鳥海山中で山形県側でもっとも有名な湧泉といえば、なんといっても写真の胴腹ノ滝(どうはらのたき。どっぱらのたき)でしょう。崖の途中から2本の滝となって湧水が流れ落ちています。お堂の後ろの左右に白く写っているのがその滝です。写真は今月21日に撮影したもので、今はかなり雪が積もっているはずです。
滝の高さは4メートルくらいですが、一年中水温9度前後の、冷たく清冽な水が豊富に湧いています。大雨が降った後や雪解けの時期はすこし水量が増えるようですが、雨水が直接流れ込んでいるわけではありません。比較的近いところで地中に浸透した水が地下水を押し出しているのだと思います。
以前は知る人ぞ知るくらいの湧泉だったのですが、20年ほど前にテレビや新聞などに紹介されるようになってから急に有名になりました。遊佐町白井新田地区の岩野の集落をすぎて、二ノ滝渓谷に向かう車道に入って間もなく、胴腹ノ滝入口の大きな看板があります。駐車場はなく路上駐車となるため、他の車の通行を妨げないように、すこし先の右折カーブのところでUターンして下り向きに縦列駐車するのが暗黙の約束。昔とちがって冬期でもこのカーブのところまでは町で除雪するようになっています。150mほど杉林の中を歩くと滝が見えてきます。
地元の人だけでなく他市町や県外などの遠方からも、滝を見に来たり湧水を汲みに来るひとがたくさんいます。春から秋にかけて休日で天気のいい日などはおおぜいの人で混雑するほど。私も最近は週に1回くらい、空のペットボトルを数本持参して飲料用に水を汲みに行きます。ときどきお賽銭箱に100円を投入します。町の施設などではなく、個人の私有地で、歩道の整備や滝のまわりの清掃などもみな個人がおこなっています。心ある方はカンパしてくださいな。
胴腹ノ滝の湧水は硬度が9~10程度と非常に低く、ミネラルその他の混じりけのすくないとても柔らかな水です。いわばノンミネラルウォーター。鳥海山には驚くほどたくさんの湧泉がありますが、そのなかでも群を抜くいい水のひとつだと思います。私は紅茶やコーヒーをよく飲みますが、ここの水でいれるとやはり一段とおいしく感じられますね。