胴腹ノ滝(どうはらのたき)は鳥海山南西面の標高240mに位置する、湧水のみによる滝です、落差は4m程度ですが、左右2本の滝が急斜面の途中から吹き出しているということから名付けられた滝です。
里に近く、車道(駐車場)から歩いて150m程度とアプローチしやすいこと、水量がかなり減るとはいえ真冬でも滝は涸れることがないこと、車道が除雪されていること、たくさんある鳥海山の湧水のなかでもとりわけ超軟水の雑味のないおいしい水であることなどによって、一年中見物や水汲みに訪れる人が絶えません。私は6年ほど前から胴腹ノ滝および周辺の湧水の温度や水量等の調査と、自宅ならびに工房の飲料水に用いる水を汲むために、月に3回程度ここを訪れています。
しかし最近、とくに去年あたりから目立ってきた問題があります。それは滝の周辺の裸地化です。写真は滝のすぐ前のお不動様のところから下流側を撮ったものですが、緑一色の中にところどころ地面がむき出しになって茶色に見えているところがあります。
歩道は1枚目の写真奥に写っている水汲場から滝に向かって右側(左岸側)についているのですが、その歩道を外れて渓畔に踏み込んで写真を撮る人などが急速に増えています。「湧水の滝と苔むした岩の渓流」は誰が眺めてもとても美しいと感ずるでしょうが、そう思うだけでなく他の人とはちがうアングルから写真を撮りたいという人が少なくないのでしょう。つまりせっかくの景観を自らが損ねているわけです。わざわざ三脚を苔むした岩の上に立てて撮影している常識はずれの人もいます。
吹浦地区の丸池様の畔の裸地化もまったく同様ですが、いったん明瞭な踏み跡がついてしまうと、他の人もなんら躊躇することなくそこに入っていってしまいます。環境問題や生態系といったことに特別意識を持った人でないかぎり、道があればなんとなく踏んでしまうのは無理からぬことではあります。したがって最初がかんじんで、そのような逸脱行為をしないことです。
鳥海山の秋田県側でにかほ市に元滝という、これもまた非常に有名な湧水の滝があります。胴腹ノ滝以上に人出があるようですが、やはり滝を撮影する人が渓流の岩の上に侵入して草や苔などを踏みつぶしてしまい景観を損なってしまったり、すべって転んで怪我をしたりということが続いたために、最近は歩道から外れないこと、渓流の中や岩には踏み入らないようガイドの方も注意を呼びかけているそうです。その旨を記した立札も設置されていました。私は当然の措置と思います。胴腹ノ滝も早急に手を打つ必要があります。