月別アーカイブ: 5月 2014

巻き尺

 

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テープの幅が19mm、長さ5.5mの巻き尺(メジャー)です。工房で家具等の製作に使用している巻き尺は別にあるのですが、外出時に急にものの長さを計る必要が出ることもあるので、車あるいはバッグに常時携行用にひとつ新調しました。

これまで外で使っていた巻き尺は、長年の使用で目盛りの塗装が一部はげたりしてだいぶやつれてきたので今回新しくしたわけですが、選択のポイントはふたつあり、ひとつはテープの幅が狭くもなく広くもない大きさであること。つまり狭いとテープを長く引き出したときにすぐに途中でくったりと折れてしまいますし、広すぎるとテープの湾曲の度合いが大きすぎて物対目盛りの読み取りが難しくなります。それで頃合いをとって19mmにしました。

もうひとつのポイントは0点の精度です。どの巻き尺も0点にはL形の爪がついていますが、写真の巻き尺の場合は爪とテープの接合が4本ピンで止めてありしっかりしています。また巻き尺はよほど気をつけていてもうっかり落としてしまうことがあり、その際に爪を床にぶつけてしまうと爪が折れ曲がって0点の意味がなくなってしまいます。一度曲がってしまった爪はペンチなどで修正しようとしても完全に元通りになることはありません。家具の製作では1mm以下の精度が必要な場面も少なくないので、0点が狂った巻き尺は用をなしません。

その大事な0点を保護するために、この巻き尺では本体の口のところが爪の下向きの長さよりもすこし長く下方に突き出しています。こうすることで万一落下しても爪が直接打撃を受けにくいようにしているわけです。他の面でいくら立派で高級な巻き尺でも、この0点保護がしっかりと考慮されていない巻き尺は失格です。

余談にはなりますが、巻き尺のテープをゼンマイばねの巻き取りの勢いにまかせてバチンと勢いよくもどしてしまう人がときどきいますが、はっきり言ってまったく問題外、話になりません。計測器を大事にしない職人やデザイナーは素人以下です。

 

玄関のオオバクロモジ

 

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自宅の玄関に生けたオオバクロモジ。夜だったのでライトの光で壁に影が映っていますが、淡黄緑色の花と透けるように薄い若葉がとてもさわやかな雰囲気です。壁は石灰ベースの材料をコテ塗りしたもの、棚板はオニグルミの無垢板でオイルフィニッシュです。どちらも艶のないマットな肌合いなので、照明器具の光や外光がやわらかく反射します。

オオバクロモジは漢字で書くと「大葉黒文字」で、同じ仲間で太平洋側に生えているクロモジにくらべると葉が大きめであることに由来します。他にもオオヤマザクラであるとかオオミスミソウなど、日本海側の多雪地の植物は葉や花などがわりあい大きい傾向があり、これを「日本海要素」と呼んでいます。動物でも寒い所に棲むものは体が大きいことが少なくないので、それと同じようなものかもしれません。

 

※※ タイトルの入力が先日来うまくいかないので(ブログソフトのバグ?)、とうぶんの間「タイトルなし」とし、本文冒頭に見出しをすこし大きく付けることで代用とします。

 コーヒーブレーク15 「チェレンコフの光」

 

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ふらここの風のいなくて揺れており

「ふらここ」はぶらんこのこと。歳時記などには「中国から来た遊具」とあるが、樹からぶら下がった太めのツタという光景は山林ならどこでも珍しくはないし、それにつかまりぶらさがって揺らして遊ぼうという発想は自然と出てくるだろうから、すこし無理があると思う。ぶらんこはほかに「しゅうせん」(私のワープロソフトでは難しいほうのこれの漢字は出てこない)「秋千」「ふらんと」「半仙戯」などといろいろな呼称があるので、語感やらニュアンスの違いを使い分けると楽しい。/しかし最近できた公園や、古くなった遊具を新しいものに替えた公園などでは、ぶらんこがまったくないところもある。万一の事故の場合の、設置者・管理者の責任をあらかじめ回避しておこうということなのかもしれないが、なんともさびしいことである。

チェレンコフの光たずさえ春時雨

原発事故や放射能被曝などを気にしている方ならチェレンコフ光という言葉をよく耳にしたことがあるだろう。ミクロの世界の現象だが、荷電粒子が物質中を光速よりはやい速度で運動する場合に光を発する現象をチェレンコフ放射またはチェレンコフ効果といい、その光をチェレンコフ光という。その光は青白いそうで、原子炉の蓋を開けた場合などに目撃できるという。また使用済燃料を貯蔵するプールでもうっすらと見ることができ、3.11の原発事故などでは本来ありえない箇所でのその光の発現が報告されている。/春の雨は一般的にはおだやかで静謐なもの情緒豊かなものとされているが、いまやどんな雨にも程度のちがいはあれども放射性物質が含まれているだろうことを心配しなければならなくなった。「春雨に濡れてまいろう」などはとんでもないことだ。

地虫穴を出てまず地虫喰らいけり

高浜虚子の句に<蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな>という句があり、私はいたく気にいっている。虚子はなんだかんだいっても偉大な俳人で、すごいなあと唸ってしまう句はいろいろあるが、この蜘蛛の句もそのひとつだ。蜘蛛のことだから考えるまでもなく本能的に網を張り、獲物がそれにかかればすかさず走りよって糸でぐるぐるまきにして動きを止める。それからやおら体液を吸う。私は別にそうは感じないが、その姿といい生態といいひどく気味がわるいという人は少なくない。/しかしどんな生き物も行きていくために必須なさまざまな手段方法を駆使しているわけで、どれがいいとかわるいとかいうものではない。蜘蛛やカマキリやスズメバチなどの食餌を「残酷な」というのも人間の主観的恣意的なもので、蝶やカブトムシが蜜を吸うのとなんら変わるものではなかろう。植物食の昆虫だって植物を盛大に殺戮している。人間は草木ではないので、それを残酷とは感じないが。

 

小さな座卓

 

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これは東京都の方からご注文をいただき、つい先日納品した座卓です。材質はクルミで、大きさは幅640mm、奥行480mm、高さ320mmという小ぶりなもの。甲板は準無地板の2枚矧ぎ。幕板と脚の接合はいつものように小根付き通しホゾにクサビを打ち込み、ホゾ頭を1.5mm出しで仕上げています。また写真ではわかりにくいと思いますが、甲板(天板)の長辺がR9000、短辺がR7000のごく緩やかなカーブを描いています。

通常のよくある座卓だと幅1350〜1500mm、奥行800〜900mmくらいなので、甲板(天板)の面積でいえば1/3〜1/4ほどしかありません。しかしながらお客様のお言葉によれば「その小ささがいい」とのことでした。たしかに大きくてきちんとした作り、立派な座卓はありますが、小さくてもきっちりと作ってある座卓というのはあまり見かけませんね。小さいと材質や作りも粗末なのが多いです。

ただしそれにはそれなりの理由はあって、寸法がいくらか違っても製作の手間はたいして変わらないので、まともに作るとサイズの小さな家具はどうしても割高に感じられてしまうからです。上の座卓も、甲板の大きさが1/3〜1/4だからといって値段も通常の大きさの座卓の1/3〜1/4でできるかといったら決してそういうことはありません。したがってそのへんの事情をすんなりとご理解いただけるごく少数の方からの需要しか見込めないわけです。

自分で作っていながら自分で言うのもなんですが、こういった小さくて一人で簡単に移動もでき、置き場所や用途をあまり選ばない小さな座卓はなかなかいいものですね。意外に実用的でもあり、また愛らしい感じがします。

ご注文いただいたお客様から即日お礼のファックスをちょうだいしました。たいへんありがたく、うれしいです。⇒「素敵なテーブルを作っていただき、ありがとうございます。色合いもとても気に入りました。大切に使います。」

 

円能寺口からの経ケ蔵山

 

5月4日に、自分の子どもを含む小学生3人と経ケ蔵山に登りました。前回の4月27日は私ひとりで十二ノ滝コースからでしたが、今回は南西側の円能寺口から。前日に八森自然公園でキャンプをし、子どもたちは就寝時間を2時間もオーバーして夜更かししていたので睡眠不足ながらも、無事に頂上まで上り往路を下ってきました。連休とあって混雑というほどではないもののまずまずの人出です。

咲いていた花は前回とは異なり、ぜんぜん咲いていなかった花が開いていたり、あちこちにたくさん咲いていた花がもうほとんど終わっていたり。春の山地の花は刻々と変化するので、同じ山の同じコースであってもいろいろ楽しむことができます。

以下に先日5月3日のブログでは掲載できなかった花を中心に写真をアップします。

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クルマバソウ(アカネ科)

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コンロンソウ(アブラナ科)

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セントウソウ(セリ科)

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センボンヤリ(キク科)

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チゴユリ(ユリ科)

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ツクバネソウ(ユリ科)

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ヒトリシズカ(センリョウ科)

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オオタチツボスミレ(スミレ科)?

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ユキザサ(ユリ科)

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キバナイカリソウ(メギ科)

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セールスメール?

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数ヶ月前から、写真のようにブランド品の売り込みのメールが毎日30〜50件くらい来ます。主に衣類や靴・バッグ・時計といったところですが、いずれも私は一度もインターネットでそれらを購入したことはありませんし、ブログやツイッターなどでそれらの品物を具体的に実名をあげて言及したことも一度もありません。

それなのに急にこうしたメールが多くなったのは、おそらくですが当ブログのトップページに「お問合せ」というコーナーがあるからかもしれません。そのコーナーは当工房で作っている家具や木製小物の詳細を知りたいとか、なにかご注文されるお気持ちがあってそれの見積もり依頼などをしていただくためのものなのですが、それがブランド品のセールスに巧妙に利用されているのでしょう。もちろん本来の「お問合せ」とはまったく逆といっていい使われ方なわけですが、とくに実害というほどのこともないので放置しています。メールサーバーが自動的に迷惑メールに仕分けしてくれますし。

たぶん同じようにブログやホームページなどを比較的まめに発信されている方のところには同様のセールスメールが届いている可能性がありますが、結局こうした「下手な鉄炮も数打てば〜」式の売り込みは反発をかうだけであって、セールスには逆効果だと思うのですが。

 

※※ タイトルの入力が先日来うまくいかないので(ブログソフトのバグ?)、とうぶんの間「タイトルなし」とし、本文冒頭に見出しをすこし大きく付けることで代用とします。

コーヒーブレーク14 「屑篭」

 

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春眠の春夏秋冬めぐりきし

夢の中では時間の流れが現実世界とは大きく異なる。速度もちがえば順序もちがう。数日数年があっと言う間に過ぎ去ったり、過去と現在をかるがると往復したりする。現実には絶対にありえないような途方もないような夢をみることはまずなくなったが、時間だけは自由自在である。/前に読んだ『ピダハン』という本では、アマゾンに住む少数先住民族=ピダハンにとっては、夢は現実そのものであるという。なぜなら「実際に私がそれを見た」からである。夢を見たのはまぎれもなく実在する私やあなたなのであるから、それが経験したことは夢であれなんであれたしかに実在するのだと。なるほどそれもひとつの真理ではある。しかし彼らはけっして夢想家というわけではない。ピダハンには神話もおとぎ話もない。なぜならそこに登場する人物は誰ひとりとして眼前しないからである。今いないし、いたことを知っている者も今いない。したがってそんな根拠のないでたらめな話は信ずるわけにはいかない、と。ピダハンの文化を調査し記録した文化人類学者ダニエル-ベネットはキリスト教の伝導師でもあったのだが、彼がキリストの話をしたとたん大笑いされてしまう。

あたたかや刃物の面に指をあて

暖かさも寒さも相対的なものである。絶対的な気温としては言うまでもなく夏のほうが高いのだが、ああ暖かいと感ずるのはむしろ寒い冬がようやく終わり春が訪れたときだ。そのときの気温はたとえばせいぜい15℃でしかないかもしれず、夏ならば寒さを覚える温度であるにしても。それゆえ、「あたたか」または「ぬくし」は俳句では春の季語とされている。/刃物を砥石で研ぐときに、ちゃんと研げているかどうかを確かめるのにまず目で見て、それから刃先を指の腹でそっと触ってみる。仕上げの鉋やのみなどであれば刃先の厚みは数ミクロン以下だろうが、それくらいに研げているかどうかは指先の感触でたしかにわかる。

屑篭へ白い小鳥の飛びかいぬ

上記の「あたたか」や「ぬくし」が春の季語だというのは主観的な感覚としては納得できるのだが、小鳥が秋の季語とされているのはどうかなあ。正確には「小鳥来る」「鳥わたる」「鳥雲」「色鳥」など、小鳥類の生態動態を加味してはじめて秋の季語とされるのだが、なんとなく小鳥そのものが秋らしいと俳人には思われているふしがある。実際には渡り鳥にしても春・夏に渡ってくる鳥類はけっして珍しくはないのだが。/小鳥はまあグレーゾーンという気がするが、熊や狐・狸・イタチ・ムササビ・兎・鯨などの動物がみな冬の季語というのは、どう考えてもおかしい。それは猟師や漁師の活動時期、それに食い物としての分類(!)のようなもので、それら動物に対する視線が現代においてもそれでは、まったく偏屈したものでありかつアナクロニズム以外のものではなかろう。

(※ 上の写真は5月はじめ、丁岳山頂からみた鳥海山です。)

 

経ケ蔵山 十二ノ滝コース 2

 

昨日アップした経ケ蔵山の記事は咲いていた花の紹介だけでしたが、景色もとてもよかったので、それをいくつか掲載します。新緑がわけても非常に美しいです。

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十二ノ滝の一番上のほう

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登山口に向かう林道より見上げる山腹

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同じく林道より

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経ケ蔵山の肩にあがるまでは相当急な斜面だが、道の両側に花がいっぱい

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肩にあがってしまえばあとはゆるやかな快適な道で、ブナ林が続く

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やせた尾根の上を行く。針葉樹は風下の東側だけに生えている

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頂上に間近い須弥壇岩より東方の眺め。遠くに猪鼻岳や弁慶山やチンネも見える

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経ケ蔵山頂より南に胎蔵山

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経ケ蔵山頂より北に鳥海山

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十二ノ滝の最下部。吊橋を渡った左岸は崖崩れのため通行禁止になっていた