鳥海山に源を発する月光川(がっこうがわ)ですが、その本流にサケが毎年のぼってきます。オホーツク海やベーリング海を4年前後回遊して大きくなり、生まれた川にまたもどってきます。
月光川水系には主な支流が10本余りあるのですが、北よりの牛渡川・滝淵川・洗沢川では古くから人工孵化事業が行われています。ところが本流のほうはだいぶ前にその事業をやめているので、いま本流に遡上してきているサケはすべて自然に繁殖しているものです。自力で産卵と放精をし、卵からかえり稚魚となって春先に海にくだります。人工孵化の場合でおおよそ0.5%程度の回帰率(200匹に1匹)といわれていますが、自然産卵の場合は回帰率はさらに一桁くらい下がるかもしれません。しかしそれでも例えば昨年の例では千匹くらいのサケが月光川本流にもどってきました。
サケが遡上する川は全国的にはたくさんありますが、数メートルの至近距離からかつ安全に自然産卵のようすを観察することができる河川はきわめて稀です。箕輪集落などの人工孵化のサケばかりが注目されがちですが、自然産卵のサケはそれとはまた違った魅力がたくさんあり、ぜひ広く皆さんに知ってもらいたいと思います。ただしサケは国が管理する水産資源として重要であり、一般の人は捕獲はいっさい禁止されています。どうせ勝手にのぼってきたサケなんだから1匹くらいいいだろうと捕まえてしまうと密漁ということで今度は自分が捕まりますのでご注意を(昨年も洗沢川でサケ2匹の密漁で誰かさんが警察にお縄になっています)。
月光川本流のサケの遡上は11月〜12月中旬くらいまでが見頃です。下の写真は河川の中流域と上流域の境界にあたる旧朝日橋のすこし上部のもの。体の一部が白くなっている1匹のサケと、すでに種の維持という役目を終えてホッチャレになってしまったサケです。遺骸は見た目はよくないかもしれませんが、鳥や獣が食み虫やバクテリアが分解し、生き物のサイクルに組み込まれるのであって、けっして無駄になったり環境の悪化をまねくわけではありません。そうした面も含めてリアルに体感できるすばらしい河川といえます。