加工中の部材の前に4本置いている道具は自由スコヤです。スコヤは英語のスクエアという意味で、通常は直角度(90度)を確認するための定規のことをいいます。したがって写真のような任意の角度に設定でき、その角度の線を引いたりチェックしたりできる定規を「自由なスコヤ」と呼ぶのは言葉的には矛盾しているようですが、まあ慣習ということで。
ひとつの部材が他の部材と水平・垂直に組合わさるとは限らず、X・Y・Zの座標のうちの2または3方向にそれぞれ90度以外の角度で接合することは珍しくありません。しかもその角度は15度とか30度といった分かりやすい数字ではなく、4.5度とか18.8度、または勾配0.015といった微妙な傾きであることもしばしばです。そのため計算値でいちいち始点と終点を出してそれを結ぶようなやり方は現実的ではありません。上の場合は家具の原寸図にスコヤをあてがってそれぞれの角度を取っています。4本とも見た目にはいくらも差がない角度なので、混同しないようにマスキングテープを貼って対象箇所や傾きの方向を記しています。
ごらんのようにこの自由スコヤはステンレス製の2本の棹が1点で交わる形で、角度の設定はそれを1本のネジで締めて保持するしくみです。そのためすこし衝撃をあたえただけで簡単に角度が狂ってしまいます。そこで、ネジの頭にはマイナスの大きなミゾが掘ってあるのですが、これに合わせて専用のドライバーを自作し、しっかりとネジを締めるようにしています。ふつうのマイナスドライバーで締めた程度では正確な角度を保持することはできません。