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天然杉の座卓

 

先日、酒田市内のK様宅に納品させていただいた天然秋田杉の座卓です。大きさは幅1350mm、奥行850mm、高さ330mmで、甲板(天板)は板目の板一枚と柾目板1枚を矧合て850mmとしています。同じ奥行と高さの座卓をすでに1卓使われており、大勢の人が集まる際にはこの天杉の座卓と並べて使用される予定とのことです。

材料はお客様からの持ち込み=支給材です。当初の見込みでは甲板がもうすこし薄くなる可能性があるということで、4本の脚を長手・妻手の幕板でつなぎ、それを甲板裏に駒止するつもりでいました。しかし実際に甲板用の幅広の板に水平の墨を出して手鉋で削ってみたところ、それほど大きな反りや捻れ、傷・汚れはなく、60mm近い厚さに仕上げることができました。1カ所あった死節は厚さ4.5mmで象嵌の手法で埋木しています。

せっかくの材料なのでわざわざ薄くするのもどうかということで、結局幕板はなし、そのかわり4本の脚の頭にそれぞれ2枚のホゾを作り、それを甲板の上まで通してクサビで締めています。下の写真がそれで、色の濃い長方形がホゾの頭、そのホゾの中で木目の向きの異なる細い材がクサビの頭です。もちろん甲板の表面とは完全にフラットに削りそろえています。

材料はスギなので柔らかく傷もつきやすいのですが、手触りはとても温かくいい感じです。比重が小さく柔らかい材料は、そのぶん空気を含む割合が多いので断熱性が高いのです。とくに冬場は硬木の座卓のようなヒヤッとした感触がなく、その違いがはっきり分かるでしょう。

 

ヤモリ

台所の窓ガラスにヤモリがへばりついて、室内の明かりに寄ってくる虫を捕食しています。ガラスの向こう側にくっついているのを室内側から撮影しているので、赤味を帯びた白い体の裏面がよくわかります。居間の網戸にくっついていることもよくあり、少なくとも3匹のヤモリがわが家には棲みついているようです。うちの猫がそれをねらって室内側からとびかかることもあるのですが、ヤモリは完全に人家近傍での暮らしに慣れていて、まったく意に介しません。この写真を撮影しているときもガラスをこんこん叩いても微動だにしませんし。

 

このヤモリは正確にいうとヤモリ科ヤモリ属のニホンヤモリ(Gekko  japonicus)で体長は10〜14cmくらい。中国東部と朝鮮半島、日本では本州・四国・九州に分布しています。図鑑によっては福島以南の本州と書いてあることもありますが、私の子どもの頃から身近かにふつうに見かける生き物でした。ただし学名にjaponicusとあってもじつは日本固有種ではなく、平安時代以降に日本に移入されたもののようです。したがって日本ではまったくの自然環境には生息せず、人家の近くにしかいません。

人間に悪さをすることはなく害虫などを補食してくれることから、漢字では家守または宮守と記すように古くから親しまれてきた爬虫類です。手袋を広げたような四肢や金色の目、笑っているような口元など、よくみればかわいい生き物です。つるつるしたガラス面でも、天井でも逆さになったまま自在に動けるのは、四肢の指ごと趾下薄板が発達していてそれで張りついているからだそうです。

繁殖は卵生で、5〜9月頃に1〜3回に分けて2個ずつ卵を産みます。冬は壁の隙間や縁の下などで冬眠しますが、最近の隙間のすくない密閉度の高い住宅では彼らも棲みづらいかもしれませんね。

 

ネジバナ

やや湿り気のある、日当りのいい芝生や草地などでランの花が咲いています。ネジバナです。ラン科ネジバナ属の一種で、日本全土に分布。草丈10〜40cm、1本の直立する細い茎につく花も、長さ3〜5mm程度の小粒ながら、下部から茎に密着しねじれて連続的に開花しているようすは、とても愛らしく美しいです(Spiranthes  sinensis)。私も大好きな花で、1個ずつの花をよく見るとみごとなほど典型的な「蘭の花」ですね。ルーペでのぞけばその姿にきっと誰でも驚くことでしょう。

花序がねじれていることからついたネジバナですが、ネジリバナ、ネジレバナとも呼ばれ、あるいはモジズリ(モヂズリ)とも。後者は漢字表記では「捩摺」で、これは捻れ模様に染めた絹織物の名前にちなんだものだそうです。さてかように多数の小花がねじれて咲くことが強調され注目される植物ながら、その螺旋は1)右巻きも、2)左巻きもほぼ同数あり、なかには3)捻れのないものや、4)途中で巻き方が変わるものさえあるようです。また花の色も5)淡紅色が普通ですが、ときに6)白色のものも。さらには7)葉が斑入りのものや、8)葉が管状といった変異株もあるとか。私自身は1・2・3・5・6までは何度も野外で実見しています。

これほどきれいで個性的でおもしろい蘭の花なのに、サイズが小さいこととそれほどは珍しくないためか、公園などで芝刈機で他の「雑草」といっしょくたに刈り払われてしまうことが多いのはじつに残念です。

写真は近くの河川公園の芝生で撮ったものですが、1枚目は右巻き、2枚目は左巻きです。草丈はともに20cmくらい。

 

 

ネムノキ

 

 

 

ネムノキ(合歓の木)の花がいま盛りです。夕方にピンク色の花が葉の上にいっせいに群がって咲くので、遠目にもすぐネムノキだということがわかります。ネムノキはネムノキ科ネムノキ属の中低木で(Albizia  julibrissin)、日本では本州・四国・九州に自生。マメ目の樹木ですが、他のマメの仲間の植物とは花の形がかなり異なっています。長さ30〜40mmほどの淡紅色の長いふさふさは雄しべです。葉は互生し偶数2回羽状複葉。

和名のネムまたはネブは、夜になると小葉が閉じ葉全体が下垂する(=眠る。就眠運動)ことによりますが、漢字表記の合歓木は中国でこの木が夫婦円満の象徴とされていることからきたものだとか。花の色といい甘い香りといい、まあそんなイメージはありますね。

日当りを好む木で、荒廃地に最初に進出するパイオニア・プランツのひとつです。樹高は10mくらいになります。写真の上2枚は川に面した急崖に自然に生えているもの、3枚目の写真は河畔に独立して生えているものですが、水田のかたわらにあって夏に日陰の一服(休憩)を提供する、竹竿(棒杭?)を立てかけるなどの役をあてがわれ親しまれているようす。

 

ヤマユリ

 

いま山間の林道を歩いたり、車道を車で通っていてさえ甘やかな匂いが漂っているのに気がつきます。ヤマユリ(山百合)です。芳香が強いだけでなく直径20cmを超える白いっぽい花も、濃い緑色の樹林などを背景にして非常に目立ちます。野生の花でこれほど派手な花はほかにはないのではないでしょうか。

ヤマユリは日本特産種で、中部地方以北の本州に広く分布しています(Lilium auratum)。ユリの仲間でも最大級の大きな花で、古株では10個ほどの花を付けることがあります(発芽から開花までは普通5年以上)。花の重さで茎がみな傾いているのがちょっとおかしいです。19世紀にヨーロッパにこの花が紹介されたときはたいへんな驚きと賞賛をもって迎えられたといいます。園芸品種ならともかく、野生のユリでこれだけの花は信じがたい思いだったのではないですかね。

自生でもこれだけ目立つ花なので、そのまま観賞用に人家の庭に移植されることも多いようです。さらにまた、よけいな品種改良をほどこす必要などほとんどないでしょうし。

 

天杉糸柾

 

材木の表情は大きくは二つに分けられます。年輪が平行線を描くような方向に製材(年論に対し直交に切断)してある木材を柾目材=まさめざい、年輪が波状の曲線を描くような方向に製材(年輪に対し平行に切断)してある木材を板目材=いためざいといいますが、柾目の材でも年輪と年輪との間隔がきわめて狭く整然と木目が並んでいるものをとくに「糸柾」と呼んでいます。上の写真がそれで、天然秋田杉の糸柾材です。

糸のように細い木目、というわけですが、ではどれくらいの細かさであれば糸柾かという厳密な定義はじつはありません。たぶんに感覚的・恣意的なものですが、スギの板で平均1mmほどの写真のような材なら、文句なく糸柾でしょう。とくにスギは色の薄い春材と、濃色の秋材との差がいちじるしく、まさしく糸のように細く濃い秋材の線が何十本、何百本とならぶさまは非常に美しいものです。複雑にうねった板目の材木とはまたちがった良さがあります。

和風建築などでよく「総ヒノキ造りの豪邸」などと喧伝されることがありますが、じつはほんとうに高級な和風建築はスギの糸柾材などをふんだんに、しかもさりげなく使用した建物です。もちろんそれは嗜好の世界なので、絶対的にどちらが上というような話ではありませんが。私は家具作りの前は、もう30年近くも昔ですが5年くらい大工仕事をしていました。そのときの工務店の主張や私の経験でも、造作材をみな目の詰んだ赤味の杉でそろえた建物はたいへん見事なものだと思いました。ただ杉は硬軟(春材・秋材)の差が大きく、ヒノキなどに比べると加工は一段難しいと感じます。

下の写真はその糸柾の角材で、青色のクーピーで記してある数字はその面の厚みをあらわしています。やや目の粗いものもありますが、上・下の角材では写真を拡大してさえ木目が溶けてしまうくらいの極細の柾目ですね。樹齢としてはゆうに200年は越しているでしょう。

 

トリマーの拡張ベース

 

高速回転する比較的小型小径の刃で、回転軸に対して主に横方向への掘削をおこなう木工機械をルーターといいます。溝を掘ったり面取りなどの加工に用いるのですが、ルーターのなかでも片手で持てるくらいのとくにハンディタイプの小型ルーターは一般にトリマーと呼ばれています。

写真は当工房でいま使用している3台のトリマーのうちのひとつで、マキタの3707FCです。ボディがわりあい小径・軽量の樹脂製であることや、加工面を照らすLEDの照明が付いているなどの点はいいのですが、刃の出を調整し加工時の支台・基準面となるアクリルのベースは精度がいまひとつです。下端の平滑度が不足していることと、ボディへのバックル式固定具に遊びが多いようです。また広い面積の掘り込みをする際は、既存のベース(写真の下方右に置いてあるもの)が90mm角くらいしかないので不安定です。

そこで、手持ちの塩ビ板で拡張ベースを作ってみました。大きさは150mm角です。ふだんより大きめの大入加工をする必要があり、既存のベースでは自分が掘った穴に自分が落ちてしまうおそれがあったからです。以前からもっと広いベースがあればいいなとは思っていたのですが、ほんとうに必要に迫られないとなかなか作れませんね。既存のベースを外した穴とネジをそのまま利用するので、見てくれはともかくとしても機能的にはできるかぎり正確に作らなければなりません。結果、この程度の治具でも製作に1時間以上かかってしまいました。

写真ではトリマーの後ろにコードがとぐろを巻いていますが、これも既存の2m余のコードでは短かすぎて話にならないので、自分で8mくらいの長いコードに付け替えたものです。これでほとんどの場合、延長コードをつなぐことなくすぐに、かつ安全にトリマーが使えるようになりました。このように電動工具も売っているものそのままではなく、自分が使いやすいようにさまざま手を加えることがあります。

 

照明器具

 

新築予定の自宅の照明器具を選定しているところです。一般的には照明器具は建築工事の最後のほうで決まることが多いようですが(住宅の場合はとくに)、配線工事や下地補強等の都合もあるのでどのあたりの位置にどのくらいの数の照明器具やスイッチ・コンセント・ケーブルが必要かは前もって決めておかなくてはなりません。

今回はほぼすべての照明器具をLED搭載のものにしたいと考えています。LEDとは Light  Emitting  Diode の略で、電気を流すと発光する半導体素子=発光ダイオードのことです。特徴としては、1)白熱球にくらべ寿命が約20倍と長く、10年くらいは光源の交換をしないですむこと。2)消費電力が少なく、蛍光灯とくらべても半分程度で、電気代が割安となること。3)サイズが小さく発熱量が少ないので、照明器具の小型化が容易で、デザインの自由度が高い。といったところです。

いいことずくめのようですが、難点はやはりまだ値段が高いことです。数年前にくらべれば最近はかなり下がってきましたが、部屋の全体的な照明などに使おうとすると、同程度の明るさの白熱灯や蛍光灯にくらべておおむね50〜100%高といった状態です。メーカーによってはまったく同じ外観のシーリングライトで蛍光灯内蔵のものとLED内蔵のものと併行して販売していることがありますが、だいたいLEDのほうが5割増しといった具合。一つ二つではそれほど大きな差ではないかもしれませんが、家一軒の照明器具を全部となると頭が痛いです。

普通に工務店>電気店>顧客というルートでは「LEDで統一」はびっくりするくらいの金額となってしまい、とても負担できません。そこでインターネットを駆使して照明器具を私が直接購入し、それを電気屋さんに取り付けてもらうことにしました。もちろん器具の取り付け料はかかりますが(1点あたり1500〜2000円程度)、それでも定価に対しては総額で25%くらいコストダウンできるようです。通常の実行価格に対しては35%ほどのコストダウンです。

照明器具はなんといっても明かりが点いてなんぼのものです。紙のカタログやインターネットの画面で形状などは分かっても、実際の明かりの感じはなかなか分かりません。光の強さや光の質、灯った状態での器具の見え方などです。必要な明るさは部屋や作業内容によって異なり、いちおう基準の明るさは決まっていますし、それを算定するための計算式もあります。部屋の面積や天井高、壁・床・天井の素材別の反射率、器具自体の明るさ、といった項目に数字をあてはめていくのですが、メートルやセンチだけでなく、ルーメンとかルクス、といった見なれない単位が出てきます。器具自体にも、ランプの光束、器具の光束、消費電力、消費効率、光色、色温度、Ra(平均演色評価数)、といった言葉がずらずら…。

一度工事を終えた配線をやりかえるのはたいへんですし、当然よけいな追加費用がかかります。後付けの照明器具でも、どんなものでも選択可能というわけではありません。とはいえ、照明器具については私もぎりぎりまで悩んでしまいそうです。

 

7/17の胴腹ノ滝

 

7月17日午後6時すぎの胴腹ノ滝です。日没までにはまだすこし間がありますが、杉林の中なのですでに夕闇が迫っています。写真は手持ちでシャッタースピード0.2秒くらいのスローですが、まあなんとか見れますかね。前日の夜にかなりの雨が降ったことや、梅雨の最中で雨の日が多いせいか、水量は前回の7月4日よりいくらか増えています。水温は前回と変わらず右・左ともに8.8℃でした。気温は21.5℃です。

日中の気温は30℃をこえることも珍しくなくなってきたので、9℃以下の滝の湧水は非常に冷たく感じます。じっと手を浸すのはつらいくらい。周囲の空気も冷やされて霧が立っています。

滝への歩道入口のところの駐車場もほぼ完成していました。予想していたよりは狭くて、大型バスが1台、普通車が5台くらいの区割りです。これでは天気のいい土・日などはあいかわらず路上駐車を余儀なくされそうですし、この駐車場に出入りするだけの空間を道路のほうにも空けておかなくてはいけないので、道路側に駐停車する場合は注意が必要です。どうせなら路上駐車をする必要がほとんどないくらいに広く造成すればいいのにと思います。なんとも中途半端な工事ですね。

 

『一生つきあえる木の家具と器』

『一生つきあえる木の家具と器』と題された書籍です。「関西の木工家26人の工房から–京都・大阪・兵庫・滋賀」という副題が添えられています。西川栄明著・誠文堂新光社刊(2012年1月)・18×23cm・176ページ・1800円

写真はその表紙と裏表紙ですが、表のは徳永則男氏の「KYOTOチェア」と名付けられたケヤキの椅子だそうです。

 

家具や木の小物などは、明らかに耐久性や安全性に問題があるというのでないかぎり、結局のところ各人の好みに左右されます。私自身はこの本の表紙ようなタイプの椅子は好きではありませんし作ることもけっしてないでしょう。また本の中に登場する「作品」や作者や著者の「主張」のいくぶんかには共感・賛同できませんでした。しかしながら、そのことは自分が家具などを製作する際の、良くも悪しくもたいへん参考になります。

一般的に言っても、さまざまな家具や木製小物が同時的に存在し、ユーザーの選択肢がたくさんあることは基本的に非常にいいことだと思っています。歴史的に有名な木工家や家具デザイナーやプロダクトデザイナーのコピーみたいな品物ばかりがあふれかえっている光景は、貧困以外のなにものでもありませんから。