高校のフィールドワーク

私は11年前(2000年)から、地元の山形県立遊佐高等学校の非常勤講師をつとめています。担当は理科分野の「湧水」で、原則として教室での講義ではなく、野外に出かけて鳥海山の湧水を調べるフィールドワークです。どこに出かけてどのような調査・観察を行うのか、そのプランニングとガイドを主に私が行います。

春と秋、回数は少ないのですが、2年生の生徒を引き連れいちおう登山の完全装備で数時間山野を歩きます。湧泉をたずね、そこから流れる湧水の経路をたどり、その水が農業や生活にどのように利用されているかを見ていきます。常勤の理科ならびに社会の先生も2、3名同行するのですが、生徒にとってはめったにない遠足のようなもので、授業そっちのけではしゃいでいる面も半分あります。自然の美しさも深さ・怖さも実際に自分の身体で体験しないと理解できないので、まあそれもよしとしましょう。机上の勉強だけでは自然は理解できませんから。

「湧水」のほかに「淡水魚」のフィールドワークもありますが、そちらは同じ月光川の魚出版会のメンバー=鈴木康之が担当しています。当初は「植物」と「昆虫」、そして社会分野の歴史・文化などの科目もあったのですが、非常勤講師を担っていた方たちの都合や、生徒の反応が思わしくないなどの理由で徐々に撤退してしまいました。ずっと残って続けているのは残念ながら「湧水」と「淡水魚」だけです。

とりわけ相手が自然の場合は、たとえ前年と基本的に同じフィールドであったとしても毎年状況は変わりますし危険性もないわけではないので、授業当日だけでなく事前の下見を欠かすことができません。コースの地図やチェック用の文書の作製が必要なときもあります。非常勤とはいえ正式な依頼ですので、授業時間数に応じた「給与」はいただけるのですが、率直にいって金勘定だけではまったくわりに合わない活動です。次世代(次々世代?)にこの豊かな自然をなんとか実地で伝えなければという一種の「使命感」のようなものがなければ、とてもやってはいられません。

 

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