未分類」カテゴリーアーカイブ

ヤブジラミ

きちんとした標準的な名前にもかかわらず、植物の名前にはじつに不遇としかいいようのないものがあります。ハキダメギク、ママコノシリヌグイ、ヘクソカズラ、クソニンジン、ウバユリ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、ヌスビトハギ、ブタクサ、ギンリョウソウモドキ、クサレダマ、ステゴビル、チョロギダマシ、バアソブ、バカナス、ママコナ、ヨゴレネコノメ、ニセアカシア、等々。

ヤブジラミ(Torilis  japonica)もそのひとつで、漢字で書くと薮虱ですが、むろんシラミとはまったく無関係のれっきとしたセリ科の植物です。野原や道ばたなどにふつうに見かける植物で、高さ30〜70cm、枝先に複散形花序を付けます。白い小さな花は大きさ4〜6mm程度ですが、それがたくさん咲いて群生しているようすはなかなかみごとなものと思います。あまりにありふれた植物すぎるためかそれほど注目されませんが。

名前は、薮かげに生え、カギ状に曲がった刺毛が密生する実が衣類などに容易にひっつくためにまるでシラミのようだ、というところから来ています。白い清楚な花なのに変な名前を付けられたためにずいぶん損しているのではないでしょうか。

植物に正式な標準和名を付すのは植物学者の仕事なわけですが、必ずしも言葉にたいする美的センスがあるとはかぎらないので、なかには変な名前が付いてしまうことがあります。一度付いてしまった名前をかえるのはとても難しいので、結局それが絶対的なものとして幅をきかせることになります。専門家はそれでもその植物の実体を知っているので、名前がどうであってもさして関係ないのですが、一般の人は名前から受ける印象や誤読によってそうとう勝手なイメージをその植物に抱くことになります。

名付けることはその対象を把握する第一歩ですが、場合によってはそのことがよけいな色眼鏡やフィルターとなってしまうことも。

5/27と6/8の胴腹ノ滝


上の写真は5月27日朝、下は6月8日朝の胴腹ノ滝です。カメラの撮影条件(シャッタースピードや絞りなど)が同じではないのですこし分かりにくいですが、前回(5/20)掲載した5/11&18にくらべ徐々に水量が減ってきています。写真を並べよく見比べて分かる程度の差ですが、いちおう雪解けの影響による湧水量増加のピークは過ぎたとみていいと思います。

水温は5/27が右・左ともに8.8℃(気温13.7℃)、6/8が右8.8℃、左8.7℃(気温14.3℃)です。これまで調べたかぎりでは、左の滝の湧水のほうが0.1℃低いことが多いのですが、毎回というわけではないし、逆に左のほうが高い場合も一回ありました。帯水・湧出している地層が微妙に左右で違っている可能性もないとはいえません。

「右と左で水の味がちがう」と主張する人がときおりいますが、水質を分析し数値的にみるかぎり味を左右するほどの違いは両者にみいだせません。ただ、水温からいえば左右がまったく同一ではないこともたしかで、ひょっとすると味覚のほうが正しいかもしれませんね。さらに継続して調べてみます。

 

日ノ山と月ノ山

6月7日の朝、鶴岡市の中心部より北北西約4kmのところからみた日ノ山=鳥海山(写真上)と、月ノ山=月山(写真下)です。庄内平野から見ることができる二つの大きな山で、北の鳥海山と南の月山は、じつは二つでワンセット。

「日と月」は「昼と夜」であり、「陽と陰」「生と死」、また宇宙のことでもあります。私は無宗教の人間ですが、鳥海山や月山を眺めるたびに畏怖畏敬の念が起こるのはたしかですね。とりわけ真冬のごくたまに訪れる快晴の紺色の天空の下、真っ白に輝く鳥海山と月山は比類無き美しさとともに神秘的で荘厳です。

鳥海山は明治以降はそれが統一的な名称になっていますが、それ以前はさまざな名前で呼ばれていました。鳥海山、鳥ノ海、松岳山、吉出山、鳳凰山、北山、温海山、そして日山です。日山という呼び方は遊佐町杉沢の重要無形民俗文化財の番楽「比山の舞」にその名残があります。

 

新緑

 

いま樹木の新緑がとていいですね。とくに晴れた日の下から見上げた逆光気味の景観がすばらしく美しいです。写真は上がホオノキ、下がコナラです。

 

ホオノキは枝先に放射状に広がる非常に大きな葉で、他の樹木と区別しやすいですが、このあたりに混在するミズナラとコナラはちょっと区別がむずかしい。でも写真で分かるように葉柄がはっきりしているのがコナラです。ミズナラの葉柄はごく短く、そのつもりでよく見ないと葉柄がないみたいです。

フクロウのぬいぐるみ

フクロウのぬいぐるみですが、テディ・ベアで有名なドイツの人形メーカー、シュタイフ(Steiff)社のもの。1968年製造のビンテージ品です。少々汚れていますが、どこも壊れてはいません。インターネットで売りに出ていたので、つい買ってしまいました(新品のテディ・ベアなどは数万〜十万以上もするのでとても買えませんが、これならなんとか私でも可)。子どもにというのではなくていちおう自分用です。デザインの本質を考える際の参考になるでしょうから。高さは23センチ。

アニメのキャラクターグッズとか、あまりに幼児玩具的な感じのぬいぐるみは好きではありませんが、これはなかなかいい味が出ていると思います。まだ若いふくろうでしょうが、なんとも愛らしいですね。

イワカガミさらに低地に

5月18日の記事で、鳥海山の某所250m地点でイワカガミ(岩鏡)の小群落を発見したことを記しました。しかしその後のくわしい調査でさらに低い標高240m弱(たぶん237m前後)の地点で小群落を見つけました。前回の250m地点との間の200m余区間にもいくつか同様の群落がありました。開花期はほぼ終わりに近かったのですが、かろうじて残っていた花を無事に写真撮影。当初は「イワウチワの見間違いでは?」という声もあったのですが、まぎれもなくこれはイワカガミですね。

「鳥海山の某所」と場所の詳細を秘しているのは、もちろん盗掘などを避けるためです。わざわざ高山まで行かなくともかなり低い所にイワカガミがそれなりの規模で自生しているとなれば、たちまち根こそぎやられる恐れがあります。あるいは高いところのものと微妙にタイプが異なっている可能性もないとはいえませんから、なおさら注意が必要です。

これほど低い場所にイワカガミの群落があるというのは、すくなくとも私にはたいへんな驚きです。標高240m弱というともう人里に間近いところですから、もしかしたら田畠や植林や宅地・道路などで人為的な開発と改変がなされる以前は、さらに低いところまでイワカガミがふつうに自生していたかもしれません。湧水が非常に豊富な鳥海山麓ならじゅうぶんありえる話です。

Tシャツ

あちこち穴があいたりすりきれているTシャツ。これは「月光川の魚出版会」謹製のもので、もう20年ほど愛用していますが、いくら下着がわりといってもさすがにもう寿命ですね。

月光川の魚出版会は鳥海山の文殊岳あたりを源流(最高点)とする流程20数kmの月光川水系に生息する淡水魚を調査する目的で1985年に発足した会ですが、その会のオリジナルTシャツとして作りました。絵柄は写真のシマヨシノボリのほかにメダカがあり、生地の色もライトグレーの杢とブルーグレーの杢、黄色の3種類、印刷の色も青・緑・黒の3種類あります。それらの組み合わせによってつごう十数種類のTシャツを作ったと思います。

どうせ作るなら長く着られるものをということで国産の、綿100%の上質のTシャツを知り合いの衣料品店からたくさん仕入れ、それに私たちが作製したオリジナル原稿をもとにシルク印刷してもらいました。できあがりで一着1800円くらいの値段になったでしょうか。私も自分用に5、6着注文しました。

綿100%ですから汗だくになるような季節や作業には向いていません。当時はTシャツはそれしかなかったのでそんなものだと思っていたわけですが、その後ポリエステルなどの化学繊維の生地で立体的・複雑な編み方による吸水発汗性にすぐれたTシャツが一般的になってからは、こうした綿百のTシャツの出番は少なくなりました。それでもとくに暑い時期をのぞけばこのTシャツの着心地はとてもいいです。

感心するのは耐久性で、縫い糸がほつれてきたり洗濯で形が崩れたり縮んだり、ごわごわしたりということがほとんどありません。あまり長いこと着ているので生地が薄くなってきていることや、これ一枚で作業していてなにかに引っ掛けた所が穴になりしだいにその穴が大きくなったりはあっても、基本はしっかりしています。5、6着をとっかえひっかえ、また他のTシャツも若干混じえながらですが、20年も着られたというのはすごいことです。

高校のフィールドワーク

私は11年前(2000年)から、地元の山形県立遊佐高等学校の非常勤講師をつとめています。担当は理科分野の「湧水」で、原則として教室での講義ではなく、野外に出かけて鳥海山の湧水を調べるフィールドワークです。どこに出かけてどのような調査・観察を行うのか、そのプランニングとガイドを主に私が行います。

春と秋、回数は少ないのですが、2年生の生徒を引き連れいちおう登山の完全装備で数時間山野を歩きます。湧泉をたずね、そこから流れる湧水の経路をたどり、その水が農業や生活にどのように利用されているかを見ていきます。常勤の理科ならびに社会の先生も2、3名同行するのですが、生徒にとってはめったにない遠足のようなもので、授業そっちのけではしゃいでいる面も半分あります。自然の美しさも深さ・怖さも実際に自分の身体で体験しないと理解できないので、まあそれもよしとしましょう。机上の勉強だけでは自然は理解できませんから。

「湧水」のほかに「淡水魚」のフィールドワークもありますが、そちらは同じ月光川の魚出版会のメンバー=鈴木康之が担当しています。当初は「植物」と「昆虫」、そして社会分野の歴史・文化などの科目もあったのですが、非常勤講師を担っていた方たちの都合や、生徒の反応が思わしくないなどの理由で徐々に撤退してしまいました。ずっと残って続けているのは残念ながら「湧水」と「淡水魚」だけです。

とりわけ相手が自然の場合は、たとえ前年と基本的に同じフィールドであったとしても毎年状況は変わりますし危険性もないわけではないので、授業当日だけでなく事前の下見を欠かすことができません。コースの地図やチェック用の文書の作製が必要なときもあります。非常勤とはいえ正式な依頼ですので、授業時間数に応じた「給与」はいただけるのですが、率直にいって金勘定だけではまったくわりに合わない活動です。次世代(次々世代?)にこの豊かな自然をなんとか実地で伝えなければという一種の「使命感」のようなものがなければ、とてもやってはいられません。

 

蓋の裏

すこし前に、お客様から預かった家具や小物の「リニューアル」の件をお伝えしましたが(5/23・25・26)、この四角い蓋物もそのひとつです。

木製ではなく陶器で、大きさは縦横が145mm、高さ86mm。外側は全体が濃い臙脂色で、それに模様が全面に施されています。釉薬で描いて窯で焼き上げたのではなく、漆塗りの下地に色漆や金泥で描いたように思います(ただ私は漆はまったくだめなので、もしかしたら違っているかもしれませんが)。蓋のほうの絵柄はもうかなり薄くなってしまっています。とくに金泥の部分はほとんど消えていますね。

おもしろいのは蓋を開けて中をのぞいたときです。実と蓋に左右対称にシュンラン(春蘭)でしょうか、花の絵が描いてあります。シュンランだとすれば実際の花も淡い緑色なので、絵がモノクロで描かれているのはむしろ実写的といっていいかもしれません。それと対照的にふたつの角の緑の釉薬もしゃれています。

私は焼き物にはたいへん興味があり、いわゆる作家物の陶磁器をそれなりに多く持っていて、実際に日常的に使用しています。ただ最近は新たに買い入れる余裕は、収納スペースの意味でもなくなってきてしまったのが残念です。

カピバラ

これは俗に「世界最大のネズミ」とウワサされるカピバラです。大型犬くらいの大きさがあり、ネズミというにはおどろくべき巨体ですが、たしかに顔のあたりの雰囲気はネズミに似ていなくもないですね。

保育園のバス遠足で先日、秋田市の大森山動物園に行ってきました。トラとかゾウとかキリンなどの目玉の動物もさることながら、もうひとつのお目当てがこのカピバラ。正午すぎで気温も26℃にもなったらしいので、屋外の日向のカピバラはどてっと横になって寝ていましたが、室内にいたカピバラはごらんのように静かにたたずんでいました。

カピバラは体長105〜135cm、体重も35〜65kgにも達するそうで、ネズミ目(齧歯目)では最大。分類としてはヤアマラシ亜目カピバラ科カピバラ属カピバラ(Hydrochoerus hydrochoerus) で、カピバラ属の唯一の種。思いのほか珍しい動物のようです。ただ大きいだけのネズミではなかったんですね。性格がとてもおだやかで人になつきやすいため、ペットとして飼っている人もいるそうです(秋篠宮も飼われておられるとか)。