月別アーカイブ: 3月 2012

コーナー用テンプレート

 

テーブル甲板の四隅や、椅子座面の角などを丸くするのに、写真のような自製のコーナー用テンプレート(ならい型)を使っています。四角い角をいきなりルーターで削り落とすのは機械に負荷がかかりすぎるし、反発して危険な場合があるので、手鋸で仕上げのラインより1〜2mm程度カットしてから行います。テンプレートを用いることなく、一つずつ墨付をし手鋸とノミや鉋やサンダーなどでコーナーを成形していくことももちろんできますが、全部のコーナーを同一正確にそろえるのは意外に面倒で難しいです。とくに複数台のテーブルなどを加工する際は、こうしたテンプレートがあるのとないのとでは加工時間その他に大きな差がでるでしょう。

テンプレートには9mm厚のシナ合板を用いることが多いのですが、これは色が白っぽいので墨線を追いやすく、最初のテンプレート自体の正確な製作がしやすいからです。テンプレートが狂っていたらそれにならった甲板などはみな狂ってしまいますから。ただシナベニヤの表面のシナノキの部分は柔らかいので、そのままではルーターのガイドベアリングの跡が付いてしまう(凹んでしまう)おそれがあります。そのためにテンプレートの側面(断面・木口)には瞬間接着剤をたっぷりしみ込ませて硬化させています。写真のテンプレートは30cm×40cmくらいの長方形ですが、4つのコーナーは半径12・15・18・20mmと異なった大きさにしてあるので、1枚のテンプレートで4種類のちがう大きさのコーナー加工ができます。

ルーターに装着するビットは、刃の根元側(機械側)に、刃と同径のガイドベアリングが付いている「ならい」専用の超硬ビットです。この写真では軸径12mm×刃径21mm×刃長40mmの大日商というメーカーのビットを付けて加工していますが、切れ味と耐久性にすぐれたいい刃物だと思います。ちょっと高いですけどね。

 

切り絵とか

親ばかを承知で紹介してしまいますが、わが家の6歳児がこしらえた切り絵(大きさ縦49cm・横49cm)と、写真用アルバムの表紙に油性マーカーで描いた絵(大きさ縦33cm・横32cm)です。フレーミングのしかたとか色の取り合わせなど、なかなかどうしてと思います。この感覚がずっと磨かれていけばいいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3/26の胴腹ノ滝

ここ数日また雪が降っています。とくに25日から26日にかけては平野部でも5〜10cmほどの積雪がありました。胴腹ノ滝へ向かう道路もすっかり白くなり、山間部に入ると積雪は20cmくらいあります。ただ、空気が冷たいとはいえ真冬のような寒さではありませんし、雪も濡れ雪です。

写真は3月26日の朝8時半頃の胴腹ノ滝とその周辺の雪化粧をした林です。滝の水量は前回の3月16日よりすこしずつ増えてきています。降ってもすぐに溶けてしまうような雪なので、むしろ降雨のように地下に浸透し地下水圧を高めてしまうからでしょうか。水温は右が8.8℃、左が8.6℃で前回と変わりなしです。気温はマイナス0.3℃です。

この日は水温等の調査をしペットボトルに水を汲んで帰る途中で、田んぼに乗用車が2台落ちているのを見ました。1台は落ちたところに運悪く水路があったのでかなり壊れてしまっています。パトカーも出動していました。きっとシャーベット状の雪でスリップしてしまったものとみえます。アイスバーンはみるからに危なっかしいのでみな気をつけて運転しますが、シャーベットの雪は見た目にはたいしたことがなさそうなので、油断をしてしまい意外と事故が多いのです。

 

 

春雪

もう4月も間近かなのに今日は大降りの雪になりました。3時間ほど止めていた車にも雪が10cmほど積もってしまい、雪かきブラシではらいてからでないと運転ができないほどです。道路もまた一面真っ白になってしまいました。

写真は工房の窓から昼過ぎに写したものですが、数センチもある大きな牡丹雪がひっきりなしに落ちてきます。風はそれほどなかったので、静かに天から降りしきる花びらのような雪は幻想的で、これはこれでめったに見られない美しい光景ではあります。

気温的には零下ではないので2日もすればきれいに消えてしまうと思いますが、まだまだ春は遠い気分ですね。

 

 

 

ワセリン

冬になるときまってひどい手荒れに長年悩まされてきました。指ががさがさになって、そのうちアカギレが生じていつも指先にうっすら血がにじんでいるというような最悪の状態です。もちろん市販のハンドクリームを塗るなどそれなりの対策はするのですが、効果はいまいち。

しかし、一昨年あたりからはそれがかなり軽減できています。それはまず手袋の着用です。手袋はごく薄いナイロン製で半面だけウレタンゴムがコーティングされている「組立グリップ」を作業時に極力使用します。柔軟性に富み手にぴったりフィットし、表面には指紋のような微細な凹凸があって適度な摩擦があります。縫い目のない一体成形なので、名前のとおり手袋をしたままでそうとう細かい作業も可能です。筆記もらくらく。機械・道具の冷えきった金属面にさわっても手がかじかんでしまうこともありません。

また刃物研ぎや水引きや雑巾洗いや雪かきなど水に直接触れる作業時には、防水透湿素材でできた薄手で柔軟性のあるウレタン製のゴム手袋「テムレス」をはめます。手袋をして刃物を研ぐという、これまでの概念でいえば非常識きわまりない行為もこのテムレスなら快適に行うことができます。すこし慣れれば研いだ刃先の刃返りもちゃんと手袋を通して分かります。水は通さないが湿気はある程度通放出するので、長時間ゴム手をはめたままでも手はわりあいドライな状態を保つことができ、それが手の荒れを防ぐようです。

手袋のほかに愛用しているのが下の写真の白色ワセリンです。なにやらチューブの右端に分子記号が書いてありますが、石油を分留して得られる炭化水素を脱色精製したものです。ワセリンはもともとはユニリーバの商標ですが、現在では世界的に一般名詞化しているとのこと。潤滑作用や皮膚の保湿効果があるので、アカギレや切り傷・擦り傷・火傷などに用いられるほか、各種医薬品や化粧品の基材としても広く使われています。

実際私が使ってみた感じでは、臭いなどはほとんどなく伸びがいいので、ほんすこしの量で指先をカバーすることができてます。ただ油分のそれとは異なるものの若干べとつきはあるので、よく刷り込んでから余分はティッシュで拭き取ったほうがいいようです。

薬局やドラッグストアでは驚くほどたくさんのスキンクリームが売られています。ビタミンや尿素やあれこれを配合したもので、その効果をうたってはいますが、皮膚の荒れなどを修復するのはおのれの身体自体であって、スキンクリームが直接直してくれるわけではありません。要するに外からの刺激を避けることができればいいので、香料とかなんとかよけいな成分の入っていない、変質しにくくしかも比較的安価でもあるワセリンを私は気に入っています。

 

道標

鳥海山は道標(どうひょう・みちしるべ)の整備が万全とはいいがたいと思います。現在の「登山」の一般的な対象となる上部、標高約1000mより上は比較的よく整備されていますが、それより下の標高の低いところは登山者が以前にくらべかなり減ったこともあるのか、道標や目印・案内板はあまり整備・更新されていません。コースによってはまったくないといって過言ではないところもあります。

もちろん道標がなくても、地図(1/25000地形図が基本)とコンパスをきちんと使えれば、たとえまったく初めての山やコースであってもなんとか登ることは可能ですが、それでも標識がしっかりしているにこしたことはありません。まして大半の登山者&ハイカーが地図やコンパスなど持っていないのが実状ですから、道標もなにもなければメインルートであってもちょっとした分岐や枝道でたちまち迷ってしまうでしょう。ことに濃い霧で見通しがきかない場合や、日没時、残雪で夏道が分断されているときなどは不安でたまらないと思います。

鳥海山の中・低山域に登ると、道標が朽ち果ててまったく用をなさなくなっている例が珍しくありません。最悪なのは行き先の地名などはいちおう判読可能なのに倒伏したり斜めにかしいでいたりしていて、指し示す方向が本来のものと違っている場合です。これでは逆に道迷い・遭難へと誘っているようなもので、こんな類いの道標ならいっそのことまったく無いほうがまだましです。

道標は大きくて長年保つようなしっかりしたもの立派なものを設置しようとするなら相当な費用がかかります。材料の運搬や作業は山道の場合は基本的にみな人力でやらざるをえないので、車や大型の機械を使える平地にくらべて何倍もの時間とお金がかかるでしょう。その結果、おおぜいの人が訪れるような山とコース以外は後回しにされ見捨てられてしまうことになります。もちろんそれでも国や県や市町村等に公的な設置の要望を出し続けることは必要ですが、そればかりに頼っていたのでは「財政難」ということで待てど暮らせどなかなか実現しないでしょう。

 

それなら自分でやってみればいいと思います。立派なものでなくても、要するに道標としての用が足りさえすればいいわけですから。ということで私と若干名有志はときどき、十数年前から写真のような簡易な道標を付けています。私は地元の遊佐高校の非常勤講師をつとめていることもあって(鳥海山の湧水という講座。フィールドワークが中心で年数回)、高校生たちにも最近は手伝ってもらっています。厚さ24mm、幅9cm、長さ25〜30cm程度のヒノキまたはヒバといった腐りにくい板に、地名などを油性マジックで2〜3回なぞります。字は間違ってさえいなければ下手でもなんでもかまいません。樹に縛り付ける場合は園芸用のシュロ縄を用います。紐が樹に食い込んで樹を痛めてしまうおそれがあるからです。反対に岩角などに設置するなら腐食しにくいステンレスの針金がいいでしょう。遊佐高校のフィールドワークで設置するときは「遊佐高校」という特注の焼印を板面に押してあります。

これくらいのものなら材料費+加工費は一個あたり1000〜1500円ほど、板を切って削って孔をあけてといった事前の作業や、現地での取り付けに要する時間は一個あたり1時間程度でしょうか。ただその場所に行く(登る)までの時間や労力は含まれていませんが、わざわざ道標の設置のためだけに登るよりも、通常の登山やハイキングの「ついでに」といった気軽な感覚でいいと思います。たいした荷物にもなりませんので、コースタイムさえ余裕をもっておけばいつでも取り付け可能です。

この程度の簡単なものでも3〜5年くらいは保ちます。それ以上だと紐が切れて落下していることがありますが、そのいちばんの原因は融雪時に雪が縮小するのといっしょに引っ張られてしまうからのようです。かといってあまり高い位置に設置すると目に入りにくく見落とされてしまいますので、そのあたりは少し注意と工夫が必要になります。油性マジックで記した文字もかすれてしまいがちですが、それはまた上からなぞればすぐに修復できます。また以前に取り付けたものを点検して、痛んでいたら紐なり板なりをすぐにその場で交換できます。

鳥海山の全域で計画的に網羅的に、この程度の標識でもいいので設置すれば、登山やハイキングや各種調査等で訪れる人にたいへん役に立つと思います。

生皮苧のバッグ

 

生皮苧は「きびそ」と読みます。昨年12月4日の記事でご紹介したように、酒田市在住のタピストリー作家、十川眞紀(そがわまき)さんの作品です。

生皮苧は蚕の繭の一番外側の部分、つまり蚕が最初に吐き出す糸ですが、太さにむらがあるためにこれまではあまり利用価値がなく低品質なものとみられていました。ふぞろいのため糸に紡ぐこと自体も困難だったとか。それが製糸技術の進歩で生皮苧でもちゃんと長い糸にすることができるようになり、太さがまちまちでそろっていないところが逆におもしろい、味があるということで、最近はたいへん脚光をあびているものです。十川さんはご自分で染色した生皮苧を横糸に、麻糸を縦糸にして手織り機で織っています。織った厚手の布をバッグに仕立てるのは専門の人に外注しているそうです。

私は十川さんの個展で気に入って、何色かあった中からこの黄色系のバッグを妻の誕生日プレゼント用に買い求めたのですが、素人ながら欲をいえば持ち手の皮革がもうすこし厚ければバランスがいいかなと感じます。

 

3/16の胴腹ノ滝

 

3月16日午後1時頃の胴腹ノ滝ですが、一昨日をふくめここ何日か積雪があったためか、前回の3月8日より水量は逆に減っています。おおよそ前々回の2月29日と同水準。歩道入口付近の、一度はきれいに消えた道路面の雪も、今回は20cmくらい残っていました。

湧水の温度は右が8.8℃、左が8.6℃と、左右ともに前回と変わりません(気温は2.6℃)。水量に明らかな変化はあっても、水温は変わっていないというのもおもしろいところです。

しかし写真でも分かるように、それほどたいした降雪でもないのに湧水量がすぐに影響を受けるのは、胴腹ノ滝の浸透水域は比較的標高の低いところでの割合が多いからでしょう。通称「吉出山」と呼ばれる部分ですね。したがって、このエリアで皆伐や不法投棄、大規模の採石などが行われると、水量だけでなく水質にも短期間で悪影響を及ぼす可能性は大きいと私は考えています。

ところで胴腹ノ滝の前の水場には下のような掲示板がかかげられていますが、文中の「八合目を源とし」ははっきりいって当たってませんね。湧水温からいうともっとずっと低いところが主な水源でしょう。「〜合目」という表現に従うならいちばん高いところでせいぜい6合目くらいで、主要な水源は2〜4合目といったところです。「優れたミネラルバランスの水」も、胴腹ノ滝はミネラル分が非常にすくない(=全硬度10前後)ことからいえばむしろ「ノンミネラルウォーター」と称したほうがふさわしいかもしれません。

 

ティッシュペーパー

 

上の写真はイオン系列のスーパーマーケット、マックスバリューで最近みかけて購入したティッシュペーパーです。オリジナルブランド「ベストプライス」の商品のひとつで、原料の一部に牛乳パックなどの故紙を使用することでコストを下げたとあります。ティッシュ自体のコスト低減だけでなく、パッケージもそうとう簡略化していることが分かります。ややグレイッシュなハーフトーン半艶の5色ですが、ここまでくるともはやデザインワークともいえないくらいのシンプルデザイン。巷にあふれるへんな、みょうちきりんな、ださい、へたくそな色柄のティッシュペーパーに比べれば、これはこれでむしろ潔いと言っていいかもしれません。

10年近く前までは、デザイナーやデザイングッズが大好きな人たちに絶賛されたティッシュペーパーがあったのですが、それはスコッティの繊細なストライプ柄のパッケージです。「そのまま部屋に置いても大丈夫なはじめてのティッシュ」とうたわれるほどの優れたデザインで、金属や木や革などでできたティッシュボックスを別途購入してわざわざティッシュペーパーを箱ごとそれに収納していた人も、スコッティならその必要はない、そのままのほうがむしろいいという評価でした。私もたいへん気にいっていました。ティッシュペーパーはまったくの日常的な消耗品ですが、すこし値段が高くてもできるだけスコッティを選ぶようにしていたほどです。数十円よけいに払うことで気分がよくなるなら安いものです。

ところが製紙業界の統合再編などの余波を受けたのか、スコッティのそのパッケージがあるとき変わってしまいました。同じストライプ柄ながらやけにくすんだ色合いと安っぽい紙質の箱になってしまったのです。あれは私としてはけっこうショックでしたね。いっそまったく別のデザインになったのであればあきらめもつくのですが、情けない「改悪」にすぎないわけですから。案の定、新パッケージのスコッティは不評だったようで、すぐに姿を消してしまいました。その後はカラフルな花柄やらなにやらのお決まりの退屈なデザインになり、今に至っています。

冒頭のマックスバリューのティッシュも、他よりはましかなというだけで、けっして気にいっているわけではありません。せいぜい消去法で選択するだけ。ただたしかに値段的にお買い得ではあるので、とうぶんはこれでいこうとかなと思っています。

私も昔はグラフィックデザイナーの端くれでしたので、じつはひそかに考案しているティッシュボックスのパッケージデザインがあるんですが……。誰か声をかけてくれませんかね。

 

ぜいたくな昼食

 

これは昨日の工房での昼食です。胴腹ノ滝の湧水で炊いた、有機栽培(特別栽培米)のササニシキのご飯。地元産の無添加のみそとダシを使い、やはり胴腹ノ滝の湧水でいれたみそ汁。ネギ+納豆。大根の醤油漬。たくあん。シソと昆布の佃煮。らっきょうの甘酢漬。南高梅の梅干。

どうってことのないごくふつうの簡素な昼食ですが、見方によってはこれ以上はないくらい贅沢な食事です。ほんとうにおいしくて、ついご飯を食べ過ぎてしまうくらい。最近はこういう良質な素材を用いたシンプルな食事をしているせいか、巷でいわれるところのいわゆる御馳走を食べたいという欲求はほとんどなくなってしまいました。

ちなみにガラス器はみなイワキガラスのパイレックスです。一人で食べるにはこれも充分すぎるほど立派な器と思います。もちろん平らな蓋がそれぞれに付くので、重ねて冷蔵庫にそのまま収納できます。