ご注文されたお客様のお父上が、若いころに住まわれていた住宅の、解体時の古材を再利用してこしらえた小ぶりの戸棚です。当ブログで3月19日に文机2卓、6月6日にサイドテーブル1卓を紹介しましたが、この戸棚もそのひとつです。太い梁材などの、比較的状態の良さそうな部分だけをカットして数本保存されていたのですが、大きな節やひび割れ、変色・虫食いなどがあり、実際に使える部分は少なく、これでほぼ全量使い切った状態です。しかしながら当初のご希望分以上(サイドテーブルは予定外)を無事に製作できたので、上々といってさしつかえないと思います。完成した家具の材料はすべてマツ(赤松か黒松)です。
この戸棚は、市販の小型の仏壇を上に置くためのものですので、サイズは大きくありません。幅600mm、奥行540mm、高さ480mmで、中に可動式の棚板が1枚あります。扉の鏡板は一枚の板を二つに割って開いたもので、木目を左右対称にしています。こうした使い方を「ブックマッチ」といいますが、無地の幅広&長尺の板は取れなかったので、逆に目のような節をいかしてみました。上下反対にすると吊り目になってしまいますが、これだと垂れ目のやさしい表情ですね。
古い建物を解体すると、持ち主がよほど強く要望しないかぎりみな廃棄物となってしまいますが、今回のように一部分だけでも再利用できることはたいへん喜ばしいことです。いい思い出のよすがとなるでしょう。ただ、新しい材料で作るよりずっと手間はかかってしまいますし、もともとが家具材ではありませんので、出来上がりも万全とはいえないこともあります。材料費が浮く以上に手間ひまがかかることが多く、結果的にかえって高くついてしまうことも珍しくありません。そういったことを充分ご承知のうえで家具製作の依頼をしてくださったM様に感謝いたします。製作者冥利につきるというものです。
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