月別アーカイブ: 1月 2014

棚板受け

家具において棚板の高さ(上下の間隔)を変えられるようにする=可動式棚にする方法にはいろいろありますが、当工房の標準的なやり方としてはねじ込み式の金属製ダボを用いる方法があります。これはダボの雌ねじ(メン)を家具本体の側板の表面にフラットになるように50〜100mm程度の一定の間隔で埋め込んでおき、棚板が来る位置に雄ねじ(オン)を切ってあるダボをねじ込む方法です。

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写真はその雄ねじと雌ねじの、板に取り付ける前と後の状態です。ダボの径は通常12mmと9mmがありますが、これは12mmのもの。材質は真鍮ですがニッケルメッキが施されています。雌ねじを板に取り付けるにはあらかじめ径11mmの下穴を木工用ドリルのショートビットで開けておき、そこに雌ねじをげんのうで叩き込みます。雌ねじには段状の返しがついていますので、一度叩き込むと抜けないようにがっちり固定されます。

棚板受けのダボにはもっと簡略なプラスチック製のダボや、雌ねじなしのただの穴に金属製ダボを差しこむだけのものもあります。市販の量産家具の大半はその方式で、理由は単純にそのほうが圧倒的に部品単価が安く加工の手間も省けるからですが、もちろん強度・耐久性はかなり落ちます。

また最近では梯子形状の金属製レールを縦に4本ネジ止めとし、ダボではなく金属製のS字形状のフックを4個、レールの長方形の穴に引っ掛けるやり方もよく見かけるようになってきました。プラスチック製のダボなどよりはしっかりしていますし、可動のピッチを細かく取れるのはいいのですが、レール+フックの厚みのぶんだけ棚板と家具本体との間に隙間ができてしまうことや、棚板と棚板の間にもとうぜんながらレールが出っ張ってしまうという難点があります。見た目からいってもレールがやたらに目立ってしまうきらいがありますね。

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金属製の雄ねじ・雌ねじを用いる場合の、棚板のほうの加工は板の裏側に4カ所凹みを付けることです。ただし無垢材の棚板の場合は湿度などで若干の幅の収縮が起こることがあるので、それを考慮して幅14mm深さ3mmの欠き込みとします。切削はトリマーに6mmのストレートビット+トリマーシューを装着して行います。上の写真で左側の黒い扁平なアタッチメントがシュー(靴の意)です。

 

ポケモンの群集の絵

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昨年10月29日の記事で、自宅のトイレの壁に子どもの絵を月代わりくらいの間隔で飾っていることを書きましたが、上の写真はそれの最新判です。

私にはよくわかりませんが、ポケモン(ポケットモンスター)のさまざまなキャラクターを寄せて描いたものだそうです。一体ではなく群集であることや、画面の構成や色彩バランスはなかなかのものと感じます。私もデザイナーの端くれですので、これは単なる親ばかの感想ではありません。

 

コーヒーブレーク 3 「木喰虫」

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銃床を荼毘に投げ入れカラシニコフ

世界でもっとも多くの人を殺傷した軽火器はAK47である。旧ソ〜ロシアの軍人・銃器設計者ミハイル-カラシニコフの設計になる1947年式カラシニコフ自動小銃は、故障しにくく手入れがしやすいことなどから圧倒的な支持を集め、世界中で約2億丁も生産されたという。そのカラシニコフは病気のために昨年12月23日に94歳で亡くなった。/銃床(じゅうしょう)は銃身を支えるもので、ふつうは木製でできている。この木をクルミ製と説明されることが多いが、それは粘りがあって木目が緻密、重さは中庸で、見栄えがするからだ。もちろんクルミといってもいろいろで、量産型の銃には比較的値段が安く加工しやすいアメリカン-ブラック-ウォールナット、高級品・限定生産品にはヨーロピアン-ウォールナットの一種であるイングリッシュ-ウォールナットが使われるとか。もっともイングリッシュ-ウォールナットといっても英国産のクルミというわけではなく(かつてはそうだったのだろうが)、現在はトルコ産だそうである。/超高級家具材として木工家にはよく知られているクラロ-ウォールナットはヨーロピアン-ウォールナットにアメリカン-ブラック-ウォールナットを接木したもので、生体的な拒絶反応によって非常に細かい独特な杢目を生ずる。ロールスロイスやジャガーなどの高級車のダッシュボードに使われることもあるが、杢があまりにも複雑に入り組んでいるので「実用的な道具」としての銃床には向かないだろう。

地吹雪や村落みな吹き寄せ来

ここ山形県庄内地方は地吹雪の名所である。海沿いに低い砂丘が連なっているとはいえ、日本海を渡ってきた北風がほとんどなにものにもさえぎられることなく吹き付ける。一度降って積もった新雪が烈風に巻き上げられて横向きに飛び荒ぶのである。空はさほど曇ってはいないのに、ときには晴れ間すら垣間見えるのに、地面に近い2mくらいまでの高さの空間だけが猛烈な吹雪でまったく視界がきかないということが珍しくない。ホワイトアウトである。そんなときは平野のあちこちに点在する集落が、まるで土地から切り離され浮遊するように見えることがある。

獅子頭コガネキクイムシに食われおり

キクイムシニ(木喰い虫)は文字通り木材を食べる昆虫の総称で、広義にはカブトムシの仲間。大きさは1〜数ミリ程度で、木材に穴を穿ち生活するのでそれに適応した円筒形の形をしている。日本産のキクイムシだけでも300種以上にのぼるが、コガネキクイムシもその仲間。獅子頭はケヤキ材を彫刻して製作されることが多いが、ケヤキヒラタキクイムシというケヤキ材を好んで食するものもいるという。まさに獅子身中の虫である。/また興味深いのはアンブロシアビートルと呼ばれる養菌性の一群があり、材中に開けた坑道に自ら植え付けたアンブロシアという共生菌だけを食べて生きるキクイムシがいることである。/昔は建築材や家具材にフタバガキ科の樹木の俗称であるラワン材がよく使われたが、このラワン材にはしばしばヒラタキクイムシが付いて材を食い荒らす被害があり大問題となった。そのためと現地東南アジアでの資源の枯渇との理由でいまはあまりラワン材は使わなくなったし、使う場合でも必ず防虫処理が施されている。

 

LEDシーリングライト

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酒田市某宅のリビングに設置したLED光源のシーリングライトです。もとは正方形のカバーの蛍光灯の照明がついていたのですが、そろそろ寿命ということで新しいものに変えました。カメラの露出の関係で写真は部屋が暗い感じになってしまっていますが、それは壁や天井を目で見たのと同じように明るく写るようにすると、照明のほうが真っ白くとんでしまって何がなんだかわからなくなってしまうからです。照明器具の撮影は難しいです。

器具の選定はお客様から一任されたのですが、電気店などでは展示されている種類はごく少数しかありません。そのため、インターネットを駆使して国内の主だった照明器具メーカー数社のカタログを全部ひもといて機種を決め、通販で購入しました。写真の器具は直径630mmで光源は5000ルーメン・59Wですが、これと外形はまったく同じで明るさが4400ルーメン・52Wの器具を隣室のダイニングキッチンのほうに取り付けました。調光・調色その他の機能がついており、定格寿命は4万時間です。

むろん好きずきであって良い悪いということではないのですが、装飾過剰なシーリングライトが多い一方で、あまりにもそっけなくてデザイン性がまったく感じられない(手抜き?)シーリングライトも少なくなく、選定には非常に苦労します。とりわけ照明はカタログだけでは実際に点灯した状態を想像するのは難しいので、取り付けて点灯してみるまで内心どきどきしますね。上の機種はデザインのバランスはかなりいいほうかなと思います。値段的にもまずまずですし。お客さまからもたいへん喜んでいただきました。

 

シクラメンの蕾

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わが家のトイレに飾っているミニタイプのシクラメンです。ちょうど二ヶ月経って開花もそろそろ終盤になってきましたが、蕾があまりにも愛らしいのでアップで撮影してみました。いちばん左の下を向いているのがその蕾で、その他は開花して花びらが上向きに反転した状態か、その最盛期をやや過ぎて再び下に垂れ始めてきている状態の花です。

蕾は最初は先端がするどく尖った円錐形をしていますが、大きくなるにつれ先が丸みをおびてきて、固く巻いた4枚の花びらがすこしづつほどけるようにして開花します。開き切って上向きに花びらをぴんと高く掲げた状態がかがり火のようだということで、シクラメンは和名では「篝火花(かがりびばな)」といいます。和名にはもうひとつ「豚の饅頭(ぶたのまんじゅう)」というのもあるのですが、これは球根が豚の餌になるという意味だとか。これはちょっと気の毒なというか、まったくセンスのない命名ですね。

シクラメンはサクラソウ科のシクラメン属に属する多年草で、原産地は地中海沿岸、花期は秋から春です。花が乏しくなる冬期に鉢植えにして室内で観賞されることが多い花です。学名はCyclamen  persicum (シクラメン-ペルシカム)で、属名がそのまま一般名としての花の名前になっています。現在流通しているのは品種改良された園芸花がほとんどですが、原種のペルシカムも一部では注目されてきています。

 

かまくら その2

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昨年暮れに一度かまくらを作りましたが、たった一晩しかもたなかったので、今回は発奮してもっと大きなしっかりしたものを子どもといっしょに作りました。高さは1.3m、直径2mはあり、内部は大人4人でもなんとか座れるくらいの広さがあります。入口は風下の南東側に設け、両翼に風よけの壁もこしらえています。

せっかくの機会なので子どもの友だちも呼んで、中でおやつタイムにしたりして楽しみました。小学生では高学年でもないとかまくらを自分で作るのは難しいので、親なり大人が手伝ってやらないといけません。もちろん商業的なイベントでもっと大きなかまくらを製作し、それに参加することはできるでしょうが、自分の家の庭先に自分たちで作りそれを楽しむのとはまた意味がちがいます。

今回のかまくらは6日目で天井が崩落しました。最後は気温がゆるんで雨が降ってしまったので、これではたまりません。ただ近所の子どもや大人もけっこう覗き込んでいったみたいです。

 

コーヒーブレーク 2 「大白鳥」

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切餅も丸餅も入れ雑煮椀

雑煮に入れる餅は四角の切餅か扁平円形の丸餅か、焼くのか焼かないのか、汁はすまし汁なのか味噌汁なのか、具は何を入れるのか等々、じつにさわがしい。たしかに日本全国のそれを調べると、おおむね東日本は切餅で西日本は丸餅といった傾向はあるようだが、しょせんそれは味の好き嫌いの問題や慣れだろうから、どちらが正当か邪道かなどと目くじらを立てて論ずるようなものではなかろう。そういえば雑煮と同様、ここ山形県では全県的にわりあい盛大に行われる秋の芋煮の場合でも、牛肉か豚肉か醤油味か味噌味をめぐって、半ばけんか腰でしゃべる人がすくなくないが、ばかばかしい話だ。自分がおいしいと思えばなんだっていいじゃないか。二種類作っておかわりしてもいいしね。

人類このかた二十五億日年来る

人間の起源をどこと見なすかにより学者によって異論はあるが、もっとも古くみる人だとおよそ800〜700万年前に人類の祖先は生まれたという。仮に700万年とすればそれに1年365日を掛ければ約25億日となる。人類はそれだけの数の日没と日の出とを体験してきたわけだ。暦という概念ができたのははるかに後のことだが、一年中同じような気候ではなく、ある一定程度のサイクルがあることは太古の人類も感じていたにちがいない。

読初の字統字訓字通とぞ

正月になって初めて本を読むことが読初(よみぞめ)で、書初や乗初・売初・買初などと同類。昔は今と比べて本というものが非常に貴重かつ高価でもあったから、暇つぶしや単に趣味的に読書をするのではなく、ある理念や目的意識をもって本にのぞんだであろう。年の初めとなればなおさらである。『字統』『字訓』『字通』は漢文学・古代漢字学で著名な白川静(しらかわしずか1910~2006)のライフワークであった字書三部作の書名である。大学図書館でこの3本に接して心底驚いたが、全部そろえるとなると5万円近くするのでいまだに買えないでいる。私が実際に持っているのは簡易判の『常用字解』のみだが、ちなみに「人」は立っている人を横から見た象形であり、手足を広げて立っている人を正面から形が「大」であるという。

白鳥を持ち上げいたる御空かな

初御空であれば元旦の空の意だが、白鳥の姿も見えることだしニュアンスとしてはやはり元日かそこらあたりの空のこととしよう。白鳥は間近かで見るととにかく大きい。ときに恐怖を覚えるくらいだ。とりわけオオハクチョウは全長160cm、翼幅250cm、体重12kgに達することもあり、現に生きている空を飛ぶ鳥としては世界最大級の鳥である。寿命は20年ほどのようだ。遠目に見ているかぎりでは色もほぼ純白で、小さく軽く優雅に思えるが、実際はそんなやわな鳥ではない。

 

霜の花

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工房の事務室の窓ガラスに霜がついてたいへんきれいでした。気温はマイナス3℃程度なのと、事務室でさほど湿気があるはずもないので、いわゆる「霜の華」までには成長していませんが、これはこれで味わいがあります。不思議なのはもっと湿度もある工房の流し場などには霜はまったく付いていないことと、上の写真は同じ窓の隣り合わせのガラスながら模様のでき方が異なっていることです。

私の簡易なコンパクトデジカメではこういう条件の難しい撮影はぜんぜんうまくいかないのが、とても残念です。

 

コーヒーブレーク 1 「大旦」

1月10日の記事「ティーブレーク」で予告したように、俳句+ミニエッセイ+イメージフォトという形式で、ときどき自作の俳句を披露していきたいと思います。読者に、ふだん俳句を読んだり作ったりされない方も想定しているので、句中の季語や言葉の説明などを含むことがありますが、原則として掲載した俳句そのものの内容的な解説は行いません。俳句というひとつの「文学作品」ですから、読者がどのように受け止めていただいてもかまいません。自由です。ただ忌憚のないご感想や批評などをいただければ句作のはげみにはなりますので、よろしくお願いします。 なお以前のティーブレークがそうだったようにコーヒーブレークは「です・ます」ではなく「だ・である」の口調で書いていきます。またカテゴリーとしては新たに「コーヒーブレーク」を設けました。では、さっそく。

 

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大旦大年の国より着信

大旦(おおあした)は元旦と同じ意味で1月1日のこと、大年(おおとし)は大晦日・大三十日(おおみそか)と同じ。ただどちらも日常の用語としてはすでにほとんど忘れられている。地球は丸いので陽の当たるのは半分だけ。つまり片方が昼ならもう片方は夜であり、暦や時刻は地域や国よってみな異なることになる。ことに日本は極東と呼ばれることからもわかるように、暦の上ではいちばん早く新年を迎えるほうの国のひとつ。したがって、もしメールで「あけましておめでとう」というメッセージが届いたとしても、発信元が欧米などであればむこうはまだ旧年のままということだ。現代社会ならではの情景である。

初空や包帯のように飛行機雲

今とくらべれば数ははるかにすくなかったと思うが、いやだからこそか、子どものころ飛行機が飛んでいれば必ずといっていいほど機影を追っていた。飛行機雲はいつも伴うわけではなく、飛行高度や気温や湿度などのいろいろな条件がそろわないと出現しないらしい。飛行機がとぶような、とりわけ現在のジェット旅客機が往来するような高度1万メートルもの高さは気温がマイナス40度以下といった極低温。ところがこれくらいの高さになると空気は非常にきれいで、水蒸気が水滴と化すために必要な核となるような塵や埃もほとんど存在しないために、水蒸気がもし大量に存在したとしても過冷却の状態になっている。そこへ飛行機がやってきて核となる微粒子を大量にまき散らす、または、機体が空気をかき乱すことによって、水蒸気が水となりさらに氷となることで雲が出現する、ということのようだ。ふ〜ん、なんだ、ゴミがなくてほんとうに清浄無垢な空気の中では雲も雨も雪もできないのか。

その中で吹雪いておりぬ鏡餅

今年はひとつも飾ることがなかったが、両親が健在だった頃は自宅の何カ所かに、また事務所と作業場の何カ所かに鏡餅を飾った。大きいのと小さいのと。丸く平べったく白無地だから鏡。しかしなぜ大小二つの餅を重ねるのかはわからない。単に見栄えの問題かもしれない、と考えていたら、どうも答えは天辺に載せる柑橘類の橙(だいだい)にあるかもしれないことに気づいた。つまり橙は熟しても落下することなく数年間にわたって「代々」の実が枝についたままになる(私は実見したことはないが)。そこから家系代々の長寿と繁栄を祈願したということなのだが、由緒正しい伝統的な習いといってもじつはまじめな根拠というよりは単なる語呂合わせや駄洒落みたいなものが多いですね。

オリンポスマクスウェル山の淑気かな

淑気(しゅくき)は正月のめでたくもおごそかな気分のこと。さて地球でいちばん高い山はエベレストで標高は8850m。以前は8848mといわれていたのだが、最近のより精密な測量によって2mばかり高いことがわかった(とはいってもこの数字はまだインドなどでは正式には認められていないらしい)。では他の星ではどうかというと、火星の最高峰は標高約25000mのオリンポス山、金星の最高峰は標高約11000mのマクスウェル山だ。いずれもエベレストより高く、オリンポスにいたってはなんとエベレストの3倍近い高さ。これは太陽系最大の火山である。日本の最高峰は言うまでもなく富士山(不二山・富嶽とも)だが、高い山というのはそれだけでたしかに無条件に畏敬の念をもよおす。ちなみにオリンポスは裾野直径は550km、山頂のカルデラさえも60×80km×深度3.2kmというとんでもないスケールである。

 

節を埋める

だいぶ前の作業になりますが、戸棚の棚板のうちの2枚に大きめの節がひとつずつあり、これをきれいに埋めることにしました。節は死節(しにぶし)で、一部分は空洞となって板の裏表まで貫通しています。したがって平らにするにしても両側から加工を施さなければならず、合わせて4個の埋木(うめき)が必要となります。

死節などの穴を埋める方法はいろいろありますが、ここでは丸や四角ではない不定形の、しかもやや大きめの穴をきっちり正確に処理する方法を説明します。もちろんこれは当工房における標準的な方法にすぎず、もっと他の、あるいはもっといいやり方があるかもしれません。

 

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1)まず埋めるべき節をトリマーに6mmのストレートビットを装着して、深さ4.2mmで平滑に掘り込みます。写真の右側が掘ったあとです。埋木の厚さはこの掘削より0.3mm厚い4.5mmを想定しています。注意することは極端な鋭角や狭い線状のもの、複雑すぎる形は、このあとの行程があまりにもめんどうになるので避けることです。不定形ながらもおだやかな曲線の単純な形です。また埋木を底でがっちり受け止める部分が必要なので、節穴やぐずぐずになっている部分だけでなく、その周囲の健全なしっかりした部分までいくらか掘り込みを拡張することです。

2)掘り終わったらそれをコピー用紙程度の薄手の紙(上質紙)で、フロッタージュの手法で穴の形を写し取ります。紙を穴にかぶせてその穴の縁のあたりを柔らかい鉛筆で上から軽くこするようにすると、穴の形が濃い線になって浮かんできます。どれがどの穴のものなのか、また向きはどちらかわかるように紙と棚板の両方に同一の向きで共通番号を記しておきます。

 

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3)埋木用の板を作り、それにさきほどのフロッタージュした紙を糊で貼付けます。埋木は穴より少しだけ大きく作るので、そのためフロッタージュの濃い線から外側に2mm程度離した線を赤い線で引きます。赤色にするのは糸鋸での切り抜きの際、黒く見える切断線と区別しやすくするためです。

4)糸鋸盤のベースを左に2度傾け、さきほど引いた赤線にそってその線をぎりぎり残すようにして時計回りに切断していきます。こうすることでほんの少しだけですが裏面のほうが小さく断面全体にテーパーの付いた埋木を作ることができます。糸鋸の刃は切断面が荒れないように極細目の細い刃を用います。埋木用の板は厚すぎても薄すぎてもやりにくいので、5mm前後が適当かと思います。

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5)これで穴よりやや大きく、木口全体に2度の傾斜が付いた埋木ができたわけですが、それを最初にトリマーで掘った穴にあてがい、再度墨付をします。厳密にでなくともいいですが、穴の縁からだいたい均等にけがかれていればいいでしょう。線引きは必ず細目のシャープペンシルで行います。ボールペンや油性マーカーなどは板と埋木との境界線にインクの滲みが残る可能性があるので使ってはいけません。

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6)シャープペンシルで引いた線をめがけて、ふたたびトリマーで余分を掘り込みします。線がかろうじて残るくらいの精度が必要です。線を消すまでよけいに掘ってしまったり、線の内側に明らかにわかるような余白が残るようではいけません。

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7)埋木の裏面のエッジを1mmくらいやや大きめに面取りをします。穴に始めに入りやすくするためです。それから軽く穴にあてがってみて、均等にわずかに落ち込むようであれば埋木は万全です。もし硬すぎてぜんぜん落ちないか、傾いて落ち込むようなら再度穴の大きさや形を微調整します。

8)オーケーとなったら穴の底と側面全体に接着剤を塗り、当木を用いて埋木を玄翁で叩き込みます。接着剤は結局のところいわゆる白ボンドがいちばん適切と思っています。他の接着剤だと接合面にグルーラインが出やすく、はみ出た余分の接着剤を除去するのもめんどうです。ただし耐水性を必要とするなどの場合の埋木はその限りではありません。

9)接着剤が乾いたら、板から出っ張った埋木の余分をよく切れる鉋で削りとります。写真は上下の寸法で5cm弱の埋木が終了した跡ですが、棚板ですのでこの程度にできていれば問題ないでしょう。ただし、テーブル甲板や戸棚などの表面部材などに埋木する場合は、板のほうの木目の表情や色合いなどに合わせた埋木にすればよりいいと思います。

今回は4つの埋木で、全行程で正味2時間ほどかかりました。1カ所につき30分というわけですが、そのままではちょっと使えないような大きめの節や傷や変色などがある材料でも、こうやってきれいに埋木することで強度的にも見た目にも問題なく使うことができます。 もっとも材料の単価によっては、手間ひまをかけて埋木しても製作コスト的に合わない場合もあるかもしれません。しかし木材は言うまでもなくもとは生きていた植物を人間の一方的な都合で伐ってしまったわけですから、欠点のある材料でもいろいろ工夫することでできるかぎり活かしてやりたいと考えています。