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45度傾斜切り

 

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先日の家具の扉の加工のひとこまです。扉の四方枠のうち、上下の横桟は縦框とホゾ組になるのですが、面は被せ面としました。縁を角度45度、幅ルート3×√2mm(約4.2mm)の面にすることで、大きめの面処理をしつつ、縦と横の枠が組合わさる箇所の納まりがきれいになります。

しかしこの加工はけっこうめんどうです。昔なら当然手作業で手鋸+手ノミで面をこしらえるしかなかったわけですが、現在では上の写真のような傾斜切りができるスライド&ラジアルソー(マキタの216mmのスライド丸ノコ)を使って加工をすることができます。ただし建具屋さんなどが用いている本格的なラジアルソーではないので、精度・剛性が足りず、とくにヘッドを左右に大きく傾けると0.数mm程度ですが誤差が出てしまいます。

まあ値段も一桁以上異なるのでしかたがないのですが、面処理の部分はとても目立つところなので、実際に加工する部材と断面寸法がまったく同じダミーの材料を使って、何度も試し切りをします。写真で丸ノコの下に中央から左に向けて置いているクリーム色の角材がそれです。

セッティングは手間がかかりますが、一度決まってしまえばあとは扉の数がたくさんあってもスピーディに切り進めることができます。10万くらいの過般型機械ですが、仕事で使うには欠かせない機械といえます。

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ペーパーウェイトの製作開始

 

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家具等の仕事が一段落したので、ペーパーウェイトDtypeの製作を開始しています。今年1月に木取と一次下拵をしたもの(関連記事は当ブログ1/26.27.29参照)ではなく、それ以前から養生していたぶんです。厚み方向に二つに割ってそれぞれにミゾを掘り、中にステンレスの丸棒の重しを仕込むのですが、その加工をする前の段階での必要寸法にそろえるための第二次下拵と第三次下拵です。

材種はクロガキ、クロガキのスポルト、クリ縮杢、ウォールナット縮杢、タモ波杢、セン縮杢、神代ナラ。現段階で62本ありますが、養生の過程などですでにひび割れなどが発生したものが数本あります。杢の出た材料はノーマルな材料にくらべ物理的安定性に欠けることが多く、最終的に製品になるのは50〜55本くらいかなと思います。

 

ヒオドシチョウ

 

先日、鳥海山の中腹、標高1300mくらいのところで花を観察していたら、赤っぽい中型の蝶が一匹飛んでいました。色合いと飛翔のようすからみて、もしかするとヒオドシチョウかもしれないと思いましたが、幸いなことにすぐ目の前のミヤマナラの葉の上に止まりました。最初は翅をたたんでおり、荒れた樹木の肌のような茶褐色の迷彩色をみせていましたが、間もなくすると翅を広げてじっとしています。やはりタテハチョウの仲間のヒオドシチョウ(緋縅蝶)でした。

橙赤色の地に真っ黒な紋様と青い縁取りがじつに美しいです。幼虫はエノキ(榎)の葉を食べて育つのですが、こんな高さの山地にエノキは生えていないと思うので、下の方から上ってきたのでしょうか。翅はどこも痛んではいないので、越冬した個体ではなく最近羽化した個体でしょうね。

撮影は残念ながらこれ1枚しかできませんでした。2枚目を撮ろうとすると気配を察してか飛び立ってしまい、もうどこかに行ってしまいました。

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コーヒーブレーク 53 「草木塔」

 

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大猫や鎮守の杜は毛を増やし

野山の緑がだいぶ濃くなってきた。もはや新緑の段階をすぎて夏盛りの景観である。それは平野部に点在する鎮守の杜(森)も同様で、ケヤキなどの高木の間から社がはっきりと見えていたのに、今はうっそうと生い茂った高木や中低木、灌木や草類にすっかりおおわれて、暗緑色の塊となっている。もはやその中に神社があることもわからないくらいに。/鎮守の杜は、その規模が大きく何百年あるいはそれ以上の昔から存在する場合は、その地域の本来の自然植生がかなりの程度に保持されている場合がある。いや、古神道の世界観からすれば本殿や拝殿などの建築物はむしろ副次的なものであって、複雑で芳醇・多様な自然=森や巨石や川や山こそはそれ自体がすでに神であり信仰の対象そのものであった。したがって、社は立派なのにその周りの森などがどんどん縮小伐採されてしまうといった事態は、まったく本末転倒というべきであろう。残すべきは社ではなく杜なのだ。

地底王国に瞬時の日差し夏至

一年で昼がいちばん長い日、それが夏至である。今年2015年の夏至は6月22日であるが、太陽の運行と暦とは完全には一致しないので、年によっては6月23日や22日・20日が夏至となることもあるようだ。いちおうの定めとしては、西暦が4の倍数年であるうるう年を基準とし、それ以外の年(365日)の4で割った余りが毎年蓄積され、うるう年でリセットされる、ということらしい。/またこの日は太陽の南中高度がもっとも高くなる日でもあるので、その一瞬間だけ直射光が届くように計算された建造物も、昔からいろいろある。まだ地動説も唱えられず宇宙のしくみもほとんどわからないながら、ただ経験則で一年で一回だけ光が届く場所や物があるのだということを、太古から人間は知っていたわけだ。

蟻の眼に草木塔の過ぎゆけり

草木塔は自然の木や草の命をだいじなものと想い、その命を供養するための碑や塔のこと。多くは自然石に「草木塔」「草木供養塔」「山川草木悉皆皆成仏」といった文言が刻まれている。全国で160基以上の碑があるというが、草木塔については山形県内がいちばん多く、32基が確認されている。/獣などの動物の命を供養する碑は珍しくないが、それはやはり人間に近い生き物だからだろう。血を流し叫びをあげ病に苦しむ動物の姿は、わが身のことのように切なく痛ましいものとして共感される。それに対して樹木や草といった植物は、同じ生き物ながら人間とは姿形や生の仕組みがまったくといっていいほどに異なるので、動物ほどには感情移入はしにくい。草花を愛でるとはいっても、稲刈りや草刈り、植林された杉などの伐採に悲痛な思いをいだく人は稀である。/ベジタリアンも野菜や穀物や果物の命はとうぜんながらいただくわけだが(そうしないと自分が生きていけない)、動物の命と植物その他の命とに対する態度のあまりの落差には私はいささか違和感を覚える。もちろん個人としてはベジタリアンでもなんでもいいのだが、それが絶対的な正義であるかのように主張されるのはね。

 

ウォールナットのドア2枚

 

DSCN4948_2酒田市のK様宅に納めたウォールナットのドア2枚です。諸々の事情があってたいへん時間がかかってしまいましたが、無事に取り付けることができ、たいへん喜んでいただきました。

数年前に水回りを中心にリフォーム工事をされたそうですが、基本的に機器の交換と模様替えだけで、間取りや構造は旧来のまま。そのため建具は現在の既製品のドアのラインナップでは寸法が合うのがないということで、昔のままのフラッシュのドアが付いていました。他が新しくなったのでよけいその旧態依然ぶりが気になっていたとのことでしたが、希望するような建具を作ってくれる業者にはこれまで出会えなかったようです。

DSCN4952_2室内の木製建具はすこし前までは大工さんの工事に併せて、建具屋さんが寸法等を実測しひとつづつ「手作り」するというのが普通だったのですが、今はフレームと本体のドアや引き戸がセットになったものを建材メーカーのカタログから選び、それを現場で取り付けるだけという方式が標準になっているようです。外部のアルミサッシの窓や戸を設置するのとかわりません。価格的には決して安いわけではありませんが、大工仕事が終わってからはじめて採寸し、製作・仮付・本付する従来の建具に比べれば工期は格段に短くなります。お客側からみても「予想していた建具とちがった」というようなトラブルもありません。

DSCN4953_2しかししょせんは既製品の中から選ぶだけですし、建築の総予算や坪単価などに合わせた価格帯の中で選択するしかないので、結果は「どこの住宅も似たようなイメージの仕上がり」になってしまうのは無理からぬところです。また昔ながらの無垢材+ホゾ組にすると量産はできませんし、無垢材の性質上どうしても若干の反りや捻れ等が発生してしまいがちなので、それを避けるために集成材やアルミなどを基材にして、それに銘木を薄くスライスした突き板、あるいはプリントした樹脂などをそれに張り付けるなどの作りがほとんどです。まして広葉樹であるウォールナット100%のほんものの無垢の建具というのはまず既製品ではありえないでしょう。

今回はガラスもセラミックプリントの強化ガラスです。光の透過率はちょうど半分ほどで、視線はほとんどさえぎってしまいますが、ガラスの間近にいる場合は人の姿などはぼんやりと分かります。前のドアが小さな型ガラスが1枚はまっていたのに比べるとかなり明るくなりました。

 

レースのような

 

山中で雪が溶けた後に表れた不思議な光景です。なんの葉だかよくわかりませんが、大きさは柄を含めると20cmくらいあります。雪がふる前に地面に落ちて、 柔らかいところは虫やバクテリアなどによって分解されてしまい、葉脈だけが残ってしまったのでしょう。たいへん美しいです。

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自由スコヤ

 

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加工中の部材の前に4本置いている道具は自由スコヤです。スコヤは英語のスクエアという意味で、通常は直角度(90度)を確認するための定規のことをいいます。したがって写真のような任意の角度に設定でき、その角度の線を引いたりチェックしたりできる定規を「自由なスコヤ」と呼ぶのは言葉的には矛盾しているようですが、まあ慣習ということで。

ひとつの部材が他の部材と水平・垂直に組合わさるとは限らず、X・Y・Zの座標のうちの2または3方向にそれぞれ90度以外の角度で接合することは珍しくありません。しかもその角度は15度とか30度といった分かりやすい数字ではなく、4.5度とか18.8度、または勾配0.015といった微妙な傾きであることもしばしばです。そのため計算値でいちいち始点と終点を出してそれを結ぶようなやり方は現実的ではありません。上の場合は家具の原寸図にスコヤをあてがってそれぞれの角度を取っています。4本とも見た目にはいくらも差がない角度なので、混同しないようにマスキングテープを貼って対象箇所や傾きの方向を記しています。

ごらんのようにこの自由スコヤはステンレス製の2本の棹が1点で交わる形で、角度の設定はそれを1本のネジで締めて保持するしくみです。そのためすこし衝撃をあたえただけで簡単に角度が狂ってしまいます。そこで、ネジの頭にはマイナスの大きなミゾが掘ってあるのですが、これに合わせて専用のドライバーを自作し、しっかりとネジを締めるようにしています。ふつうのマイナスドライバーで締めた程度では正確な角度を保持することはできません。

 

6月中旬某日の山の花

 

鳥海山中腹の標高1000〜1300m付近に咲いていた花です。私がわかるものだけで42種ほどあったのですが、そのうちのいくつかを紹介します。

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アカモノ 別名イワハゼ(ツツジ科)

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オオヤマフスマ(ナデシコ科)

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ケツクバネウツギ(スイカズラ科)

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サワフタギ(ハイノキ科)

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ニオイタチツボスミレ?(スミレ科)

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シラネアオイ(シラネアオイ科)

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マイヅルソウ(ユリ科)

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マルバシモツケ(バラ科)

 

古材利用の戸棚

 

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ご注文されたお客様のお父上が、若いころに住まわれていた住宅の、解体時の古材を再利用してこしらえた小ぶりの戸棚です。当ブログで3月19日に文机2卓、6月6日にサイドテーブル1卓を紹介しましたが、この戸棚もそのひとつです。太い梁材などの、比較的状態の良さそうな部分だけをカットして数本保存されていたのですが、大きな節やひび割れ、変色・虫食いなどがあり、実際に使える部分は少なく、これでほぼ全量使い切った状態です。しかしながら当初のご希望分以上(サイドテーブルは予定外)を無事に製作できたので、上々といってさしつかえないと思います。完成した家具の材料はすべてマツ(赤松か黒松)です。

この戸棚は、市販の小型の仏壇を上に置くためのものですので、サイズは大きくありません。幅600mm、奥行540mm、高さ480mmで、中に可動式の棚板が1枚あります。扉の鏡板は一枚の板を二つに割って開いたもので、木目を左右対称にしています。こうした使い方を「ブックマッチ」といいますが、無地の幅広&長尺の板は取れなかったので、逆に目のような節をいかしてみました。上下反対にすると吊り目になってしまいますが、これだと垂れ目のやさしい表情ですね。

古い建物を解体すると、持ち主がよほど強く要望しないかぎりみな廃棄物となってしまいますが、今回のように一部分だけでも再利用できることはたいへん喜ばしいことです。いい思い出のよすがとなるでしょう。ただ、新しい材料で作るよりずっと手間はかかってしまいますし、もともとが家具材ではありませんので、出来上がりも万全とはいえないこともあります。材料費が浮く以上に手間ひまがかかることが多く、結果的にかえって高くついてしまうことも珍しくありません。そういったことを充分ご承知のうえで家具製作の依頼をしてくださったM様に感謝いたします。製作者冥利につきるというものです。

 

マルベリー

 

クワ(桑)の実のことを英語ではマルベリー(mulberry)というのだそうです。鳥海山の湧水を調査観察にいったところ、近くにクワノキがあり実がたくさんなっていました。白〜明赤色まではまだ酸味が強くてだめですが、黒色かそれに近くなってきたら甘くなり食べごろです。とくに黒く熟した実は指で軽くつまんだだけでぽろぽろと落下します。

15cmほどのボウルにいっぱいくらい採れたので、さっそくジャムにしてみました。ヘタをキッチンばさみで切り、テフロン加工のフライパンの中に水洗いした桑の実・砂糖・ダークラム酒・レモン汁を入れて。ジャム作りなどほとんど経験がないので、すこし煮詰めすぎて固くなってしまいましたが、味は上々です。

まだ熟しきってない実が半分くらい残っていたので、うまくいけばもう一回くらい採れるかもしれません。桑の実は痛みやすいので市場にでることはまずなく、自家用に植栽した木から取るか、たまたま自然に成っていたものに遭遇するかしないと、今回のような体験はできません。

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