雪景色のなかの黒い路面。一見するとてかてかに凍結した車道みたいですが、じつは山形県遊佐町の鳥海山麓に位置する三ノ俣(みつのまた)集落の、湧水を利用した消雪道路です。道は尾根状の小高い土地の上を走っているのですが、道路をずっと登っていき、別の尾根の先端に突き当たるあたり(「さんゆう」という観光施設があります)から大量の湧水が出ていて、それを冬の間ずっと路面に流して雪が積もらないようにしています。水深は数cm程度。長さは1.5kmくらいでしょうか。
いくら湧水があるといっても中途半端な水量であったり、水量が不規則であったりでは、路面に水を流すとそれこそスケートリンクのようになってしまって逆に非常に危険です。道路に四六時中ザブザブ流しても大丈夫なだけの豊富で安定した湧泉がなければこれは不可能です。この写真を見ただけでも、いかに鳥海山の湧水が豊かであるかがわかるというもの。もちろん全国的にもたいへん珍しい事例です。湧水に興味関心のある方は必見と思います。遊佐町ももっと外向けにアピールすればいいのに。
道路の左右の端は縁石が途切れることなく続いていて、せっかくの湧水が路外にもれないようにしています。また水が滞留したりあふれても困るので、路面のところどころにグレーチングを渡した排水溝が横切っていて、水量を巧みに調整するようになっています。