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通しホゾの頭の仕上げ

 

通しホゾは相手の部材の外まで貫通するわけですが、クサビを打ち込んで部材を締結したあとに、そのホゾの頭の処理を行います。ケースによっては地と段差がない面一にならすこともありますが、当工房ではいくらか地よりもホゾの頭が出るように仕上げることを基本としています。それはホゾの先端を地と面一にすると、いくら乾燥材であっても組み立てたあとで温度湿度等の影響で木が収縮し、結果的にホゾがすこし飛び出るか逆に凹みとなるおそれがあるからです。仮に0.3mmの収縮差があれば0.3mmの凹凸になります。それは見た目にきれいではありませんし、ホゾの強度もそのぶん損なわれることになります。

したがってはじめからいくらかホゾの先を出して仕上げておけば、上記のような事態は避けることができますし、ホゾとしての強度も増し、また「構造自体がアクセント」とすることもできます。ではどうやって加工するかを順を追って説明します(本職の方には当たり前すぎることでしょうからスルーしてください)。

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ホゾの両側にガイドとなる薄板を2枚、貼って剝がせるタイプの両面テープで取り付けます。上の写真では厚さ1.5mmのヒノキの板を貼っています。

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ガイドに沿って、薄手の造作用の目の細かい鋸でホゾの先端を切り取ります。ホゾは地より通常4mm長く出るように設計し加工しているので、この場合はガイドより2.5mm出ていることになります。あまり短いと鋸刃が外れてしまいますし、そもそもホゾ組みするときに必須の面取りができません。ちなみに写真の鋸はレザーソーを自分で寸詰めしたホゾ・ダボ切り専用の鋸です。

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さらにガイドにそってノミで切断面をきれいしますが、横にスライドするように殺ぐようにして削ります。外から中に向かってすこしづつ殺いでいかないと端がめくれて壊れてしまうおそれがあるので注意。

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ガイドの薄板を取り去ってから、最後に周囲をノミで1mmの面取りをします。こうすることによってすべてのホゾの頭が同じ大きさと形できれいにそろうことになります。

 

通しホゾと大入

通しホゾと大入

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大入(おおいれ)とは何かとときどき訊かれることがありますが、異なるパーツが組み合わさるときに、片方のパーツにもう片方のパーツの断面が丸ごと入り込む仕口のことをいいます。とうぜん入る側は相手より一回り以上小さい断面でないと、この大入はできません。

建築の造作などでは大入のみの組み手とする場合もありますが(床の間の部材等)、家具の場合はホゾ指しと併用することが多いです。ホゾとホゾ穴によって木材同士を締結するのはもっとも強度があり耐久性もあるといっていいのですが、さらにそれに大入が加われば最強です。写真では、文机の脚に対して妻手の幕板を小根付き通しホゾ+大入によって組み立てようとしているところです。長手の幕板は先に同じ仕口で結合ずみです。

大入は大入する側のパーツを完全に仕上削りまで終えた状態で仮のホゾ組をし、その接した境界面を細い線で写し取り(ひかる、と言います)、いったん大入する側のパーツを抜き取ったあとにその線よりわずかに小さく深さ2〜3mm程度圴一に掘り込みます。本組みするときは大入する側の大入部分の周囲を1mmほど面取りし、さらに木殺し(玄翁で軽く叩いて圧縮すること)してから組むことになります。木殺は木の繊維をすこしたわめた程度の状態になっていますので、組んだあとで湿り気をあたえることによって復元し、大入がさらに隙間なくぴったり収まるという仕掛けです。ただし加工には細心の注意と高度な技術が必要で、しかもうまくいけばいくほど大入してあるかどうかは後からは分かりません。

家具の製作において当工房ではテーブルの脚部であるとか椅子のパーツなど、とくに強度を必要とされるものについては、「大入+通しホゾ+クサビ締め」とすることを原則としています。それが見た目にも強度的にもベターであると考えているからですが、本職の家具屋さんでも大入の話はめったにきくことはないので、じつはきわめて稀なことなのかもしれません。まあ、大入をするかしないか、ホゾを外まで通す通しホゾとするか中で留める留めホゾとするかで、全体の手間は何割もちがってくるので、いたしかたありませんね。経済効率第一とするならばまったく割に合わない方法であることはたしかなので、他者にはすすめません。

 

脚の詰め物

 

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建築の解体材を利用して戸棚と文机(ふづくえ)を製作していますが、写真は文机の脚にホゾ穴を開けている途中です。

長手の幕板と妻手の幕板がこの脚に組合わさるのですが、通しホゾが脚の内部で上下に90度に立体交差します。しかしホゾ穴を角ノミ盤であける際に、片側のホゾ穴がすでに開けてある場合は、角ノミの刃に押されて最後のところで穴がめくれて壊れてしまいます。それを避けるための詰め物が必要です。ホゾ穴の大きさにきっちり合わせた寸法の角材(この例ではスプルス材)をこしらえて、端の面取りをしてからホゾ穴の内側のほうから軽く打ち込んで、脚の厚みよりわずか短くなるようにカットします。

これをしないで双方のホゾ穴をあけてしまうと、脚のホゾ穴部分の強度がだいぶ低下してしまいます。組んでしまえば表からはまったく見えなくなってしまう箇所ですが、だからこそちゃんと手当をしなければなりません。

写真でいうと詰め物の木口の短いほうが組み立てたときの表(外)側、長いほうが裏(内)側で、裏側のほうは通しホゾのぶんと小根ホゾのぶんとふたつ詰め物をしています。この脚にかぎりませんが、各パーツの表になる面には◯、裏になる面には△の印を赤色のクーピーでマーキングしています。青色の矢印は自動鉋盤を通した際の切削方向で、数字はその結果の材料の厚さをあらわしています。こうした表示はそれぞれの工房や木工家によって異なると思いますが、私のところは30年くらいずっとこんなふうな感じです。

 

文机の脚部のホゾ加工

 

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建築の古材を利用して家具(戸棚&文机)を製作しています。写真は文机2卓分の脚部幕板ならびに根太です。4本の脚とは通しホゾで組むのですが、長手の幕板と妻手の幕板とは脚の中で上下に立体交差します。組み手が表に現れるので、ホゾとホゾ穴の部分の加工はかなり厳密に行う必要があり、0.1mm以下の精度を目安としています。

はじめのホゾ取りとホゾ穴開けはそれぞれ専用の機械で行うのですが、その後の仕上げや微調整・仮組などはすべて手作業となります。材料は必要なぶんのぎりぎりしかないので、失敗しないようにしなければなりません。

 

コーヒーブレーク 43 「リカちゃん」

 

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うすうすと寒そうに鶯餅

この前、地元の産直販売店に並んでいた桜餅と鶯餅を買って食べた。たいへんおいしかったが、ちょっとね気がはやすぎるんではないかと思った。まだ3月上旬だよ。桜が咲くにはまだ2ヶ月ほど間があるし、鶯だってまださえずってはいない。季節をすこしだけ先取りして味わうというふれこみはわからないではないが、それにも限度というものがあるだろう。/ウグイスはその鳴声などからたいへん有名な鳥ではあるものの、よくほかの鳥と間違われることがある。「梅に鶯」とある絵や写真なのに、じつはその鳥がウグイスではなくメジロであることも。メジロはその名の通り目の周りが白い輪になっており、また体色も鶯餅にまぶしたきな粉のような黄緑色。そのために鶯色というと本来のウグイスの体色=鈍い淡黄褐色ではなく、メジロの体色=きな粉の色と思っている人も珍しくはない。

歴代のリカちゃんもいて雛祭

実家でも現在のわが家でも雛祭りにはほとんど縁がないが、親戚や知人などで娘さんがおられる家庭だとなにかしら雛祭りにちなんだものを玄関や客間などに置いてあることが多い。伝統的な立派な雛飾りをすえているところもあれば、男雛女雛のふたつだけを象徴的に飾っていることもある。おおがかりな雛飾りであっても他家に披瀝することをとくには想定していない場合は、飾り付けを自由に思い思いに行っていることも。要するにその家の女の子が主役なので、その子が飾りたいなと思ったものを好き勝手に飾ればいいのである。/リカちゃんはタカラトミー社の着せ替え人形で、1967年の発売以来日本製の同類の人形のトップに君臨している。現在のリカちゃんは5代目のようで、キャラクター設定によれば小学校5年生・11歳・父がフランス人母が日本人のハーフ・5月3日生まれ・身長142cm・体重34kg・趣味はお菓子作りとか。ペットにプリン・レモン・ライムという犬がいるが、残念ながら猫はいないようだ。

無色透明の水がながれ春の泥

泥は主に砂・粘土・シルト・コロイドやその他の有機物が、水と混じって液状または乾いた土のようになったものである。泥というとつい「汚れる」「きたない」とばかりイメージされがちであるが、腐敗物や有毒物質が混入しているのでもないかぎりは実際には無害であるし、みかたによってはたいへん美しいものであるといえる。大人とちがってよけいな先入観がない小さな子どもたちは泥んこが大好きである。ぬるりとした感触や、すこし冷たい感じや、含水率がわりあい少ない泥であればいろいろな形に自由に作れるなど、遊びの道具としては泥の右に出るものはそうはないだろう。

 

ヒヨドリ

 

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最初におことわりしておきますが、私は鳥類についてはほとんど分かりません。野鳥の場合、肉眼で識別できるほどの距離に近づくことがそもそも困難であることが第一の理由ですが、それなら双眼鏡とハンディな図鑑を携行していればよさそうなものですが、それを実行しないのはやはりそれほど特別には鳥に興味関心がないからでしょうね。

しかし一昨日は工房でコーヒーでも飲もうと思って台所に立ったら、すぐ外の竹やぶのところに見なれない鳥がいました。距離は3mくらいですが、木粉などで汚れたガラスを通して見ているせいか、こちらの存在に気づいていないようす。10分ほど観察していました。全長30cm近く、ハトよりはやや小さいくらいの中型の鳥ですが、頭と胸の羽毛のつんつんした感じがなかなかおもしろいです。左右に跳んで移動しながら地面をつついています。

帰宅してから図鑑とインターネットで調べてみるとヒヨドリのようです。野山の野草にヒヨドリバナやヨツバヒヨドリがあるように名前はよく聞くのですが、ヒヨドリそのものをちゃんと見たのはじつは今回が初めてでした。ヒヨドリは分布がほぼ日本国内に限られる留鳥ですが、国内での遠距離の移動を行うとのこと。「ヒヨドリバナは鳥のヒヨドリが渡ってくる頃に咲くから」との説を半分は裏付けているのかもしれません。

※ 写真はコンデジのデジタルズームで、手持ち、汚れたガラス越しという最悪の条件で撮ったものです。まあ、これが限界ですね。

 

苔の新緑

 

山の麓からはだいぶ雪が消えてきました。とりわけ湧水があるようなところはいち早く地面や岩が露出し、じつにさまざまな苔(正式には蘚苔類)が観察できます。もうすこししてすっかり雪がなくなる頃には草が芽を出し、あるいは急速に背丈を延ばし、次いで樹木が葉を次々に開いてきますが、苔の仲間はそれらの草木からじゃまををされず陽光がたっぷりあるうちに大急ぎで活動を開始するように見えます。

もちろん実際には苔は常緑で、程度の差はあれ一年中成長を続けているのでしょうが、草木がほとんどまだ枯れ色となっているなかでは苔類の緑は非常に鮮烈で、この時期はいうなれば「苔の新緑」という感じがします。

苔は日本国内だけで数千種をくだりませんし、まだまだ調べ尽くされていません。しかし顕花植物などとちがって種の同定・分類はとても難しく、最終的には顕微鏡で細胞の構造を観察しなければならない場合も多いので、興味はあれどちょっと手が出ません。以下の写真は同一の場所で10分くらいの時間で、ぱっと見た目に異なる種類の苔を撮影したものですが、専門家ならたちまち数十種の苔を見いだすでしょう(最初のはホウオウゴケですが、あとはよくわかりません)。

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古材からの家具の木取

 

お客様からおあずかりしていた建築の解体材から、文机2卓と、小さめの戸棚1台の木取をなんとか終了しました。筑後何十年も経っているマツ材の梁だったのですが、割れがたくさんあり節も多かったので、長さ1.3〜1.8mほどにカットした梁5本をほぼすべて使ってしまいました。

量的には木取を終えた材料と使用不可の材は、比率でいうと1:2くらいにもなります。木取はとうぜん仕上がり寸法より厚みも幅も長さも大きめにとってあるので、最終的に家具となる部分はさらに減り、元の素材全体の2割くらいになりそうです。また、古材なので切削の途中で釘などの金物や砂利などが出てこないか心配していたのですが、小さな釘が2本あっただけで、それも早めに気づいて除去したので、バンドソーや鉋盤の刃物を欠いたりしないですんだのは幸いでした。

このように古材を再利用して家具等を製作するのは、材料の歩留低下や加工の手間の増加、刃物を痛めるおそれなど、さまざまな難点があります。それでいて元の材料がよほど特別でかつ超一級の材料でもないかぎりは、新材で作るのにくらべ仕上がりはいまいちの感じとなってしまうことが多いのも事実です。すなわち客観的経済的な観点からだけでいうならば、けっして「お得」ではありません。

しかし、ものの価値はいうまでもなく経済的側面だけで決まるわけではありません。上記の問題を充分にご理解していただいた上で、思い出の深いまたは由緒ある古い木材を活用・再利用していくのはたいへん有意義なことだと思います。家の持ち主などがとくべつに強く希望されないかぎり、いまは建築の解体材はすぐ焼却処分されてしまうだけですから。

下の1枚目の写真は最後の梁をまず芯のところで半割した後に、手押鉋盤と自動鉋盤とで3面を均しているところです。高さ21cmもある角材ですが、ふだんの家具作りではこんな大きな寸法の材料を削ることはまずないのでちょっとびっくりしますが、機械のほうはなんなくスムーズに削ってしまいました。次にバンドソーで板に挽き割るのですが、製材所の大きなバンドソーのように材料を爪で固定して台車ごと移動して切るのではなく、単に材料を手で持って押して切るだけの簡略な小型のバンドソーなので、材料自体が不安定な形状ではたいへん危険です。そのためのいわば前処理です。

2枚目の写真は戸棚1、文机2のすべての部材を木取したところです。まだラフな状態なので、これから一次下拵えをしていきます。

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古材からの製材

 

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お客様からおあずかりしている建築解体材の古材ですが、先日再製材をはじめた際の写真です。はじめはスギ材かと思ったのですが、それぞれの梁をまず芯から大きく二つに割ってその面を削ってみると、どうやらマツのようです。長年すすでいぶされて黒くなっていますし、ひび割れも多いので、どこまで再利用できるかはわかりません。いちおう予定では小さめの戸棚をひとつ、文机を二つ作るつもりでいるのですが、もうすこし挽き割って木取と下拵えをすすめてみないとほんとうにできるかどうか。

長さは1.4〜1.8mほど、幅は二つ割りにした後の状態で18〜22cmほどです。割る前の木口長径は最大35cmくらいあったのですが、工房の簡易なバンドソーではその方向に挽き割るのは無理なので、短径の方で挽きました。それでもやっとという感じです。

 

おばけやしき 2015

 

私も設営などに関係しているイベントですが、明後日の3月1日(日)の午後0:30〜3:30に遊佐町の生涯学習センター(旧中央公民館)にて「おばけやしき 2015」が開催されます。参加料はお一人300円。怖いコースと、怖くないコースの二通りありますので、幼児連れでも大丈夫です。ぜひ来てくださいね。★写真をクリックすると2段階で拡大表示されます。

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