当工房で長年使用している鉋盤(かんなばん)という大きな木工機械です。いまはなき酒田市の大井鉄工というメーカーのもの。手前の手押鉋盤の機能と向こうの自動鉋盤の機能が一体となった「兼用機」というタイプで、手押しは幅303mm、自動は幅465mmまで削ることができます。写真では機械の上に2枚の白い薄板が置かれていますが、これは鉋刃の前後の定盤(じょうばん)を保護するためのもので、厚さ4mmのポリスチレンの板です。雪囲とかに使われるもので安価でどこでも簡単に入手でき、中空のプラスチックで軽く吸水性もまったくないため、こういった用途には向いています。
鉋盤は木材を平らかつ一定の厚さに削るための機械ですが、その精度はだいたい10〜20ミクロン(0.01〜0.02mm)くらいです。刃やいくつもあるローラーやプレッシャーバーなどを微調整しますが、真っ平らに削るにはその基準となるべき定盤がまず真っ平らになっていなければなりません。歪んだり傷ついたり錆びたりしているような定盤ではとうてい基準になりません。しかし定盤はほとんどの場合鉄製なので、気をつけないとすぐに錆びてしまいます。暑いときに汗をかいた手で定盤をさわっただけでもすぐにうっすらと手の跡がつくほど。また定盤面にうっかりスパナとか工具を落とせば容易に傷がついてしまいます。
もちろんそういうダメージを与えないよう、常にベストの状態で機械を使用できるように注意を払いながら作業をしますし、わりあい煩雑に定盤面に錆び止めのスプレーをしますが、それでも業者やお客さんなど外部の人が出入りすることもあるし、吹雪のときは建物の隙間から雪が吹き込むことだってあります。油断はできません。
定盤はあらゆる機械の命といっていい重要なものなので、その日の仕事が終了するつどに、あるいは作業途中であっても長時間鉋盤を使わない場合は必ず上記の保護カバーをします。まあ作業場がもっとしっかりした建物で、空調がきいており、「関係者以外立ち入り禁止」が徹底できるのあれば、こうした措置は必要ないと思いますが。