通しホゾと大入

通しホゾと大入

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大入(おおいれ)とは何かとときどき訊かれることがありますが、異なるパーツが組み合わさるときに、片方のパーツにもう片方のパーツの断面が丸ごと入り込む仕口のことをいいます。とうぜん入る側は相手より一回り以上小さい断面でないと、この大入はできません。

建築の造作などでは大入のみの組み手とする場合もありますが(床の間の部材等)、家具の場合はホゾ指しと併用することが多いです。ホゾとホゾ穴によって木材同士を締結するのはもっとも強度があり耐久性もあるといっていいのですが、さらにそれに大入が加われば最強です。写真では、文机の脚に対して妻手の幕板を小根付き通しホゾ+大入によって組み立てようとしているところです。長手の幕板は先に同じ仕口で結合ずみです。

大入は大入する側のパーツを完全に仕上削りまで終えた状態で仮のホゾ組をし、その接した境界面を細い線で写し取り(ひかる、と言います)、いったん大入する側のパーツを抜き取ったあとにその線よりわずかに小さく深さ2〜3mm程度圴一に掘り込みます。本組みするときは大入する側の大入部分の周囲を1mmほど面取りし、さらに木殺し(玄翁で軽く叩いて圧縮すること)してから組むことになります。木殺は木の繊維をすこしたわめた程度の状態になっていますので、組んだあとで湿り気をあたえることによって復元し、大入がさらに隙間なくぴったり収まるという仕掛けです。ただし加工には細心の注意と高度な技術が必要で、しかもうまくいけばいくほど大入してあるかどうかは後からは分かりません。

家具の製作において当工房ではテーブルの脚部であるとか椅子のパーツなど、とくに強度を必要とされるものについては、「大入+通しホゾ+クサビ締め」とすることを原則としています。それが見た目にも強度的にもベターであると考えているからですが、本職の家具屋さんでも大入の話はめったにきくことはないので、じつはきわめて稀なことなのかもしれません。まあ、大入をするかしないか、ホゾを外まで通す通しホゾとするか中で留める留めホゾとするかで、全体の手間は何割もちがってくるので、いたしかたありませんね。経済効率第一とするならばまったく割に合わない方法であることはたしかなので、他者にはすすめません。

 

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