日別アーカイブ: 2016年3月15日

コーヒーブレーク 73 「分厚きところ」

 

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如月の眼映りし研刃かな

如月は陰暦二月の名前だが、語源としては寒さがぶりかえして着物をさらに重ねて着ることから「着更着(きさらぎ)」とする説がいちばん有力のようである。ほかには気候が陽気になってきて「気更来」「息更来」や、草木が生え始める頃なので「生更木」、芽が張り出す「草木張り月」の転化とする説も。新暦(陽暦・太陽暦)では3月半ば頃から4月の半ばであることを考えれば、まあそれぞれに頷けるものはある。/一方、二十四節気は太陰暦で一年を二十四等分としてそれぞれの区切りと区切られた期間に名前をつけたもので、かなりいい加減というか、あくまでも方便・便宜的なものである。例えば「立春」は新暦では2月4日頃であるが、二十四等分にしてしまったからそう名付けただけのことで、実態と合っているとはとてもいいがたい。これは以前にも言及したことだが、2月初めといえば厳寒期で、すくなくとも当地では一年でもっとも寒さのきびしいときである。それを「立春」だから春が来たとは強引すぎるだろう。日が伸びてきたというなら、冬至をすぎた12月の終わり頃からすでにそうであるし、12月、1月でもたまに天気がよくて温かい日があり、それはべつに2月初めからのことに限らない。/春めいてきたということと、春そのものであるということの区別を、他人(中国)がこしらえた暦ではなく己の実感でしっかり把握することこそが季節の移り変わりに敏感になるということであろう。

薄氷に分厚きところありにけり

薄氷を「うすらい」と読むことは、二十年近く前に俳句を作りはじめてからはじめて知った。俳句特有・限定の読みかと思っていたが、調べてみると食べ物やガラス細工等にもわりあいよく用いられているようである。/俳句で薄氷を「はくひょう」「うすごおり」と読むことはむしろ稀で、たいていの場合「うすらい」と読むのは、五七五の音調に合わせて「薄氷や」「薄氷の」という具合に使いたいとする俳人の都合上のことだろう。や・の、などを使わないで薄氷を5音で使いたい場合は「うすごおり」とするわけで、俳句はなかなかにくせものである。なお、薄氷は冬ではなく春の季語。もう氷が張るにしてもすぐ溶けてしまうような薄い氷しか張らないくらいには暖かくなってきたな、ということで。

超高層マンション背面より春の雨

高層住宅は住人の健康上マイナス面が多い、という話もいろいろ聞こえてくる。単純に考えて、いちいち階下に上り下りするのはめんどうなので、あまり外に出歩かなくなるからという理由もあるが、もっと別の複雑な理由もあるらしい。ほんとうのところはどうなんだろう。超高層というほどではないが、知り合いでそういう高い建物に住んでいる人もいるので、こんど聞いてみようかね。/個建住宅だと防犯上のおそれがあるとか、多かれ少なかれ庭があることによってその手入れにも手間暇がかかってたいへんという人もいるが、私はやっぱり個別の住宅のほうがだんぜんいいな。庭なども虚勢や見栄を張らなければまあ適当でいいし。