月別アーカイブ: 1月 2015

ペーパーウェイトの重し

 

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先日木取りしたペーパーウェイトDタイプの中に仕込む重しです。ステンレスの皮付の丸棒ですが、長さ4mのものを切断機という電動機械を使って短くカットし、それから両端の角をディスクサンダーですこし面取りをしたものです。およそ100本あまり。

できてしまえば外からはまったく見えなくなってしまう部材ですが、経年変化で万一の錆などを考えて鉄棒ではなくステンレス鋼にしています(単価は鉄棒の5倍以上)。小口がすこし黒くなっているものがありますが。これは切断用円盤砥石でカットする際に摩擦熱で切り口が赤化するほど熱くなるためです。重しなので、これでもかまわないのですが、もし表に出る部材の場合は熱で変色・劣化しないようにコールドソーや冷却液を併用したバンドソーで切ることになります。

木材はいくら重い木といってもせいぜい比重0.8〜1.0くらいですから、ペーパーウェイトにしても120gくらいにしかなりません。これでは軽すぎてペーパーウェイトとしての意味が半減してしまいます。そこで内部に別に重しを入れるのですが、そうすることで150gほど重量が増し、合計で270gになります。比較的比重の軽い木であっても結果的に220g以上にはなるので、外観から予想するより「持ち重り」感が出ることになります。ただしその重しはよくよくそのつもりで凝視しないとわからないようにうまく仕込む必要があり、それがデザインであり技術ということです。

 

ペーパーウェイトDの木取 その2

 

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ペーパーウェイトDタイプの木取の続きです。新たにまた3種類の材料を加工しました。仕上寸法より一まわり大きくした一次下拵えのものですが、左側二つがタモのバール(こぶ)、中二つはケヤキの樫目杢(左は赤味が上向、右は白太が上向)、右二つはハードメープルの縮杢です。この3種類も今回初めて使用する材料です。私の安っぽいコンパクトデジカメでは杢の具合がうまくとらえられていませんが、それでもたいへん特異な材料であることはおわかりいただけると思います。

下の写真は今回木取した材62本を養生のために積み上げたものの一部です。こうして2〜3ヶ月は置いておきます。基本的には乾燥した素材ですが、大きな材料から割って木取をしているので内部応力の変化で、あまりはやく連続して加工すると故障の原因になりかねません。

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ペーパーウェイトDの木取 その1

 

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ご注文の家具の製作工程上の都合などでどうしても手が開いてしまう時間がある場合、定番的な小物類の製作を副次的に併行して行うことがあります。今回はペーパーウェイトDタイプの木取をしました。この製品は仕上がりの長さが180mmということもあって、その分ふつうの一般的な材料ではない、ちょっと変わった特殊な材料を使うことが基本です。そうでないとサイズが小さくシンプルな形なために、ただの端材のように思われかねません。

写真は今回木取りした材料の一部ですが、左からスーヤ-バール、マスール-バーチ、黄檗(きはだ)の縮杢+スポルト、黄檗の縮杢+しわ杢、オニグルミの泡杢、シャムガキです。前の4種類の材料は、ペーパーウェイト以外の製品も含めても当工房では今回初めて使用する材料です。単価的にも非常に高く、また稀にしか産出しないものなのでおそるおそるの加工です。

一次下拵を終えただけの素木でもこれだけの紋様が出ているので、鏡面塗装で仕上げるとすごいものになりそうです。ただしこうした変わった材料は通常の材料よりも安定性に欠けることが多く、これまでの実績でも木取した材料の1〜2割くらいは割れや歪みや内部の傷・変色・腐れなどにより途中もしくは最終的にボツになることがあります。

 

コーヒーブレーク 39 「日時計」

 

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巡航ミサイル目の端に初御空

元旦の空を初御空(はつみそら)と称するのだが、イメージ的にはよく晴れた澄み切った平穏な空のことだろう。ここ東北日本海側では、元日の頃に快晴に恵まれることは稀なので、空を見上げて初御空という感慨にひたることはまずないように思われる。むしろ元旦の朝から猛吹雪で視界がほとんどないとか、どんよりと重く暗く湿った雲が低く垂れこめているといったイメージのほうが圧倒的だ。/じつは昨年暮れに妻の母上が突然病気で亡くなったこともあって、年末から新年にかけては正月気分どころではなかった。葬式は無事に終え、へんな言い方だが弔問客が多く盛況。とくに妻方の親せきが大勢だったので、火葬の合間などにいろいろと話をする機会があった。妻の姉妹で遠方からかけつけた家族もおり、正月でいちおう一段落したあとに各種買い物に運転手としてつきあったりもした。

あと百年滅びぬつもりや暦売

自宅や工房の作業場および事務室にかかげる暦を、取引のある業者からいただくことが少なくないのだが、残念ながらデザイン的にはどうもいまいちなことが多い。いや遠慮なしに白状すると、なんやら女子の着物姿や水着姿が写っているものもあって、最近では珍しいとはいえ、そういうのは即ゴミ箱行きである。結局、写真や飾りが少ないごくシンプルなものだけが手元に残ることになる。/暦もいろいろあって、大半はもちろんその年一年の月日と曜日を記した暦だが、大きめの書店等に行くとこの先10年ぶんとか一世紀ぶん、つまり100年先まで一覧で印刷したものさえある。それらは実用的にはあまり意味のない暦であるが、細かい数字でびっしりと埋め尽くされた暦は、諸行無常とでもいうか、人の世がどうあろうとも月日は無関係に淡々とかつ冷酷に過ぎていくだけであることを示している。

日向ぼこ日時計のごとく回りおり

いわゆる裏日本(いまや差別語?)+雪国では、日向ぼっこをしようという気分になるような快晴・無風の日は冬期間はきわめて稀である。が、それだけにそうした日と時間はまさに恩寵のように感じられる。太陽は見えていても気温は低いので長時間というわけにはいかないが、作業の合間とか昼食や休憩のときには、日向ぼっこをすることがある。今だとサンルームごしにということも。/欧米の寒冷地では、真冬にほとんど裸同然になって日光浴をしている光景をインターネットなどでしばしば見るが、まわりは雪一色だったりするので、寒くはないんだろうか紫外線は大丈夫かとか、いらぬ心配をしてしまう。いや実際に寒いんだろうし、サングラスをかけたりしているのだが、それよりも日の光を全身に浴びることのほうがずっと重要だということなんだね。

 

スカーゲンの腕時計

 

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デンマークはスカーゲン(SKAGEN)社の腕時計です。昨年のクリスマスに子供へのプレゼントにシチズンのレグノというソーラー&電波の腕時計をあげたのですが(→当ブログ2014.12.18)、それをみているうちに私用にすこしドレッシーな感じの時計が欲しくなってきました。

現在、現役で使用中の腕時計は3つあるのですが、どちらもスポーティーまたはアウトドア的なやや無骨な感じのものばかりで、たまにですがあらたまった席で、スーツやブレザーなどを着用したときにぴったり合うような時計は持っていません。値段的にも高価なものはとうてい無理なのですが、そうなると機能的にしっかりしていて、かつデザイン的にいいなと思えるような時計はたいへん限られてきます。

街中の時計店ではしょうがないので、インターネットでさんざん探したのですが、結果としてこのスカーゲンの時計がいちばん気に入りました。秒針も時刻の数字もなく、日付・曜日の表示もありません。これ以上はないというくらいにきわめてシンプルな時計です。ただしよく見ると細部まで精緻に考慮されており、これはデザインワークのお手本といっていいでしょう。

外装はステンレスの鏡面仕上ですが、直径は42mmとやや大ぶりながらも厚さは6mmと薄いので、つけていてもまったく気になりません。ワイシャツの袖口にひっかかることもないです。文字盤(フェイス)は金属のごく細いヘアライン仕上に時刻の黒色のラインが引かれているだけですが、12・6・9時のところは二本線。それで3時のところはSUKAGENというロゴとマークが二本線のかわりに記されていて、たいへん粋です。なるほどこういう手もあったのかと感心します。防水は日常生活防水の3BARでちょっと心配ですが、もろに水に漬けたりしなければ大丈夫でしょう。バンドは薄手の革で、バックルはオーソドックスな尾錠止めです。精度も月間プラスマイナス数秒程度で、実用的にはまったく問題ありません。

たまたま偶然ですが、昨年暮れに妻の母上が急病で亡くなったのですが、その葬式のときの喪服の黒いスーツにちょうどこの時計が役立ってくれました。

 

雪かきの仕方

 

雪国の人にとっては以下述べることは常識的なことだと思います。が、しょっちゅう雪かきに悩まされている地域というのは日本全体からみれば少数派だと思うので、まあ話のたねにでもしていただければ幸いです。

1枚目の写真は、工房の作業場の屋根から落下した雪の山です。高さは1mくらいで、気温がゆるんでまた凍結したために、半分氷化した塊です。これを除去する方法はいくつかあるのですが、今回はスノーカート(スノーダンプとよく呼ばれていますが、それは商品名)を使用しています。まずスノーカートの荷台の大きさに合わせて、スチールの角スコップで雪の山に3方に切れ目を入れます。幅60cm、奥行70cmくらい。アルミやプラスチックのスコップでは無理です。

次にその底になるあたりにスノーカートを軽く蹴って水平に差し込みます。奥まで入ったら、カートのハンドルを「上に」すこし持ち上げると、切れ目を入れたところからきれいに雪が分離します。カートのハンドルを下に押し下げて、先端を上げて雪塊を分離するのは御法度です。密度にもよりますが雪塊の重量は50kgはあるので、腕力も必要だし、カートが壊れてしまう恐れが大です。

2枚目の写真はカートにすくい取った雪の塊で、1回目はこの程度ですが、2回目はもっと大きな立方体のブロック状の塊になるはずです。とても手で持てるような重さではありませんが、ポリカーボネート製の荷台は雪の上では非常に滑りがいいので、わりあい楽にこのまま雪捨場の河川などに推して行くことができます。スコップで10回以上切り崩す量をこうして一度に切り取り移動できるので、たいへん効率的です。

写真のスノーカートには鉄パイプの側面湾曲部にアルミのコの字形の補強材を自分で取り付けています。これをしておかないと、大量の重い雪を上記のように切り取り運搬することはまず不可能です。一度曲がってしまったパイプはもろくなってしまい元にはもどりませんから。

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オンライン販売始めました

 

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当工房の製品は、基本的にはみなお客様からのご注文でそのつど作るフルオーダーですが、たまに行う展示会や、大きなご注文をいただいた方などへのプレゼント品などを兼ねて、小物類もすこし製作しています。定番化したものもいくつかあります。また試作的なものや、事情があって手元に残ってしまった家具などがある場合もあります。

それらをインターネット上で即座に一覧していただき、お買い求めもできるように整備中です。トップページの「木工房オーツー」のタイトルの下にあるナビゲーションバーの中の「オンライン販売」をクリックしてくださると、該当のページが表示されます。

ただ「買い物かご」などの設置はありませんので、お問い合わせまたはご注文等につきましてはメール(master@e-o-2.com)にてお願いします。

 

句集『境界 -border-』

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岡田一美さんの句集『境界 -border-』です。1976年富山市に生まれたそうなので、現在38歳くらいでしょうか。作句を始めたのは2006年とのことですが、作年(2014年)に現代俳句新人賞を得ています。

この句集には2011〜2014年までの163句がおよそ編年体で編まれています。写真は本人の撮影によるものだそうですが、公園の遊具でしょう。句集の表紙というと、いかにも花鳥風月そのままという感じのものがほとんどであるのに比べ、これは納められた句の内容とうまく響き合っていると思います。

さて俳句ですが、形としては季語+五七五の定型+旧かなを基本としていますが、素材やシチュエーション・テーマなどは現代的ですし、必ずしも分かりやすい句ばかりではありません。予定調和的にソフトランディングするのではなく、そうとう強くハードランディングしている句も散見できます。いい意味で観念的な句、意外な視線、「細部に神は宿る」的な精緻な景、非情冷酷な景も少なくありません。

たいへんいい句集だと思います。それにこのくらいの体裁とボリュームの句集であれば100部で○○万ほどでできるようなので(もちろん完全原稿をデータで渡して)、私にもがんばればなんとか手が届くかもしれません。

とほくに象死んで熟れゆく夜のバナナ
コスモスやひかり囲ひにされている (いは旧字)
焚火かの兎を入れて愛しめり
肌に雪ふれてこの身の循環器
遠足の写真のやうに仲良くす
快楽とは蜂ふるへたる花の中
白波をあげて汽船や松の花
茎容れて吸はれながらに水澄めり
和毛浮く囮でありしものの上
三界は時雨の檻ぞ咆哮す
漕ぎ出して燃ゆる夏蝶を見たか
半焼がまるごと濡れて春の火事
水仙の丘のうねりの果てて墓
くちなはのひかりつめたく泳ぎけり
嘶きをとほくに雪のひかりあふ
死んでいる以外は生きている海鼠 (いは旧字)
双六を三つすすんで絶滅す
入学試験四部屋に分かれいて心臓 (いは旧字)
やはらかき灰とも火蛾に火の移り
うつしみの魚影の冷ゆる泉かな
いつせいに羽根の浮かべる羽根布団
裏がへすやうに産みたる仔猫かな
忙しき河の底から水澄めり
蠅といふ季語ありにけり飛びにけり

 

トント+アル

 

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私の部屋の掛布団の間にもぐりこんで寝ているトントと、それになかば乗っかるようにして寝ているアルです。依然としてトントは迷惑そうにしていますが、まあなんとか折り合いをつけているようですね。

 

ゴム長靴

 

ゴム長靴は必需品です。湿地や沢沿いの調査・散策、足元が濡れるおそれのある工事現場もそうですが、雪が積もる冬場の場合はむしろ長靴こそが「標準仕様」のいでたちで、短靴は逆に例外ということになります。その長靴もとくに積雪用では膝近くまでの丈があることと、中に雪が入らないように口を絞る機能、保温性のある内張りが絶対に必要です。

靴屋さん、またはホームセンターなどに行くと、今頃になるとじつにさまざまな長靴が並んでいます。色や形もいろいろですが、完全防水とはいえない、ファッション性を優先したいわゆるブーツの類いを除くと、じつは本質的にはそれほど多くの種類があるわけではありません。ありていに言えばまともな長靴とまともとは言えない長靴の2種類だけ。

まともな長靴の条件としては冒頭にあげたような項目のほかに耐久性があります。ゴムはその材質の特性上、ほとんど使用しないでいても自然に劣化してきて柔軟性が失われこまかな亀裂がはいったりしてくることがあります。ましてしょっちゅう水濡れや泥汚れと乾燥、紫外線や摩擦などにさらされると、劣化の度合いは予想以上にはやいですね。どこか一カ所でもまたほんのわずかであっても穴があいて中に水が侵入してしまえばそれで長靴としての命は絶たれてしまいます。その点、他の靴にくらべて欠陥が分かりやすいともいえます。

まともでない長靴の場合だと、もちろん使用状態や頻度にも左右されますが、ひどいものだとワンシーズンで駄目になるものもあり、まあ保って3年くらいがいいところ。側面を鋭利な岩角などにひっかけてしまって裂けるのはしかたがないとしても、継ぎ目が容易にはげたりかかとのあたりの靴底が摩耗して中の中空部分が出てきて穴があいたりするのには腹が立ちます。やはりある程度は値段相応というべきで、1000円2000円台の値段の長靴はその程度のものとはじめから割り切ったほうがいいでしょう。

さて下の写真の長靴はダンロップスポーツ(株)の長靴です。現在履いている長靴がそろそろ寿命という感じになってきたので、あらかじめ予備として購入しました。水漏れでも起こした際に、それからあわてて買い物に行っていては間に合わない場合があります。ダンロップといえばタイヤメーカーとして有名ですが、グループ企業がたくさんあり、スポーツ用品などの製造販売を行うダンロップスポーツもそのひとつです。大元がタイヤメーカーだけあって、この長靴もシンプルかつ非常にしっかりした作りです。値段は定価で5000円くらいしますが。

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