ナイロン製カンジキ

雪山にも湧水の調査等で出かけることがあります。鳥海山の中・低山域ですが、その際の必需品がカンジキ(樏)です。長靴または登山靴のまま雪面を歩くことを壷足といいますが、それでは膝までもしくは腰まで雪に埋もれてしまうことがあります。またその深さが一定しないために、歩行に多大な支障をきたします。もっと高山帯か、3月以降くらいになって雪面が硬くなってくればまた別ですが、11月下旬から3月はじめ頃までの降雪期間は壷足では実際上、行動不能といっていいでしょう。

雪に深く潜ってしまうのは体重(+荷物)にくらべ足裏の面積が小さすぎるからで、これは二足歩行するヒトという動物の宿命です。それなら足になにかを取り付けてその面積を拡大すれば、そのぶんだけ雪面に対する単位面積あたりの荷重が軽減できる=沈みにくいということになります。それがカンジキであり、欧米ならばスノーシューです。今回取り上げるのはカンジキですが、地域によってその素材や形はさまざま。素材としては竹や木の枝や太い蔓を曲げたもの、形は丸や楕円形・木の葉型・ラケット型などですが、最近では金属製やプラスチック製のカンジキも一般化してきました。むしろ今では自然素材による伝統的な手作りのカンジキはマイナーな存在になりつつあります。

私がこれまで使用していたカンジキは木の枝をU字型に曲げたものをふたつ合わせて長円形とし、接合をイタヤカエデのテープで巻き止めたものです。2本の爪もイタヤカエデをクサビ状に成形したもの。靴を載せるところや靴への固定は麻ひもや近年ではクレモナなどの化学繊維の紐です。 しかしこれをうまくはきこなすのはかなり難しいです。正確にきっちりしばらないと歩行中にあっけなく脱げたりずれたりしてしまいますし、かといってきつく縛りすぎると血行をわるくして最悪の場合凍傷になりかねません。また湿った雪だと枠や紐に雪が付着して団子になってしまい、はなはだ具合がわるい。使用したあとは乾燥させて日陰の風通しのよいところに保管しておかないとカビが生えたり虫が付くこともあります。私のカンジキも紐が劣化してしまい、全部やりかえないといけない状態になってしまっていました。

そこで今冬は従来型のものではない現代的なカンジキを新調することにしました。いろいろ調べたうえで先日購入したカンジキが写真のものです。新興電機工業株式会社のSK−2というモデルです。フレームはユニチカの対衝撃ナイロン製、装着は幅広肉厚のゴムベルトとナイロンの編ベルトで行います。バックルも対衝撃ナイロンとステンレススチールです。大きさは縦422mm、横225mm、内寸縦370mm、内寸横128mmで、重さは両側で900gあります。これより小ぶりのSK−1というのもありますが、そちらは縦355mm、横190mm、内寸縦320mm、内寸横118mm、重さ600gですが、足の大きな男性だと内寸が不足で靴がカンジキのフレームに干渉するおそれがあると思います。小柄な女性や子どもだといいかもしれません。

インターネットなどで調べると、カンジキのフレームの素材がプラスチックのものではナイロンの他にポリカーボネートやポリエチレンなどもあるようですが、ユーザーのコメントではやはり対衝撃性ナイロンでできているものが評判が高いようです。アルミ製も多いですが、湿った雪だと付着して凍り付きそうですね。柔軟性にも欠けるので、岩角などを踏んで曲がったままになってしまうおそれもあります。値段的にはナイロン製のものがやはりいちばん高くて、最も安いカンジキとは4〜6倍ほども差があります。SK−2は9000円ほどで、カンジキとしてはかなり高価に思われるかもしれませんが、山中での使用では故障や不具合は場合によってはすぐに命にかかわるので、私は納得しました。私は冬山でも単独行がほとんどですし。

さっそく長靴に装着して工房のまわりの雪面を歩いてみました。雪の付着は皆無で、フレーム断面が山形になっているので(特許とか)雪の抜けがよく沈みにくいようです。バンドはゴムとナイロンのものと併用ですが、メインのバンドが厚手のしっかりしたゴムなのでゆるみにくいし足への当たりもやわらかいです。従来のものにくらべかなり快適! 来週くらいにでも鳥海山にこれを持って行って湧水の調査をしてみようと思っています。

 

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