酒田市のK様宅に納めたウォールナットのドア2枚です。諸々の事情があってたいへん時間がかかってしまいましたが、無事に取り付けることができ、たいへん喜んでいただきました。
数年前に水回りを中心にリフォーム工事をされたそうですが、基本的に機器の交換と模様替えだけで、間取りや構造は旧来のまま。そのため建具は現在の既製品のドアのラインナップでは寸法が合うのがないということで、昔のままのフラッシュのドアが付いていました。他が新しくなったのでよけいその旧態依然ぶりが気になっていたとのことでしたが、希望するような建具を作ってくれる業者にはこれまで出会えなかったようです。
室内の木製建具はすこし前までは大工さんの工事に併せて、建具屋さんが寸法等を実測しひとつづつ「手作り」するというのが普通だったのですが、今はフレームと本体のドアや引き戸がセットになったものを建材メーカーのカタログから選び、それを現場で取り付けるだけという方式が標準になっているようです。外部のアルミサッシの窓や戸を設置するのとかわりません。価格的には決して安いわけではありませんが、大工仕事が終わってからはじめて採寸し、製作・仮付・本付する従来の建具に比べれば工期は格段に短くなります。お客側からみても「予想していた建具とちがった」というようなトラブルもありません。
しかししょせんは既製品の中から選ぶだけですし、建築の総予算や坪単価などに合わせた価格帯の中で選択するしかないので、結果は「どこの住宅も似たようなイメージの仕上がり」になってしまうのは無理からぬところです。また昔ながらの無垢材+ホゾ組にすると量産はできませんし、無垢材の性質上どうしても若干の反りや捻れ等が発生してしまいがちなので、それを避けるために集成材やアルミなどを基材にして、それに銘木を薄くスライスした突き板、あるいはプリントした樹脂などをそれに張り付けるなどの作りがほとんどです。まして広葉樹であるウォールナット100%のほんものの無垢の建具というのはまず既製品ではありえないでしょう。
今回はガラスもセラミックプリントの強化ガラスです。光の透過率はちょうど半分ほどで、視線はほとんどさえぎってしまいますが、ガラスの間近にいる場合は人の姿などはぼんやりと分かります。前のドアが小さな型ガラスが1枚はまっていたのに比べるとかなり明るくなりました。