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一面のジシバリ

 

ごくありふれた野草でも、それが広大な地面一面に生えていればそれはたいへんすばらしい光景となります。これはキク科ニガナ属のジシバリ(地縛り・別名イワニガナ Ixeris  stolonifera)です。鳥海山麓の一度畑作で裸地となりその後休耕地となったとおぼしきところに、見渡すかぎりジシバリの黄色い花が陽光に輝いていました。面積としては小学校のグランドの半分近くあると思います。壮観です。

ジシバリは山野の日当りのいいところに生える多年草で、細長い茎が地面を這いところどころ根を下ろして広がっていくので、まるで地面を縛り付けていくようだということから名付けられたようです。それだけ繁殖力も旺盛だということですね。花茎は高さ8〜15cmくらいで短めですが、直径20〜25mmの黄色い頭花を1〜3個付けます。葉は花に比べ小さめなこともあって、いくぶんきらきらする感じの花がよけい目立ちます。

鳥海山古絵地図

山形県の遊佐町生涯学習センターで6月10〜19日に開催されていた「史跡鳥海山展」ですが、会期が終わり撤収する直前に主な絵地図の写真撮影をさせていただきました。もちろん事前に大物忌神社と町の文化財責任者の承諾を得ての話です。

撮影は例によってヘタレなコンパクトデジカメですが、撮影データをパソコンに取り込んで拡大チェックしてみたところ、なんとか小さな文字まで読み取ることができました。上の写真はそのごく一部ですが、旧蕨岡口の参詣道の一部で褄坂から河原宿あたりまで写っています。鶴間池はこれでは「弦巻池」と表記されています(おそらくその方が正解で、鶴間は当て字でしょう)。この絵地図の製作は慶応4年。ほんとうは頂上などを含むもっと広範囲かつ見栄えのする写真を披露できればいいのですが、「著作権」の関係もあるので、これくらいでご勘弁ください。

まだ詳細をつきあわせてはいないのですが、現在の地形図や登山地図などと照合すると、じつにさまざまな面白い事実が浮かんできます。湧泉・湧水の所在についても興味深いです。また一つの絵として眺めてもたいへん情趣があります。せっかくのこうした「お宝」は埋もれることなく、できれば世間一般に広く認知され活用されるべきでしょう。

デワノタツナミソウ

 

たぶんシソ科タツナミソウ属のデワノタツナミソウ(Scutellaria  muramatsui)だと思いますが、自信はありません。タツナミソウは仲間が多く、識別は簡単ではありませんが、デワノタツナミソウは花弁の下唇に斑紋がないか、あってもごく目立たないのが他のタツナミソウと区別するポイントのようです。

近畿地方以北の日本海側に多く、草丈10〜20cm、湿った林地に生える多年草ですが、たしかにこの写真も湧水主体の渓流の畔で撮ったものです。樹木の陰がすでに色濃く指していて半日陰のところに咲いていました。この箇所では30株ばかりまとまって咲いていて見事でしたが、他はせいぜい数株程度で、個体数はそれほど多いわけではないと感じます。

植物の専門家ではなくとも、草木の花が咲いていてそのうちの何割かの名前が分かるだけでも、山を歩く楽しみが倍加します。花を通して自然の仕組みや不思議もすこし理解できるように思います。もっともいくらか知識がそなわってくると、それまでは漠然と眺めていたものの区別や差異も目につくので、かえって混乱し悩むことも多いです。知るということはまさに「何を知らないか」をはっきりと認識すること。自然は知れば知るほど、知ったこと以上の無知の領域が増えます。終わりはありません。

私の場合ですが、当地(鳥海山およびその周辺)に生息するシダ以上の「高等植物」1700〜1800種のうち、およそ四分の一程度しか見分けることができていません。まだまだですね。

刈払機


工房の敷地は入口付近のごく一部をのぞいて舗装されていません。したがってとうぜんながら草がどんどん生えます。ほうっておくと草ぼうぼうのまるで廃工場のような外観になってしまうし、周囲がいつも湿りがちになってしまうので建物にも悪影響を及ぼします。蚊なども発生しやすくなります。それで5月末頃から8月中頃まで5、6回ほど草刈りをします。先日(6/14)はその2回目でした。

以前は大きな草刈り鎌で刈っていたのですが、今は自分もだんだん年をとってきて体力の限界を感じてきたため機械で刈っています。一般には「草刈機」と呼ばれることが多い機械ですが、草だけでなく竹や小灌木なども切ることができるので、正式には「刈払機」と呼ぶようです。私が使っている刈払機はマキタのMEM426という機種ですが、4ストロークの24.5mlの無鉛ガソリン(レギュラーガソリン)仕様のエンジンで駆動します。

世間一般では2ストローク(2サイクル)で混合ガソリンを使うエンジンのものが多いように思いますが、それに比べると燃料代はおよそ半分、排気ガスは90%減。低騒音ですし、燃料に潤滑油を混ぜないのでキャブレタが詰まりにくい、などの利点があります。4サイクルの刈払機は2サイクルの刈払機に比べると値段はすこし高目のようですが、実際使ってみればじゅうぶんそれだけの価値はあります。MEM426は定価で5万ちょうどくらいだったか。

刈払機を日頃使われている方はよくご承知のように、じつに便利ですが同時に非常に危険な機械でもあります。手順を守って慎重に作業をおこなえばいいのですが、機械のメンテナンスを怠ったり、いい加減な体勢や気持ちで刈り払いをしたりすると大怪我をするかもしれません。自分が怪我するだけならまだしも、他人を傷つけたら最悪です。

刃は刈払機専用の刃を用いるのですが、刈る対象の違い(草か灌木か竹か、軟質か硬質か)や刈り残しの程度や作業条件などによって、じつにたくさんのタイプの刃があります。私が使っているのは木工用のチップソーの刃に似たギザギザの刃(写真中)と、2本のナイロンコードの刃です。前者は回転刃が石等に当たった際に刃先端のチップが欠けにくいように特殊なろうづけをしてあることや、できるだけ軽くするためにベースがスチールではなくアルミ合金であったり、たくさん窓が開いていたりします。切れなくなったら電動丸ノコの刃と同様に研磨屋さんに研いでもらいます。再研磨しない(できない)安価な使い捨ての刃も売られていますが、私は使いません。

後者はドラム内部に径3mmほどの長いナイロンの無垢の紐が組み込まれているもので、遠心力によって必要な長さ(10cmくらい)が半自動的に繰り出されるようになっています。柔軟性のあるコードなのでフェンスや庭石や建物のごく近くまで草をほぼ完全に刈りとることができます。ただ切断するというよりはものすごい速度でばしっと力任せに草をなぎ倒すといったほうがいい具合なので、草の汁や粉砕された葉や茎があたりにけっこう飛び散ります。コードは単純な丸断面のものから、螺旋をえがいているもの、ギザギザのフックがあるものなどいろいろです。ただ丸いだけのものより、後者の異形コードのほうがもちろん性能はいいです。

刈払機は本体をベルトで肩から吊るすか、背中に背負うのですが、長時間かつ日常的に高頻度で使うのであれば背負式のほうが楽でいいでしょうね。私のは肩から専用の付属ベルトで吊るす式ですが。また刃以外にも、さまざまな形状のハンドルや、ノコ刃が地面に接触しにくくするための補助器具(中の写真の赤い部品)、回転軸に巻きついた草などをさらに切り落とす刃、丈の長い刈り取った草をまとめて脇に寄せるためのガイドなど、多種多様な付属品が市販されています。刃やそれらの付属品をそのつど交換するのは意外に面倒で、微妙なセッティングが必要な場合が少なくないので、農家など刈り払いのプロは刈払機を最低2台は持っているようです。

※ MEM426は現在廃番で、後継機種はMEM427、またはMEM427Xです。マキタには最新式では36Vのリチウムイオンバッテリーで駆動する刈払機もありますが、値段は電池+充電器+本体のセット定価108000円(税別)。しかしランニングコストは4サイクルガソリンに比べても約1/10で、もちろん低騒音、メンテナンスも楽。車と同じで近い将来は充電式刈払機が主役になるかな。

 

定盤保護カバー

当工房で長年使用している鉋盤(かんなばん)という大きな木工機械です。いまはなき酒田市の大井鉄工というメーカーのもの。手前の手押鉋盤の機能と向こうの自動鉋盤の機能が一体となった「兼用機」というタイプで、手押しは幅303mm、自動は幅465mmまで削ることができます。写真では機械の上に2枚の白い薄板が置かれていますが、これは鉋刃の前後の定盤(じょうばん)を保護するためのもので、厚さ4mmのポリスチレンの板です。雪囲とかに使われるもので安価でどこでも簡単に入手でき、中空のプラスチックで軽く吸水性もまったくないため、こういった用途には向いています。

鉋盤は木材を平らかつ一定の厚さに削るための機械ですが、その精度はだいたい10〜20ミクロン(0.01〜0.02mm)くらいです。刃やいくつもあるローラーやプレッシャーバーなどを微調整しますが、真っ平らに削るにはその基準となるべき定盤がまず真っ平らになっていなければなりません。歪んだり傷ついたり錆びたりしているような定盤ではとうてい基準になりません。しかし定盤はほとんどの場合鉄製なので、気をつけないとすぐに錆びてしまいます。暑いときに汗をかいた手で定盤をさわっただけでもすぐにうっすらと手の跡がつくほど。また定盤面にうっかりスパナとか工具を落とせば容易に傷がついてしまいます。

もちろんそういうダメージを与えないよう、常にベストの状態で機械を使用できるように注意を払いながら作業をしますし、わりあい煩雑に定盤面に錆び止めのスプレーをしますが、それでも業者やお客さんなど外部の人が出入りすることもあるし、吹雪のときは建物の隙間から雪が吹き込むことだってあります。油断はできません。

定盤はあらゆる機械の命といっていい重要なものなので、その日の仕事が終了するつどに、あるいは作業途中であっても長時間鉋盤を使わない場合は必ず上記の保護カバーをします。まあ作業場がもっとしっかりした建物で、空調がきいており、「関係者以外立ち入り禁止」が徹底できるのあれば、こうした措置は必要ないと思いますが。

エゴノキ


 

そろそろ梅雨かな、と思っていると咲いているのがこのエゴノキ(Styrax  japonica)です。鳥海山麓の標高200〜300mくらいのところであちこち満開でした。エゴノキといってももちろんエゴイズムとはなんの関係もありません(言うまでもないか)。果皮に強いえぐみがあり、魚を捕る毒流し漁にも昔使われたことなどからきた名前のようです(異論あり)。今は毒流し漁は全面禁止ですが。

エゴノキ科エゴノキ属の落葉高木で、山野の雑木林などに生えます。別名をチシャノキ、チサノキ、ロクロギといいますから、ろくろ細工や将棋の駒などに向いた緻密で粘りのある木質なのでしょう。白い花で花冠の先が深く5裂し、下向きに群がるように咲きます。完全には平開せずややすぼまって咲くのも趣があります。樹高10mほどになるけっこう大きな樹木ですが、花が下垂してたくさん一度に咲くので、目立ちます。いい香りとともに、林の一画にまるで明かりが灯ったような雰囲気です。

史跡鳥海山展

山形県遊佐町(ゆざまち)の生涯学習センターで「史跡鳥海山展」が6月19日まで開かれています(午前9時〜午後4時半 遊佐町生涯学習センター   tel 0234−72−2236)。昨日の夕方訪れてみたのですが、非常におもしろかったです。

鳥海山は信仰対象としては山それ自体が御神体で、これを管轄する大物忌神社(おおものいみじんじゃ)は山頂=新山に本殿、西麓の吹浦(ふくら)と南麓の蕨岡(わらびおか)に口ノ宮があります。2008年3月に、遊佐町側の鳥海山中腹〜山頂周辺、二つの口ノ宮境内地、牛渡川そばの丸池、合わせて917haが国の史跡として指定されました。その後、2009年に秋田県側の金峰神社境内地と森子大物忌神社境内地などが追加。これらを一括して「史跡鳥海山」の国史跡指定を受けたものです。

今回の展示はこの史跡指定を記念し、主に歴史的側面に焦点をあてた展示となっているとのこと。往事の山岳信仰や登拝のようすをあらわす絵地図やスケッチ、神像・器物、山岳名所番付表、古い絵葉書など、いろいろ興味深いものが展示されています。コピーや写真だけでなく、通常は「門外不出」とでもいうべき現物そのものが多く展示されています。

私は個人的にいちばん興味があったのが、山の絵地図です。現在の登山ルートやポイントとの異同や、すでに今では忘却の彼方となってしまったような古道がしるされていたからです。ガラス越しに写真は撮ったのですが、細かい文字までは読み取りできません。あとで関係者・責任者に頼んでもっと精細な撮影をさせていただこうと考えています。

 

ミズタビラコ

私が使っているコンパクトデジカメはNikonのCOOLPIX P5100という機種で、いちおう接写モードもあるのですがほとんど使いものになりません。いくらやってもピントが合わないことが多く、レンズの解像度もよくありません。風景や人物などはまあまあですが、上の写真でお分かりのようにマクロには向いていませんね。

写真はムラサキ科のミズタビラコ(Trigonotis  brevipes)です。キュウリグサの仲間ですが、くるんと巻いた花序、白色またはわずかに青紫色をおびた花が密に連なりとても愛らしいと感じます。山地の比較的流れの安定した渓流付近に生える多年草ですが、草丈10〜20cm程度と低く、花冠の大きさは径3mmくらいしかないので、野草にそれほど関心がなければ見過ごしてしまいそうな控えめな植物です。個体数としてはとくに珍しい植物とはいえませんが、生息地はわりあい限られているように思います。

ミズタビラコは漢字で書くと水田平子ですが、キュウリグサの別名をタビラコとすることがあり、またキク科にオニタビラコやコオニタビラコ、ヤブタビラコがあるなど、素人にはとてもまぎらわしいです。

玉簾ノ滝と二ノ滝

山形県の庄内地方で「北庄内の三大名瀑」と称されるのが鳥海山南西面の二ノ滝、升田の玉簾ノ滝、平田の十二ノ滝です。異論もありますが、昔から一般によく知られ比較的アプローチが容易な大きな滝という意味で、まず妥当な選択といっていいと思います。また三つの滝はそれぞれタイプが大きく異なるという面でも面白いです。

玉簾ノ滝は落差63mもある直瀑で、まわりの柱状節理がみごと。二ノ滝は落差は25m(?)といわれていますが、二股に分かれた落水と膨大な水量、そして滝下の巨岩の渓流が見応えがあります。十二ノ滝は連続的に階段状に連なる落水とそのまわりの大きな樹木との対称がすてきです。したがって地元贔屓を別とすれば「どの滝がいちばん」とはいいがたい個性がそれぞれの滝にあります。

先日、子どもを連れて二ノ滝と玉簾ノ滝に行ってきました。日曜日で天気もよかったので多くの人が観賞に訪れていました。はじめは続けて十二ノ滝もみて三大瀑布めぐりを完遂するつもりでいたのですが、時間切れで十二ノ滝には結局行けませんでしたが、前ふたつの滝はとても良かったです。四季それぞれに良さがありますがちょうど今頃は水量が多くたいそう迫力がある一方、滝の周りの新緑が美しく、おすすめ。駐車場から徒歩で、二ノ滝は20〜30分程度、玉簾ノ滝は10〜15分程度です。

電子式水温計

湧水の温度などを計るのに私が使用しているのが写真のデジタル水温計です。株式会社佐藤計量器製作所(skSATO)のSK−250WPという機種で、防水型。測定の精度はプラスマイナス0.1℃です。サーミスタ式の温度センサーは1mのコードが付いているので、対象からややはなれている場合でも測定することができます。湧泉は足場がいいところばかりではありませんし、湧水の水面が岩間などからわずかにしかのぞいていないこともあるので、これは助かります。

電池は単三が四本ですが、本体右側の白い板はパワースイッチが誤って押されないようにするためや、液晶が割れたりしないようにするための自作の発泡アクリルの防護板です。以前、湧水の温度をいざ調べようとしたらスイッチが入りっぱなしになっていて電池切れだった苦い経験があるので、自分で取り付けたものです。

アクシデントといえば、こうした電子機器には故障がつきものです。まったくうんともすんともいわないのならダメだということがはっきり分かるのでまだいいのですが、測定・表示が微妙に狂った状態だと、それと気づかないまま正しいデータだと思って誤って記録してしまう可能性があります。そのため、ときおり他の温度計と比較したり、割れない限りは逆に信頼性がある0.1℃目盛の水銀温度計と比較したりする必要があります。

このデジタル水温計は価格22000円くらいのものですが、ホームセンターなどではこれより一桁安い値段で0.1℃まで温度表示されるデジタル水温計が売られています。しかしその値段の差にはむろん意味があるわけで、計測精度の差であり、機器の耐久性の差です。実際、鳥海山の湧水を調べ始めたごく初期の頃に、そのたぐいの簡易な温度計を使ったことがありますが、精度がわるく不安定なため、すぐに廃棄処分したことがあります。ちゃんとした電波時計でもないかぎり、秒針のある時計でも時・分はともかく、秒はほとんどあてにならないのと同様です。

※本機種は現在は廃番になっており、後継機種はSK-250WPIIです。あるいはひとつ上のモデル、SK-1260がいいかもしれません。