の米を食べ比べてみましたが、やはり私の舌にはササニシキがいちばん合っているようです。なにしろ私の10代10年間のほとんどはこのササニシキを食べて育ったようなものですから。それで今回はササニシキを4kg注文しました。1回に1合(約150g)しか炊きませんので、これでだいたい1ヶ月ぶん。

袋に「鳥海山の水の恵みで育ちました。」と書いてありますが、まさにその通りですね。とくに藤井あたりの農業用水は、胴腹ノ滝の水と同様に大昔に鳥海湖付近から噴出した溶岩流の末端から湧出する水や、その溶岩層に降る雨雪が流れてきたものを集めたもので、非常に柔らかい水です。混じりけの極端に少ない冷たい水ですから、その水で育った米はなるほどおいしいはずです。むろん栽培技術もありますが、肝心の水が良くなくてはどうしようもありません。

ササニシキは1963年に宮城県で誕生した品種で、コシヒカリなどに比べると粘りがすくないあっさりタイプの食感です。冷めても味があまり変わらないことから寿司米や弁当用米に最適とされています。一時はコシヒカリと並ぶ両横綱として大々的に栽培されましたが、耐倒伏性・いもち病抵抗性が弱い、天候にも左右されやすいなどからしだいに敬遠されるようになり、今ではすっかりマイナーな存在になってしまいました。

 

1/7の胴腹ノ滝

今年はじめての訪問となる胴腹ノ滝。積雪は70〜80cmくらいあります。滝の温度は向かって右側が8.6℃、左側が8.5℃で、気温は社の前地上1mでマイナス0.8℃でした。ただ風がほとんどなかったので湧水によって暖められた空気は滝の周囲に滞留しており、明らかに他より温かく感じます。温度計で計ってみると、右の滝壺の直近高さ1mで1.4℃あり、社の正面に比べても2.2℃も高いことが分かります。

水量は前回12月30日と比較すると、アップの写真で詳細に検討してはじめて分かる程度の違いなのですが、今回のほうがわずかながら多いようです。12月初めの降雪以来一貫して減ってきていたのですが、今回増加した理由はよく分かりません。

胴腹ノ滝への歩道入口近くに、かなりの雪にもかかわらず秋田ナンバーの乗用車が停まっていたので声をかけてみたら、本庄市の方で、長年この胴腹ノ滝に水を汲みに来ているとか。鳥海山の秋田県側にも湧泉はたくさんあるはずですが、その方のお話では硬い水が多く、やはり胴腹ノ滝がいちばんだそうです。たしかに胴腹ノ滝は数値的にも硬度10前後の「超軟水」。いわばノンミネラルウォーターというわけです。

下の写真は胴腹ノ滝の社から下流側を写したものですが、雪がはげしく降っても温かい湧水がそれを打ち負かして溶かしてしまうので、水面からやや離れた岩の上にだけ雪がうずたかく積もっています。まるでトルコ・アナトリア高原のカッパドキアみたいです(写真でしか知りませんが)。

 

 

ナイロン製カンジキ

雪山にも湧水の調査等で出かけることがあります。鳥海山の中・低山域ですが、その際の必需品がカンジキ(樏)です。長靴または登山靴のまま雪面を歩くことを壷足といいますが、それでは膝までもしくは腰まで雪に埋もれてしまうことがあります。またその深さが一定しないために、歩行に多大な支障をきたします。もっと高山帯か、3月以降くらいになって雪面が硬くなってくればまた別ですが、11月下旬から3月はじめ頃までの降雪期間は壷足では実際上、行動不能といっていいでしょう。

雪に深く潜ってしまうのは体重(+荷物)にくらべ足裏の面積が小さすぎるからで、これは二足歩行するヒトという動物の宿命です。それなら足になにかを取り付けてその面積を拡大すれば、そのぶんだけ雪面に対する単位面積あたりの荷重が軽減できる=沈みにくいということになります。それがカンジキであり、欧米ならばスノーシューです。今回取り上げるのはカンジキですが、地域によってその素材や形はさまざま。素材としては竹や木の枝や太い蔓を曲げたもの、形は丸や楕円形・木の葉型・ラケット型などですが、最近では金属製やプラスチック製のカンジキも一般化してきました。むしろ今では自然素材による伝統的な手作りのカンジキはマイナーな存在になりつつあります。

私がこれまで使用していたカンジキは木の枝をU字型に曲げたものをふたつ合わせて長円形とし、接合をイタヤカエデのテープで巻き止めたものです。2本の爪もイタヤカエデをクサビ状に成形したもの。靴を載せるところや靴への固定は麻ひもや近年ではクレモナなどの化学繊維の紐です。 しかしこれをうまくはきこなすのはかなり難しいです。正確にきっちりしばらないと歩行中にあっけなく脱げたりずれたりしてしまいますし、かといってきつく縛りすぎると血行をわるくして最悪の場合凍傷になりかねません。また湿った雪だと枠や紐に雪が付着して団子になってしまい、はなはだ具合がわるい。使用したあとは乾燥させて日陰の風通しのよいところに保管しておかないとカビが生えたり虫が付くこともあります。私のカンジキも紐が劣化してしまい、全部やりかえないといけない状態になってしまっていました。

そこで今冬は従来型のものではない現代的なカンジキを新調することにしました。いろいろ調べたうえで先日購入したカンジキが写真のものです。新興電機工業株式会社のSK−2というモデルです。フレームはユニチカの対衝撃ナイロン製、装着は幅広肉厚のゴムベルトとナイロンの編ベルトで行います。バックルも対衝撃ナイロンとステンレススチールです。大きさは縦422mm、横225mm、内寸縦370mm、内寸横128mmで、重さは両側で900gあります。これより小ぶりのSK−1というのもありますが、そちらは縦355mm、横190mm、内寸縦320mm、内寸横118mm、重さ600gですが、足の大きな男性だと内寸が不足で靴がカンジキのフレームに干渉するおそれがあると思います。小柄な女性や子どもだといいかもしれません。

インターネットなどで調べると、カンジキのフレームの素材がプラスチックのものではナイロンの他にポリカーボネートやポリエチレンなどもあるようですが、ユーザーのコメントではやはり対衝撃性ナイロンでできているものが評判が高いようです。アルミ製も多いですが、湿った雪だと付着して凍り付きそうですね。柔軟性にも欠けるので、岩角などを踏んで曲がったままになってしまうおそれもあります。値段的にはナイロン製のものがやはりいちばん高くて、最も安いカンジキとは4〜6倍ほども差があります。SK−2は9000円ほどで、カンジキとしてはかなり高価に思われるかもしれませんが、山中での使用では故障や不具合は場合によってはすぐに命にかかわるので、私は納得しました。私は冬山でも単独行がほとんどですし。

さっそく長靴に装着して工房のまわりの雪面を歩いてみました。雪の付着は皆無で、フレーム断面が山形になっているので(特許とか)雪の抜けがよく沈みにくいようです。バンドはゴムとナイロンのものと併用ですが、メインのバンドが厚手のしっかりしたゴムなのでゆるみにくいし足への当たりもやわらかいです。従来のものにくらべかなり快適! 来週くらいにでも鳥海山にこれを持って行って湧水の調査をしてみようと思っています。

 

スノーダンプ修理

自宅で使用しているスノーダンプが壊れてしまいました。雪国の人にはいまさら説明するまでもありませんが、スノーダンプとは超大型の角スコップに押し手のついたような形の除雪用具で、手動の雪かき道具のなかでは一度に大量の雪を運べる能力としてはこれが最大です。

ただ柔らかい新雪だといいのですが、硬くしまった雪や重い湿った雪を大量に運ぶのは、体力的にも道具にも負担が大きいです。がしがし使っているうちにフレームが曲がったり、船の先が割れたりしてしまうことがあります。自宅用のスノーダンプは3年くらい前に買ったものですが(4500円くらい)、船は最近の主流であるポリカーボネートという樹脂製、フレームは鉄パイプです。船の先端はステンレスの口板が巻いてあるのですが、硬い雪を下ろすときにこれの縁にひっかかってめくれて波打ってしまいました。板厚が薄すぎるのと、両端しか止めてないので、壊れて当然ともいうべきお粗末な結果です。

工房に持って行って、めくれた口金を木槌ですこし叩いてから、途中6カ所をポリカーボネートとともに裏表を貫通させて径5mmのステンレスのボルトで固定。ボルトの出っ張りはグラインダーでけずり落としてナットと面一にしました。これで2〜3年くらいは問題なく使えるでしょう(写真は修理後のものです。直す前の写真も撮っておくべきでした)。この程度の補修でも1時間以上かかりますし、ポンチやドリル、木槌、金床、Fクランプ、同じサイズの板スパナ、ディスクグラインダーなどの道具・機械が必要です。したがって一般家庭では自分で直すのはおそらく無理な話で、結局「使い捨て」「買い替え」になってしまうのでしょうね。

 

それにしてもホームセンターで売っているようなこうした生活用品は、一般的に言って「とにかく安ければいい」という作りのものが多くて困ります。使い勝手とか耐久性など最低限度の機能性能を備えていないものも珍しくありません。もちろん使用頻度が低く一円でも安いほうがいいというニーズがあるのはたしかですが、お客がみなそうだというわけでもないでしょう。使い勝手がよく丈夫に作ってあって、そのことをきちんと説明し納得すれば多少高くてもそのほうがいいというお客だって少なくないと思います。

スノーダンプについて私が希望する改良点としては、1)船の肉厚をもう少し厚くしてほしい。現状ではブロック状に切り出した大きな雪塊を運ぶ際に、船がたわむことによって雪塊に亀裂が入って崩れてしまう。2)フレームをもっと丈夫にしてほしい。パイプをもうすこし肉厚にするか複数にしてトラス構造などにすることによって強度を増すことができるでしょう。3)船の先端の口金を、もうすこし厚くし数カ所で綴じてほしい。4)船が空荷のときでも自立するように重心をもっと前のほうに移してほしい。といった点です。

地位類

工房の建物のすぐそばに大きなキリの樹が立っています。目通りで直径50cmくらいあります。工房の建物はもともとは地元の工務店の刻み場だったので、そこの持ち主(大工)が植えたものかもしれません。樹齢はおそらく40年くらいでしょう。

そのキリの幹は一色ではなく銀灰色、濃灰色、黒色、淡青緑色、黄緑色、濃緑色など、さまざまな色の模様に彩られています。これは樹木自体の体色ではなく、他の生き物が取り付いているからです。緑色系のは主にコケですが、あとはだいたい地位類ですね。

 

地位類とは一般的には耳慣れない言葉だと思いますが、菌類+藻類からなる共生生物で、外見がコケ植物に似ているのでしばしばコケの仲間と混同されますが、地位類は基本的には菌類であって植物ではありません。地位類もコケ同様に光合成は行っているのですが、菌糸でできた構造体内部に光合成機能をもつ藻類を内包しています。両者は完全に一体化・融合しているわけではなく、それぞれが独立した生物です。

私もなんのことはない、30年くらい前までは地位類もコケもいっしょくたで区別ができていませんでした。しかし多少知識を得ると地位類はたいへん面白い生き物だと感じますし、コケとの見分けもさほど難しいことではありません。ただし「〜ゴケ」と名前が付いている地位類も少なくなく、昔の人もやっぱり区別ができていなかった(orしなかった)んだなと思います。

地位類は形態的には葉状地位類・痂状地位類・樹状地位類に大別されますが、このキリの幹に見えている銀灰色・淡青緑色のものは葉状地位類、その他は痂状地位類です。樹状地位類はなさそうです。葉状地位類はまだ嵩丈があってコケに似た雰囲気もあるので生き物だなと分かるのですが、痂状地位類の場合は極薄平坦で、木肌や岩に密着、ものによっては基質にまったく溶け込んで一体化して見えるものすらあります。知識がなければ木や岩そのものの紋様と錯覚してしまうでしょう。

たとえば左の写真で赤や緑色のものはコケですが、左側半分の白いまだら模様は、灰色の安山岩に密着している地位類です。岩の表面の細かな凹凸に埋没しているので、実質的には厚さゼロといってもいいような具合です。これで生き物だと言われても「ほんとー?」ですよね。

大型石油ストーブ

旧年中はたいへんお世話になりました。今年もなにとぞよろしくお願いします。

さて、工房にはこれまで家庭用の小さな石油ストーブしかありませんでした。主屋が4間の6間で24坪(48畳)、それに両側に2間の下屋があって、合わせると50坪ほどもある平屋ですし、天井もやたらと高いうえに断熱材のたぐいがいっさい入っていない波トタン張りの建物とあっては、とても暖房しきれません。あちこち小さな隙間もあるので、たとえ全体を暖めようと思ってもかなりの熱が無駄になってしまいます。

それでこれまでは作業する者のすぐ近くに小さな石油ストーブを一人一台くらいのあんばいで置いて部分的な暖を取る。あとはとにかく厚着してという方法だったのですが、さすがに最近は年齢のせいもあるのか、寒さが身にしみてきました。こんなやり方では室内の温度は外気温とたいして変わらず、冬の間は0〜5℃くらいの環境で作業をするというひどい状態だったのです。それでも身体をある程度動かしているときはいいのですが、座り込んで細かい加工をするときなどは辛いものがあります。

それで先日、思い切って業務用というか大型の石油ストーブを購入しました。「ブルーヒーター」で有名なダイニチ工業のFM−194Fという機種です。値段は定価だと税別で99800円もするのですが、注文があったら品物をメーカーからユーザーに直送という形式のインターネット販売店でだいぶ割安に入手することができました。

 

この機種は灯油を強制的に気化し燃焼、通気・対流させる方式のものです。そのために100V交流電源を常に必要としますが、停電等の際はこれまでの自然型の石油ストーブを使えるので、それで良しとしました。暖房出力は甚大で、最大18.5kW/時もあります。カタログによれば暖房目安として「木造47畳、コンクリート65畳」です。ふつうの家庭用小型石油ストーブの4〜6台分くらいですね。当然その分燃料の消費量も多く、最大で1時間あたり1.8リットルもの灯油を消費します(最小は0.54リットル/時)。これは1リットル80円としても144円。一日8時間使うとして1150円ほど。月に25日フルに稼働させると29000円くらいになります。実際には比較的温かい日もありますし、事務室で図面・書類書きなどの仕事や外仕事もあるので、月で2万円くらいでしょうかね。

月2万の暖房代は弱小零細木工房としてはそうとう痛い出費ですが、それでいくらかでも作業効率が上がるのであれば元は取れる計算です。実際にこの大型の灯油ストーブを炊いてみると、たしかにぜんぜん違います。目一杯動かしても建物全体を暖房することはなお不可能ですが、これまでのように身を切るようなひどい寒さを感じることも、手指がこごえて作業に支障をきたすようなこともなくなりました。さあいっしょうけんめい働かなくては。

12/30の胴腹ノ滝

雪の中、恒例の胴腹ノ滝行脚です。積雪は50〜60cmくらいあり、道路の除雪も万全ではないのでひやひやしながら昨日午前10時ころ車を運転して行きました。水量はまた一段と減ってきました。気温も零下2.9℃ですから、すでに滝の上部後背地表面からの新たな水の浸透はほとんどなくなったきたと考えられます。そのぶん地下水圧が下がるので、今後も春先まで滝の水量はずっと減り続けると予想しています。湧水温は右・左とも前々回・前回と変わらず8.6℃でした。

水量の正確な計測はかなり難しいので、ほぼ定位置からの写真撮影を毎回行い、それをパソコン上で比較検討しながら推移をみています。しかし1枚目の写真では左側の滝が、手前にある樹の雪の重みで垂れ下がった枝に邪魔されてよく見えません。困りました。それで、よく分かるようにすぐ近くから右(2枚目)と左(3枚目)と別々に撮った写真もあげてみました。

今回は私が調査と水汲みをしている間に、ほかに水汲みに来た人は2組3人でした。連日の降雪で主要道と町中の除雪で忙しいせいか、岩野の集落から胴腹ノ滝入口までの道路は除雪が手薄になっています。道路幅も狭くなって車のすれ違いや駐車にも細心の注意が必要な状態です。私はいつも車にシャベルを積んでいるので、車をもうすこし路肩に寄せられるように、道路脇に小山をなしている雪を幅1m長さ15mばかり雪かきをしました。ほとんどただ同然でこれだけいい水を汲んで味わえるのだから、すこしくらいはお返しをしなくてはと思います。

 

 

 

石田徹也の絵

 

31歳の若さで亡くなった石田徹也さん(1973〜2005)の遺作集。2006年に求龍堂から出版されたこの作品集には10年間100余の作品が納められていますが、いずれも一種の「自画像」といっていいと思います。シュールでなんとも不思議な絵です。私はリアルな写実的な絵も好きですが、こういうのもいいですね。

私は石田さんのことはまったく知らなかったのですが、書店の陳列棚でこの本を見てたいへん驚きました。これは買わないといけないと思いました。

 

 

 

雪かき

 

ここ1週間ほど、連日雪が降っています。大雪注意報も出ており、自宅と工房まわりの雪かきに追われる毎日です。積雪は40〜50cmほど。その降り積もった雪を除けるだけでもたいへんですが、広さ約50坪ある工房のトタン屋根から滑り落ちる雪も半端な量ではありません。落雪を放っておくと軒まで上がり窓ガラスを割ったりしてしまいますので、まめにこれも片付けておかないといけません。

数年前にヤマハの除雪機を導入してからはこうした雪かきもだいぶ楽にはなりましたが、それでも降雪が多い日は朝と晩の2回、場合によっては日中にもという具合に何度も雪かきをします。機械で全部できるわけではなく、手でやらないといけない部分もけっこうあります。また、仕事にも生活にも自動車はいまや不可欠で、車がいつでも自由に出入りできるようにするには、それの経路を残雪が皆無に近いくらいきれいに除けておく必要があります。そのため子どもの頃に比べて、自動車が普及したことで除雪の手間は逆に倍以上に増えたと思います。

除雪機ですが、先日は道路脇に小山になって積もった雪(除雪車がどけた雪の塊)を片付けていたら、雪の中に混じっていた小石をかんで排雪のプロペラの取付ボルトが折れてしまいました。エンジンやシャフトなどの主要部分が壊れないようにするために、異物をかんだりした際にはそこで破損するようにわざと一部分の強度を落としているのですが、たしかこれで導入以来3度目の破損トラブルです。とくに今回は本来であれば当工房ではやる必要・義務のないところを自主的に除雪していての故障だったので、ちょっと複雑な気持ちです。修理費もばかになりませんし(多いときは3万以上かかったことも)。

除雪機はすぐに修理に出したのですが、戻ってくるまでの3日間はスノーダンプやアルミスコップなどを用いての手作業による雪かきを余儀なくされました。やはり機械があるのとないのとでは時間も体力も大違いです。そのため、本業の木工の仕事もしなければならないので、除雪作業は最低限度にしかできませんでした。それでもなお気分的にいえば「半日は雪かきで終わってしまった」という感じです。

工房のある集落では、ちょっと見たところ個人で除雪機を持ってそれを駆動しているのは他には2軒くらい。あとは相変わらずの手作業でたいへんな苦労をしながら雪かきをしています。しかもそのほとんどは高齢の方たちです。若い人も住んでいないわけではありませんが、彼らが雪かきをしている姿を見かけることはあまりありません。中学生とか高校生くらいなら、その気があれば爺婆よりずっと作業がはかどると思うのですが、それは「俺・私の役割ではない」ということでしょうかね。

野帳

野帳。英語ではフィールドノート(field note)でしょうかね。写真は私が現在仕様中のもの(左)とこれから使おうと思っているもの(右)、それに筆記用のボールペンです。

 

野帳はおもに登山やハイキング、それに湧水の調査などに用いています。いちばん重要なのは耐水性・耐久性で、降雨降雪のなかや濡れた手で扱っても記録が汚れたり紙が破れたりしないことです。それに手に持って腰があることと、携行と収納しやすいようにコンパクトであることも欠かせません。

上の野帳は2種類とも表紙にLEVEL BOOK と記してあります。測量用の手帳というのが本来的な意味なんでしょうが、むろん野外で水濡れの可能性のある環境での筆記記録であれば何にでも向いています。メーカーはともにコクヨで、左(セ-Y11)はビニールカバー+紙の表紙+樹脂の中紙24頁という構成、右(セ-Y31B)は表紙も中紙もすべて樹脂製30頁という構成です。中紙は樹脂をベースとする合成紙で、水没してもよれよれになったりすることはありませんし、ちぎるのが難しいほどの強度があります。

左のタイプはもう何年も何冊も使ってきて、特別不満もなかったのですが、先ごろ敬愛する水門学の専門家が右のタイプの野帳を使われていたので、それをさっそく真似ることにしました。表紙がかなり厚く硬いので、手持ちで筆記するときもへなへなしませんし、これだけ鮮やかな色なら紛失もしにくいと思います。先の専門家はさらにこの野帳にご自分で紐を通して首にかけていましたが、貴重な記録が万一水に流されてしまったり、崖から落としてしまったりしたら悔やんでも悔やみきれませんものね。

写真下方のボールペンは加圧式で、上向きでもインキが途切れることはありませんし、濡れた紙に書いてもかすれにくいのです。パイロットのDown FORCE(ダウンフォース)という製品で、ノック式であることや鮮明な色あいの太めの軸であることなど、やはり野帳同様にフィールドでの記録に最適と思います。