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手袋をして刃研ぎ

きのう(1/10)防水透湿素材の手袋「テムレス」を紹介しましたが、なにを隠そう、じつは先日来このテムレスをはめてノミやカンナの刃を研いでいます。私にとってはこれは画期的なできごとです。

刃物を研ぐのは微妙な手加減・指加減が必要ですから、これまでは必ず素手で行っていました。しかし冬期間はこれはかなりつらい作業です。とぎ水はすこし湯を足して暖かくできますが、刃物自体はひどく冷たくなっていますし、研いでいるうちに気化熱の作用でしょうか、指がかじかんできます。刃物をとり落としそうであぶないし、指先は鉄さびで黒くなり荒れてきます。研汁研泥で脂っ気がみな吸い取られ皮膚ががさがさ。冬になるといつもアカギレで悩まされてきましたが、最大の原因がこの刃物研ぎで、それは分かっていてもなすすべがなく、せいぜい事後にワセリンなどのクリームを塗るくらいでした。

ところがものは試しと思ってテムレスをはめて刃物研ぎやってみたら、大正解でした。薄く柔らかく弾力性があり、滑り止め加工もされているので、素手で行うのとさほど変わらない感覚で刃物を研ぐことができます。微妙な力加減の差がないわけではないので、まだ若干の不備不満はありますが、それはすぐ慣れると思います。懸念していた中研ぎのときの刃先のまくれ(刃返り)の確認も、素手で研ぐ場合よりはいくぶん大きめにしないといけないかもしれませんが、手袋をはめたままで問題なくできました。

手が濡れず、中で蒸れることもほとんどないので、長年の悩みの種だったアカギレはこれでずいぶん軽減しそうです。昔かたぎ・職人かたぎの人からは「ゴム手をして刃物を研ぐなんてとんでもない!」と言われそうですが、いいんです、私はべつに精神修養のために刃物を研いでいるわけではありませんから。

テムレス

手が蒸れにくいから「テムレス」というじつに分かりやすいというか安易というか。一昨日(1/8)に続いて作業用手袋の話です。メーカーはやはりショーワグローブで、最近マイナーチェンジした製品だと思います。全体が「裏布+発砲ウレタン層+防水ウレタン層」の三層構造になっていて、湿気は通すけれど水は通さないという透湿&防水性の特殊な素材でできています。透湿防水素材といえばゴアテックスやシンパテックスが有名ですが、まあそれと似たようなものかもしれません(値段はぜんぜん違いますが)。数値的には透湿度1157g/m2・24hrと表示されていました。

いわゆるゴム手としては薄く軽く、最初手にはめた感じではひ弱そうで不安になりますが、実際使ってみるとけっこう丈夫です。柔らかめの素材なので、外圧をうまくいなす感じでしょうか。冬でもごわごわしません。先のほう半分くらいには滑り止め加工もほどこされていますし(写真の色の薄い部分)、油分や洗剤などへの耐性も高いので、いろいろな水仕事や汚れ仕事に向いていると思います。細かい作業にも対応できました。ただし高濃度の薬品や溶剤には向いていません。揮発性ガスにも要注意です。

従来のゴム手だと外からの濡れの心配はないものの、長時間の使用や暑い時期などは自分の汗で中がぐっしょりになってしまいます。嫌なにおいもしてきます。冬は一度湿っぽくなった手袋は、次に使うときはたえがたいほどの冷たさの「氷の手袋」と化してしまいます。このテムレスの場合、それらの不快感が激減します。値段は600円弱くらい。私は用途によってLLとLとを使い分けています。

組立グリップ

ショーワグローブ株式会社の製品で、私の愛用の作業用手袋です。その名も「組立グリップ」。この手袋は縫い目なしのナイロン編地に、手の甲以外をニトリルゴムでコーティングしたもので、薄く軽く柔軟性があります。全面をコートしているわけではないので、蒸れにくくなっています。装着しても指先の感覚はかなり残るため、小さな部品の組立や細かい作業、筆記なども楽にできます。

ちょっと吸い付くくらいの感じに摩擦があるので、重い物を持っても滑りにくく最小限の握力・腕力ですみます。ニトリルゴムのコーティングは鋭利なもの尖ったものに対しても抵抗力があり、素手で触れるにはあぶないようなものでも比較的安心して触ったり持つことができます。びしょ濡れでなければ水や油や土砂などで汚れたものも大丈夫。防寒性もすこしあります。

これまでは作業用の手袋といえば、ドライなら綿の軍手で滑り止めのポツポツが付いたものが定番でしたが、汚れが染み付きやすいし、指先などもわりあいいすぐに穴が開いてしまうのが悩みでした。汗でぐちゃぐちゃにもなりがちで不快だし、かといって洗うとなかなか乾かない……。細かい作業には不向きで、はめたり外したり。

そんなときに近くのホームセンターで一昨年ほど前に見かけたのが「組立グリップ」。半信半疑ながら使ってみたら大正解でした。木工の作業・加工の8割くらいはこの手袋をはめた状態でできます。刃物の研ぎや木工部材の水引といった水仕事と、ボール盤などのむきだしの回転をともなう機械の操作以外はまずほとんどオーケーです。特に冬場の冷たい季節は大助かりです。おかげで寒い時期にはつきものだった手指のあかぎれがだいぶ軽減しました。耐久性もずいぶんあるので、むしろ従来の軍手より安上がりかもしれません。

同様の手袋は他のメーカーからも出ていますが、二三ためしてみたところ私にはショーワのこの製品がいちばんぴったりきました。サイズも手袋は私はふつうLLなのですが、組立グリップの場合は手指にぴったりフィットしてこそ命なのでLサイズです。値段はお店によりかなり違うようですが、だいたい300円弱。

私の腕時計

私が現在使用している腕時計3種類です。いずれもセイコー、オリエントといった国産の一般的なメーカーの製品で、値段もみな3万円以下のものです。

いちばん使用頻度が高いのが左のマルマン製の時計で、ステンレス製の頑丈なケースとバンドなので、仕事にも登山等の野外活動にも活躍しています。もう10年以上愛用しているので、あちこちに擦り傷はついていますが、一度も故障などはしたことがありません。精度も数ヶ月に1分程度の誤差です。あ、バンドだけ一度交換しましたかね。

カジュアルにちょっと気分をかえたいときは真ん中の赤い文字盤の時計にしたり、たまにブレザーを着るときなどはその服装に合わせて右の時計を選んだりしています。最近の電波時計やソーラー充電式ではありませんが、電池交換は3年に1回くらいですし、秒をあらそうような生活はしていませんので、私にはこれで十分です。

極端に安価な時計は、やはり精度や耐久性に難があると思いますし、見た目にもチープですが、国産の数万円クラスの時計なら問題がないでしょう。性能的にはもう十分であとはデザインですが、その点では私もほかにいろいろ気になる時計がないではありません。しかし、単なるネームや装飾に何十万も出す気はさらさらありません。他の職業ならともかく、広い意味でデザイン関係の仕事にたずさわっていながら、いわゆるブランド品の腕時計をしていたら、とてもカッコわるいと思います。たぶんそれだけでもうデザイナーとしてはアウトでしょう。

除雪機

YAMAHA(ヤマハ)の小型除雪機です。YS870Jという機種で、除雪能力は1時間あたり50トン、除雪幅715mm、投雪距離16mといったところ。エンジンは空冷4サイクル単気筒251ccで、6.3kW・8.5馬力。普通のオートバイ並みのエンジンです。除雪機というと赤く塗装されているものがほとんどですが、YAMAHAの除雪機はメーカーのカラーであるコバルトブルーで統一されています。赤色よりも新鮮で、逆に目立ちます。

工房の敷地はおよそ100坪くらいあります。工房は平屋のトタン葺きで、約50坪。その大きな屋根から落ちる雪ははんぱな量ではありません。降雪が多い日だと落下した雪で窓が塞がってしまいます。もちろんそのままでは室内がうす暗くなってしまいますし、ガラスが割れてしまうおそれもあります。また今は地方においては生活に仕事に自動車が必需品なわけですが、降った雪をそのままにしていたのではその車が出入りできません。

かくて雪かきは否応無しにしないといけない冬期間の必須作業ですが、以前は私以外にも助手やら見習やらがいたので「人海戦術」で除雪を行っていました。重労働にはちがいありませんが、数人で手分けして行えば30分くらいでだいたい終わります。ところが私一人で木工の仕事をするようになってからは、あまりにもそれはたいへんで、えらく疲れるだけでなく体のあちこちが痛くなってきました。時間的にも日によっては雪かきだけで半日以上終わってしまうありさまです。

これではいけません。除雪機はけっして安い機械ではありませんし、直接モノを産み出すわけではありませんが、雪かきに多大な時間と体力を費やしたのでは本末転倒です。弱小零細木工所にとっては胃が痛くなるような値段でしたが(約40万)、4年前の冬に、思い切って購入しました。

導入してみると、やはりいいですね。とても楽です。もちろん雪を削って投げ飛ばす刃はむき出しですし、飛ばす雪の方向や場所を選ばないと建物や車や人を傷つけてしまいます。除雪機本体の進行と雪のかき出しとその雪を飛ばすのと、同時に3〜5つくらいのレバーを操作しないといけないので、慣れないと難しいです。極端に湿った雪はシューターに詰まってしまいますし、屋根からの膨大な落雪や、大型の除雪車が道路を運行して両側に小山になった雪などを、うちのような小型除雪機で安全かつ手早く処理するのはけっこうなノウハウが必要です。

これまでたとえば2時間はかかった雪かきが、機械を導入したことでせいぜい20~30分で済むようになりました。体力的にも何分の一かです。ただ予想外だったのは、人手でやっていたときは基本的にはあるいは常識的には自分のところの敷地内とその敷地に面した道路だけでよかったのですが、除雪機を持つようになってから近隣の住人や村の人からそれよりもうすこし広い範囲の除雪を暗黙裡に期待されるようになってしまったことです。具体的には工房とは反対側の広い路側帯(幅5m以上)、地域の集会所の駐車スペース、ゴミ集積所の周辺などです。農家の方がトラクターを使って除雪をすることもあるので、私が毎日必ずしなければというほどではなく、まあ半分くらいの分担ですが。

近隣の人たちを見ていると、個人で除雪機を購入・稼働しているところはごく少数です。ご老人がたが一生懸命に手作業で雪かきをしています。たいへんだけど手でなんとかなる、若い人は日中働きに出ているからその間おじいさんやおばあさんがやる、といった感じなのです。当工房よりはたぶん経済的余裕もありそうなのですが、除雪機なんて「もったいない」ということでしょうか。

その結果、除雪に要する時間は以前と大きくは変わらず、ふつうの降雪時で1〜2時間といったところ。ガソリンが月に2000~4000円くらい。これも言うなれば地域に対するボランティア、社会貢献のひとつです。

蛇やら獣やら

旋盤(ろくろ)で削ってこしらえたトチノキの被蓋くり物です。大きさは直径10~12cm、高さは4cmくらいです。

縮みが入った材に、さらに虫穴のピンホールや不規則な変色が生じています。材料面では昨年の12/16に載せた「栃変杢角形被蓋くり物」と似ていますが、腐朽の程度はこちらのほうがすすんでいますし、変色の入り具合も異なっており、製品として使える部分はごく少なかったです。濃い茶色〜濃褐色の部分も多くは、きれいとはいいがたい感じの単なるシミでしかないのですが、ごくわずかながらそのシミがおもしろい形になっているものがありました。ヘビとかキツネとかヒツジ、カモなどの動物です。

ただこれはいい形だと思って削ってみると、どんどんその最初の形が崩れてしまい、結局ものにならないものもありました。内部が腐ってぐずぐずになっている場合もあります。また、鉱物質(石灰質?)らしい異常に硬いものが濃色部分に含まれていることがあり、加工中にカンナなどの刃物の刃がこぼれてしまうといったやっかいな面もあります。

こういった変則的な製品は、ひとによって評価・関心が大きく分かれると思いますが、それぞれが一点ものでもあり、さいわい全部お買い上げいただくことができました。ちなみに蛇は古来から水神様などとして縁起物でもありますね。

※掲げた製品はじつは一昨年に製作したものですが、前のホームページが2年間停滞したままでしたので、それに掲載できなかったものの一部を当ブログにてあらためて披露することがあります。

父の死

12月28日の午後6時すぎに父が死亡しました。食べ物の誤飲から呼吸不全、そして心不全となっての急死です。91歳の誕生日を間近にしてのできごとでした。

4年以上施設に入所し、今年になってからだけでも誤飲や肺炎などで何度も救急車で病院に運ばれていました。そのたびに目にみえて体力の低下をきたしていましたので、兄弟・親族は覚悟していたとはいえ、やはり実際にそのときになってみるとうろたえ悲嘆にくれ、たいへんでした。それでも30日に通夜、そして大晦日の31日の今日が葬儀と火葬で、なんとか正月前に一区切り終えることができました。

父は自分の代一代で会社を立ち上げ築いてきた人間で、私の木工業に対しては心配しながらもたくさんの助言や協力をしてもらいました。けんかもしましたが、なにもないところから非常な苦労の末に、それなりの技術者・経営者となりえたという点で、私と父とは深く共鳴するものがあったように思います。

しかしながら残念なのは、父の期待に十分にはこたえることができていないことです。

今回の父の死を、ひとつの道標として、今後もより高みをめざしていくつもりでいますので、今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。

洗面所の戸棚

あるお得意先でお風呂と洗面脱衣所を改築されました。そこで部屋がせっかく新しくなったので、タオルやら洗濯用小物などの物入れとして長く使用してきた藤のラックをなくし、木で新しく作ることになりました。それが写真の戸棚です。材料はすべてクルミ(オニグルミ)で、サイズは幅607mm、奥行320mm、高さ789mmとコンパクトなもの。中に固定の棚板が2枚あります。高さを抑えているのは上に脱衣かごをのせるため、奥行が浅いのは設置場所のスペースの関係と、収納するのが主にタオル類のためです。

ご予算の関係もありできるだけ簡略な作りとしました。また材料のグレードも最上級のものではありません。が、背板等にいたるまですべて無垢の木ですし、扉の鏡板はブックマッチ(本を開いたような左右対称の木目使い)です。本体側面と天板は5枚組み手です。

できあがってみると、こういうシンプルで小さめの戸棚もなかなかいいものだなと私自身も思いました。

五厘ノミ

家具作りはかなり細かな加工も多いので、数値は基本的にmm(ミリメートル)単位です。大きめの家具でも図面はみなmm表示ですし、作業する場合もmmですべて指示・確認します。部材の接合部などの要所は、さらに細かい0.1mm単位の精度が必要です。それなのに写真の五厘のノミって、いったい?

じつは私は木工を始める前は、首都圏方面で大工をしていました。工務店に見習で入り、20代後半の数年間を大工として建築現場で働いていたのですが、そこではまだ圧倒的に寸尺の世界でした。私はもちろんそれまでずっとメートル法で育ってきましたから、はじめはたいへんで、ひそかにセンチやミリに換算しながら作業をしていましたが、じきに慣れてしまいました。また寸尺のほうが大工仕事の実情には適しているとも思いました。建築の場合はサイズが大きいこともあり、mmではやはり作業する上では細かすぎるのですね。構造材などは乾燥収縮で1mmや2mmはすぐに変わりますから、あまり細かく言っても実際上意味がありません。

私が工務店に勤めて大工仕事をしていたのはもう30年近い昔の話になりますが、木工房を始めてからも材木屋さんとか大工さんなど、外部の人と話をするときはやはりメートル法より尺貫法でした。とくにすこし年配の方と話をするときは何尺とか何寸何分でないと話がスムーズにすすみません。手道具もその流れで、いまだにサイズを尺・寸・分で呼び習わすのが慣例です。ノミの場合もいちばんよく使う10本組の追入ノミ(おいれのみ)でも、小は一分から大は一寸四分まで、1分から2分刻みで段階的にそろえてあるのが普通です。ところがどうしても1分、すなわち3mm以下の溝や穴の加工をしなければならないことがたまにあります。そういうときに出番となるのが五厘ノミです。

刃先は1.5mmの幅しかないので、ふだんせいぜい一分のノミしか見たことがないと異様に細くきゃしゃに感じます。しかし、当然ですが、サイズは小さくともきちんとノミの基本的な形をしています。切れ味もたいへんいいです。あまり数が出ないからかもしれませんが、値段は六分(約18mm)のノミと同じくらいしたと思います。

胴腹ノ滝

鳥海山中で山形県側でもっとも有名な湧泉といえば、なんといっても写真の胴腹ノ滝(どうはらのたき。どっぱらのたき)でしょう。崖の途中から2本の滝となって湧水が流れ落ちています。お堂の後ろの左右に白く写っているのがその滝です。写真は今月21日に撮影したもので、今はかなり雪が積もっているはずです。

滝の高さは4メートルくらいですが、一年中水温9度前後の、冷たく清冽な水が豊富に湧いています。大雨が降った後や雪解けの時期はすこし水量が増えるようですが、雨水が直接流れ込んでいるわけではありません。比較的近いところで地中に浸透した水が地下水を押し出しているのだと思います。

以前は知る人ぞ知るくらいの湧泉だったのですが、20年ほど前にテレビや新聞などに紹介されるようになってから急に有名になりました。遊佐町白井新田地区の岩野の集落をすぎて、二ノ滝渓谷に向かう車道に入って間もなく、胴腹ノ滝入口の大きな看板があります。駐車場はなく路上駐車となるため、他の車の通行を妨げないように、すこし先の右折カーブのところでUターンして下り向きに縦列駐車するのが暗黙の約束。昔とちがって冬期でもこのカーブのところまでは町で除雪するようになっています。150mほど杉林の中を歩くと滝が見えてきます。

地元の人だけでなく他市町や県外などの遠方からも、滝を見に来たり湧水を汲みに来るひとがたくさんいます。春から秋にかけて休日で天気のいい日などはおおぜいの人で混雑するほど。私も最近は週に1回くらい、空のペットボトルを数本持参して飲料用に水を汲みに行きます。ときどきお賽銭箱に100円を投入します。町の施設などではなく、個人の私有地で、歩道の整備や滝のまわりの清掃などもみな個人がおこなっています。心ある方はカンパしてくださいな。

胴腹ノ滝の湧水は硬度が9~10程度と非常に低く、ミネラルその他の混じりけのすくないとても柔らかな水です。いわばノンミネラルウォーター。鳥海山には驚くほどたくさんの湧泉がありますが、そのなかでも群を抜くいい水のひとつだと思います。私は紅茶やコーヒーをよく飲みますが、ここの水でいれるとやはり一段とおいしく感じられますね。