私の部屋で、ほぼ定位置の羽毛の掛け布団の間にはさまって眠るトントと、その布団にうえに乗っかって寝るアル。縦列駐車ならぬ猫の縦列睡眠。
鳥海山の湧水について個人的に調べ始めてから、もう15年くらい経つが、地面の中から出て来たばかりの水はおおよそ10℃前後ものが多い。私が実際に自分で計測してもっとも低かった湧泉の水温は3.9℃で、もちろんそれは雪解け水などではない秋口の温度である。どうしてこれほど低い水温が保たれているのか不思議だ。/そうした湧水があるところは一年中凍結することはないので、他とくらべると相対的にはかなり温度が高い。そのせいだろう、周囲は一面の枯れ色なのにその一画だけが青々としていることがある。水中や水辺の苔であったり多年草などが繁茂している。鳥海山の中腹域では、普通ならその標高にはありえない低地の植物が生えていることもある。暖かい湧水が豊富にあることで何百年だか何千年だかをそこで生き延びてきたのだろう。
高圧電線の鉄塔などはその高さにくらべると骨組みがずいぶん華奢なように思う。むろん実際にはコンピューターなども駆使して、大型台風や大地震などにも耐えるだけの充分な強度を保持しているに違いない。安全係数をどのくらいでみているのかは不明ではあるものの、いずれにしても必要以上に頑丈にまた重くしても、費用がかさむばかりでなく過大な自重による悪影響も出てくるので、あの細さで大丈夫ということだ。
ある俳人が「俳句で絶対失敗する言葉」なるものをインターネット上で書き連ねていたことがあって、それの筆頭格のひとつがクレーンだった。筆者いわく、クレーンという言葉を使った俳句をしばしばみかけるものの陳腐・常套的で、一度も佳句に出会ったことがない。だから使わないほうがいい、と言う。たしかに使いづらい言葉というものはあるが、だからといっていい句などできるはずがないと断ずるのは俳人としてはあるまじき認識であり言い草だろう。角川俳句賞を得ている女性だが、なにかにつけ口調が偉そうなのである。実際のところは単に個人的な好き嫌いや得手不得手を述べているにすぎず、それをさも普遍的真理のように脚色しているだけの暴論である。/さてラフテレーンクレーンである。クレーンにはとうぜんながらずいぶん多くの種類があるのだが、基本的には定置型と移動型、そしてその移動にクローラ(キャタピラー)を使うか車輪(ホイール)を使うか、といったところだ。ラフテレーンというのは不整地ということで、そうした場所でも走行可能な大型のタイヤを供えたクレーンである。ラフタークレーンともいう。
浴室の窓辺に置いたアザレア(西洋ツツジ)の鉢植えです。私は基本的には「花は野に置け」派ですが、風雪の吹き荒れる当地では冬場は野の花はほとんどないので、その間は室内にいくつか鉢植えの花を置いています。さいわい床暖房で、冬の間は完全にスイッチを切ってしまうことはないので、厳寒期でも鉢植の植物が凍結してしまう心配はありません。極端に寒さに弱い植物でもないかぎりはふつうに室内で過ごすことができます。
ただアザレアの場合は困ったことがふたつあり、ひとつはツツジ科の植物によくあるように全草が有毒であることです。とくに犬猫には危険で、葉や花等を多くかじった場合は最悪では死亡に至ることもあるようです。わが家でも、最初にこの鉢をトイレに飾ったところ、飼い猫のアルが葉を二三かじってしまい、30分ほどして餌ともども盛大に吐いてしまいました。それでインターネットで調べてペットにも有害であることが判明したわけですが、それ以来ふだんは猫が入れない玄関の棚板のところに置いています。
二つ目の困ったことは、そうして玄関にずっと置いたままだと日射が不足してしまうことです。葉や茎が徒長してしまいます。上の写真でもすでに若干その気配があります。そこでできるだけ明るくて、しかも猫が開けられない程度にはロックできる場所、日中はまず開けることがない場所ということで、浴室の窓辺に置くことにしました。朝晩はまた玄関に移動します。
次の家具の製作の準備を始めるべく、工房内の材料を引っぱり出していたら、奥からタモ(ヤチダモ)の幅70cm、長さ2mほどの一枚板が出てきました。厚さは30mm前後とすこし薄いのですが、1/3くらいに非常にみごとな波状の杢が出ています。写真は材料の表面をすこし湿らせて撮影したものですが、実際の大きさは写真の横の部分で20cmほど。波打っている筋はひとつひとつが年輪ですから、いま写っている部分だけでも100年以上はあります。樹齢としては300年を超えているでしょう。
波状の杢も広義には縮杢の一種かもしれませんが、年輪そのものがこれほどきれいに波打っている杢というのはかなり珍しいと思います。あまりにも美しくかつ貴重なものなので使うのは躊躇してしまいます。ちなみに今度作る予定の家具には杢板ではないノーマルなタモを使うつもりでいます。
私の子供も通っている学童保育所の玄関改修にともない、下駄箱を新調することになりました。大工さんからの外部発注という形になります。材料はパシフィック-コースト-メープル(PCメープル)という北米産の広葉樹でカエデの仲間。通称ソフトメープルといわれているもののメインの樹種です。同じ北米産でもたとえばアメリカン-ブラック-ウォールナットやアメリカン-ブラック-チェリーなどに比べると立法メートルあたりの値段はだいぶ低く、量的にも安定的に市場に出回っています。大径材でなければ耳落とし&乾燥材で入手できるのもいいところです。
当工房ではこれまでソフトメープルは家具に使ったことはないのですが、今回はいちばんには予算的な都合。ほかに強度や見栄えや、確実に早めに入手できそうな乾燥材というとこれくらいしか選択肢がありませんでした(円安でこのところ急に値上がりしていますが)。
写真はつい先頃、なじみの材木屋さんから届いたメープルの板32枚です。サイズとしては厚み24mmくらい、幅10〜20cm、長さ1.8〜2.4mといったところです。出荷の一覧表はあるのですが、あらためて私のほうでも検寸し、材料台帳以外に材木自体にも樹種別の通し番号やサイズ・グレードなどを油性インクで記入します。次いで家具の製作にそなえて木口をカットしているところです。手前がその切落材ですが、人工乾燥材ながらひどい割れや反りなどはなく、干割れを完全に除去しても5〜10cmほど短くなっただけで済みました。干割防止剤などが塗られているようには見えないので、乾燥技術の高さがうかがえます。現地挽き&現地乾燥材です。
下駄箱を作るのに必要な図面上の材積の計算値に対し、天然素材の常ですが何割か余分に取り寄せました。しかし届いた材木は大半がストレートで無地の良材なので木取なども効率よくできそうですし、いくらか手元に材料が残るかもしれません。もちろん材料費は計算値のぶんしか見積もりに入っておらずそれしか頂戴できませんが。
自宅のパソコンの定常の背景画面ですが、できあいの絵や写真ではなく、自分で撮った自然の風景の写真を使っています。あまり同じものだけだと飽きてしまうので、最低限季節の変わり目みたいなときには変更しています。基本的にはいくぶん季節を先取りする感じのものを用いることが多いです。
持ち歩くことが多いiPad miniの画面も同様ですが、これらはあくまでも「背景」なので、色彩や絵柄が強烈すぎたり意味深なものは不適切で、かといっておだやかすぎて無地の壁紙みたいなものでもつまりません。というわけで意外にこれは悩みどころです。
今回変更した写真は鳥海山の標高1400mあたりの9月頃の写真ですが、高山植物のヤマハハコの白い花とエゾオヤマリンドウの青紫の花の群落がとてもきれいです。ほかには同所にニッコウキスゲ、シロバナハナニガナ、ヨツバシオガマ、ハクサンシャジン、ミヤマアキノキリンソウ、なども咲いていましたが、人工的な庭園とちがいたいへん心休まるものがあります。
ものすごくというほどではないが温泉は好きだ。自宅から車で10〜30分程度の範囲内に10カ所近い温泉があるので、ときどき子どもも連れて温泉に入りに行くことがある。上の写真は鳥海山南面の標高500mほどのところにある国民宿舎鳥海山荘の温泉のすぐ近くから撮ったもの。かなり前の年の写真だが、1月中旬に雪景色の中で露天風呂から眺める夕焼けがたいへん印象的だった。ただここの温泉はそんなに広いものではないので、曜日や季節・時間帯を選ばないとあまりのんびりできないのが難点である。/湯の花は温泉の不溶性成分が析出・沈殿したもので、源泉の泉質によってさまざまであるが、硫黄や硅素、鉄、カルシウム、アルミニウムなどが主なもの。析出量が多いところでは、その成分だけを捕集して乾燥させ、容器に詰めて商品として販売しているところも少なくない。それを自宅の風呂にでも入れれば手軽に温泉気分にひたれるという売りなわけであるが、むろんそれは温泉という要素のごく一部分にすぎない。
冬も終わりに近づき気温が上がってくると、雪は重く湿った牡丹雪に変わる。降ってもそのまま積もり続けることがなく、降るそばから溶けてしまう場合もあり、そのようなまばらに積もった雪や溶けかけの雪のことを斑雪(はだれゆき)と呼んでいる。/歳時記ではこれを春の季語としているのだが、これなどもやはりもっと暖かい地方の話であって、北国・雪国では牡丹雪であれなんであれ、雪が降るような日が続いているかぎりは冬である。12月1月にくらべれば日が長くなり、たまに晴れれば気温が上がるとはいえ、せいぜい5度くらいで一時のこと。まだまだ寒いし、2月3月になっても頻度こそ下がるとはいえ吹雪いたり水道が凍結することもある。そういった心配がなくならないかぎり春とはいえない。
山形県庄内地方には、最上川の河口をはじめたくさんの白鳥が越冬にやってくる。日本全国では毎年6〜7万羽のコハクチョウ、オオハクチョウがやってくるというが、その中でも最上川河口に近い両羽橋付近にはなんと9000羽ほども飛来し、日本一の数だとか。早いものは10月には飛んで来て、冬の間この最上川や近辺の河川や湖沼ですごしている。日中は餌を求めて山間にまで飛んでくることも多く、枯れ色の田んぼにハクチョウが大勢群れをなしている光景や、朝と夕方にカオカオと鳴きながら人家などの上空を行き来する音声もすっかりおなじみのものとなっている。/3月下旬くらいには再び繁殖地・営巣地であるシベリアへと旅だっていくのだが、その際の鳴声はやはりすこし物悲しい気がする。
先日来製作を続けていた、お客様のお父上が若い頃住まわれていた建築の解体材を再利用した文机(ふづくえ)2卓です。材料はマツで、いわゆる地松といわれる黒松か赤松あたりかと思います。梁材だったので太鼓状の形の断面だったのですが、100年以上経過して煤で真っ黒くなり、亀裂もかなり生じていましたし、ホゾなどの穴もあちこちにあります。虫食い穴もすこし。したがってはじめから長尺の材料は取れないということで、同時に製作をすすめている戸棚と同様にサイズ的にはだいぶん小ぶりな家具です。
完成した文机は幅620mm奥行435mm高さ320mm。甲板は3枚矧ぎ合わせです。無節の材料は取れなかったので、目立つ生節をどう配置するか、けっこう悩みました。甲板をはじめとして脚や幕板も基本的に同じ部材は同じ梁から木取するようにし、2卓に「おそろい」感が出るようにしました。脚部はすべて節のない材料です。
下のほうの写真は文机を部分的にアップしたものですが、木目は柾目できれいにそろっています。左側のふたつのホゾ頭は甲板を受ける根太の先端ですが、これは見た目のアクセントを兼ねているもの。右方に見える脚はカーブしているように見えますが、レンズの具合でそう見えるだけで、実際はストレートで垂直な脚です。
工房を窓の外から眺めたという人が、ブルーシートで覆われた機械(自動鉋盤+手押鉋盤の兼用機)を見て「開店休業」と勘違いしたようです。いいえ、これは風雨の強い時やとくに吹雪などの場合に、建物の隙間から雨や雪が舞い込んでだいじな機械を濡らしてしまうのを避けるためです。とくに平面切削の基準面となる定盤が錆びてしまったらたいへんですから。夏場だと汗ばんだ手で触ることさえ注意しているくらい。
鉋盤も使用頻度が高いとはいえ毎日使用するとは限らないので、作業が終わって戸締まりする前に念のためにこうしてブルーシートで覆うようにしています。定盤は先にプラダンでカバーしているので、二重の防護というわけです。
工房はもともとは某工務店の作業場(刻み場)だったのですが、はじめは賃借で数年後に土地も含めて買い取りしたのですが、筑後35年以上は経っています。もともとが安普請の建物ですが、あちこち痛んできました。明かり取りを兼ねた外壁上部のポリ波板が紫外線等で劣化して、あちこち小さな穴が開いています。応急処置はしているのですが、吹雪などになるとそれでもごく小さな隙間からも雪が舞い込んできます。
現在製作中の文机は、4本の脚を幕板で組んでおり、脚部だけで自立するかたちですが、この脚部と甲板とは基本的に木製の駒で接合します。駒の先は幕板および根太に開けたホゾ穴にさしこまれ、その駒と甲板とはステンレスの木ネジで締結します。ネジの頭のところはあとでダボを打ち込み、金属面がかくれるようにします。
駒のほかにも、脚の頭部には短いホゾをこしらえ、甲板の裏側に浅いホゾ穴をあけて、これも組み合わされます。写真の1枚目は脚の頭にきざんだホゾですが、今回は長さ7.5mmで、四方に胴突を取っています。左右の淡色の材は幕板ですが、先日(3/14)のブログで述べたように脚に2mmの大入部分が嵌入されていることがおわかりかと思います。
2枚目の写真は仮置きした脚部と、甲板にあけた深さ8mmのホゾ穴です。甲板と長手の幕板とは木の繊維方向が同じなので、ホゾ穴はホゾの大きさとぴったり一致しています。しかし妻手の幕板と甲板の繊維方向は異なるので、湿度等による甲板の収縮による悪影響をかわすために、ホゾ穴もその方向には左右に1.5mmの逃げを設けています。
このホゾとホゾ穴は短いものなので垂直方向への結合にはたいして効き目がありませんが、水平方向には大きな効果を発揮します。脚がほんのわずかでも甲板に食い込んでいれば、強い力が加わっても甲板がずれることはありませんから。また短いホゾながら、幕板の通しホゾと合わせて脚に対して擬似的な2点接合となるので、脚部の強度も高めることになります。これは使い勝手と見栄えの都合上、脚部に貫などを設けない場合の有効な策といえるでしょう。