山の麓からはだいぶ雪が消えてきました。とりわけ湧水があるようなところはいち早く地面や岩が露出し、じつにさまざまな苔(正式には蘚苔類)が観察できます。もうすこししてすっかり雪がなくなる頃には草が芽を出し、あるいは急速に背丈を延ばし、次いで樹木が葉を次々に開いてきますが、苔の仲間はそれらの草木からじゃまををされず陽光がたっぷりあるうちに大急ぎで活動を開始するように見えます。
もちろん実際には苔は常緑で、程度の差はあれ一年中成長を続けているのでしょうが、草木がほとんどまだ枯れ色となっているなかでは苔類の緑は非常に鮮烈で、この時期はいうなれば「苔の新緑」という感じがします。
苔は日本国内だけで数千種をくだりませんし、まだまだ調べ尽くされていません。しかし顕花植物などとちがって種の同定・分類はとても難しく、最終的には顕微鏡で細胞の構造を観察しなければならない場合も多いので、興味はあれどちょっと手が出ません。以下の写真は同一の場所で10分くらいの時間で、ぱっと見た目に異なる種類の苔を撮影したものですが、専門家ならたちまち数十種の苔を見いだすでしょう(最初のはホウオウゴケですが、あとはよくわかりません)。