月別アーカイブ: 10月 2015

句集『龍宮』

 

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ずっと気にかかっていた句集ですが、やっとインターネットで手に入れました。照井翠(てるいみどり)さんの第五句集『龍宮』です。昭和37年生まれ、岩手県釜石市在住の方です。と、ここまで書けば題名の「龍宮」がなにをさすのかはもう明らかでしょう。4年半前の3月11日に東北地方太平洋沿岸を襲った大津波で、犠牲となった方々に捧げる鎮魂を主体とする句集です。

はじめはホチキス止めの私家版として出したものが、その内容に驚嘆・共感した周りの人たちのすすめで2013年7月に角川書店よりあらためて出版されたという経緯からも伺い知れるように、俳人はもとよりもの書きであればうちのめされるようなたいへんな句集です。

表紙は深い海の底を想わせる群青色。6章にわかれ計223句がおさめられていますが、1ページに1句だてというたいへんぜいたくな作りです(装丁は間村俊一)。ブログにはどの句を取り上げるか迷いに迷ってしまうのですが、以下35句を選んでみました(私のパソコンでは旧字で出てこないものがあります。ご容赦を)。

黒々と津波は翼広げけり
家どれも一艘の舟津波引く
泥の底繭のごとくに嬰と母
双子なら同じ死顔桃の花
御くるみのレースを剝げば泥の花
春の星こんなに人が死んだのか
毛布被り孤島となりて泣きにけり
剥製の鹿と人間泥の穴
朧夜の首が体を呼んでをり
朧夜の泥の封ぜし黒ピアノ
梅の香や遺骨なければ掬ふ泥
一列に五体投地の土葬かな
春昼の冷蔵庫より黒き汁
春光の影となるものなかりけり
唇を噛み切りて咲く椿かな
漂着の函を開けば春の星
北上川の青蘆の丈長き髪
ほととぎす最後は空があるお前
トンネルの奥の万緑閉ぢきらる
蝶の逝く摑みし巌に摑まれて
蟻しきりに顔掻き毟るなくならぬ
蟇千年待つよずつと待つよ
面つけて亡き人かへる薪能
流灯にいま生きている息入るる
夏の果波間埋むる白き羽根
水引のどこまでも手を伸ばしくる
穴という穴に人間石榴の実
鮭は目を啄まれつつ産みにけり
蜘蛛逝きぬ己の糸の揺り籠に
小鳥来るきのふは番ひけふは一羽
葉牡丹の大きな渦に巻き込まる
釜石は骨ばかりなり凧
三月や遺影は眼逸らさざる
何処までも葉脈の街鳥帰る
朝顔の遥かなものへ捲かんとす

大自然の猛威を目のあたりにして、作者は呆然と立ち尽くし、悲嘆にくれ、やがて氷が溶けるように「運命」を受容し、いくぶんかは平安をとりもどしてゆく。そんな時間と精神の推移がわかります。この大震災では少なからぬ文学作品=俳句や短歌・詩・小説などが著されましたが、この句集は当事者ならではの緊迫感があり、多くの読者や評論家が指摘するように他を圧し群を抜いていると思います。

ただあえて言うならば、大津波によって大勢の人が亡くなったそのむごたらしい光景に対して、無理からぬとはいえ事実をそのままに羅列するに終わっている句も散見されます。ドキュメンタリーであればそれでよくそれで正解でしょうが、俳句として表現するなら詩的跳躍がほしいところです。もちろん、3.11という比類なき災害に遭遇してさえも文学的昇華を期待するのは、文学者としての一種の業かもしれませんが。

 

酒田木製品コンクール

 

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正式名は「第42回 伝統技術及び新材料による酒田木製品コンクール」ですが、酒田伝統工芸匠の会、酒田観光物産協会が主催、後援が酒田市という催事です。10月3〜4日に酒田市営体育館で行われました。私(当工房)は会員ではありませんし観光物産店に製品を委託販売したことも一度もありませんが、どうやら県の工業技術試験場あたりのアンテナにひっかかって出品の誘いが来たようです。

「今年度製作のもの」「追加注文に応じられる商品性のあるもの」といった条件があったので、私は昨日のブログにも載せた黒柿の蓋物(黒柿角形凹面被蓋くり物)1点と、6月末に仕上がったペーパーウェイトDタイプから6つの樹種の品を出しました。自分としては黒柿の蓋物がメインのつもりだったのですが、5名の審査員によって選ばれたのはペーパーウェイトDタイプのほう。奨励賞をいただきました。

このコンクールは産業フェアと同時開催・同一会場のため、入場者こそ8000名ほどあり盛況だったようですが、私も含め木製品等の売り上げはぱっとしませんでした。会場全体が物販に関してはいわばバーゲンセールのような感じなので、大半は1000円2000円程度のものしか売れなかったようです。私の場合も黒柿の蓋物は売約済みとなったので一安心したのですが、他はゼロ。しかも細かな当て傷やすり傷が付いてしまい、再塗装をしなければならなくなりました。

県知事賞や酒田市長賞といった上位の受賞作品はみな伝統的なデザインと作りの建具や家具や什器類で、正直言ってあまりかわりばえがしません。とうぜん技術はあると思うのですが、残念ながらこれでは新たな需要は見込めないでしょうね。

私自身もコンクールはさほど期待はしていませんでしたし、審査などもだいたい予想したとおりの結果で、とりたてて落胆しているわけではありません。むしろ酒田市および周辺の木工事情を、よかれあしかれ実物で体験できたことはよかったと思います。

 

黒柿角形凹面被蓋くり物

 

黒柿角形凹面被蓋くり物(くろがきかくがたおうめんかぶせぶたくりもの)と名付けた新作の小物です。大きさは152×106×35mmで、鏡面塗装で仕上げています。蓋も実も黒柿の厚板を掘り込んで作ったもので、このような技法でこしらえた木工品を「くり物」といいます(くるは掘るの意味ですが、私のパソコンのワープロでは漢字が出てきません)。

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箱物によくあるような薄板を接合して箱にしたもの=指物、あるいは薄板を蒸したり炙ったりして湾曲させて作ったもの=曲物ではありませんので、材料もよけいに使いますし、手間ひまもかかります。しかしできあがりは木目が途切れることなく続いて美しく、木の塊という感じがするので実際以上に重厚感もあります。貴重な黒柿の材がほとんどは製作過程で木屑となって消えてしまうわけですから、贅沢と言えばこれほど贅沢な品物もありません。

蓋のほうは孔雀杢といっていい非常にみごとな杢の材ですが、実のほうはそれとは対照的に黒みのほとんどない白っぽい無地に近い材を使っています。両方ともいかにもな黒柿の材料ではちょっとくどい印象になるでしょう。また蓋の上面はほんのすこしですが凹状に削っています。箱ものだと真っ平らか膨らんでいるのがふつうですが、今回はあえてその逆のパターンとしました。見る向きによっては蓋に水がたまっているように見えると思います。

この品については当ブログの9月22日の記事でいちど簡単に写真のみ披露したのですが、じつは10月2〜3日に酒田市営体育館にて開催された「第42回酒田木製品コンクール」に出品する予定だったためです。審査対象のひとつでもあったので、事前にあまり種を明かすのはよくありませんからね。そのコンクールの結果等については明日またレポートします。

 当品はすでに売約済みです。専用木箱入れ・税込で92000円。同等の品物はあと数点は製作可能です。予約受付中。

 

ミゾソバ

 

つい先日、月光川本流の川沿いをすこし散歩しました。目的は別にあったのですが、そちらは空振り。しかし、かわりにたくさんの花を愛でることができました。中でもミゾソバ(溝蕎麦。タデ科)の花がたいへんきれいです。ありふれた「雑草」のひとつであり、花は平開しても6〜7mmほどの小さな花ですが、よくみればたいへん美しい花です。

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ミゾソバのほかに私がなんとかわかる花は、イヌタデ、オオイヌタデ、ツリフネソウ、ツユクサ、アキノノゲシ、ハッカ、ノコンギク、ミソハギ、アカバナ、サワヒヨドリ、ヤナギタデ、オオハンゴンソウ、イヌトウバナ、イモカタバミ、ブタナ、ゲンノショウコ、といったところです。

 

荒れる海

 

一昨日は用事があって秋田県にでかけたのですが、海岸よりの道を走っていると強風のためばかりではないと思いますが、日本海が大荒れに荒れ、かなり高い位置にある道路まで波しぶきが飛んでくるという状況でした。

先を急いでいたのですが、これも千載一遇と思い、パーキングに車を停めて20枚くらい写真を撮りました。波高は7〜8mほどありそうで、ときおり岩に当たってくだける波が爆発的なしぶきを上げます。雲間から海面にも断続的に日差しが当たっていたので、輝く海面と白濁し渦巻く海面とのコントラストは、おそろしさとともにたいへん美しくも感じられます。こういう光景を見ると心がさわぎます。

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コーヒーブレーク 61 「風切羽」

 

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すべすべの核弾頭の頭なめている

世界には現在約17000発の核兵器があるという。ロシアとアメリカでその9割を占めるが、その他に保有が確実な国あるいはその可能性が疑われる国はイギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルである。保有数の一位二位がロシアとアメリカであることは容易に想像できるが、では第三位はどこかというとなんとパキスタン。年間20発ほどの核弾頭を製造しているらしく、このままだと近い将来に世界第三位の核大国になるという。言うまでもなく背景には隣国インドとの確執がある。/また核爆弾の肝となるプルトニウムの保有量は日本が世界一であって、およそ45トン・核爆弾5000発分に達するとみられる。そのことが原子力発電が事故や被曝や不経済等の理由によって多くの反対を受けながらも、廃絶できないことの最大かつほんとうの理由であるとする見方がある。

たくさんの動物に見られ秋彼岸

年に2、3回は動物園に行く。たいていは秋田市の大森山動物園だが、水族館の動物もということであれば、男鹿水族館(GAO)やリニューアルされた鶴岡市の加茂水族館などである。獣や鳥や爬虫類・両生類・魚などを眺めながらのんびり散策するのは楽しい。ただ子供といっしょだと興味の観点がことなるので、気にいった動物をじっくりと心ゆくまで観察することができにくいのが難点である。/動物園は動物に対する一種の虐待であるという声がある。狭い園内と檻に閉じ込めて一生そこですごすことを強制するのはおかしい、かわいそうだと。たしかにその面は否定しがたいものがあるが、一般人が野生状態の動物にふれる機会などは実際にはほとんどないわけで、動物園や水族館などがなければ自然(の動物)がだいじであるといってもそれは頭の中だけでの観念的な産物にすぎなくなってしまうだろう。動物園はいまは単なる見世物小屋ではなく(それはずっと昔の話だ)、動物の生態や行動を観察・研究し、保護・増殖する重要な拠点にもなっている。

風切羽きれいに研いで秋つばめ

ツバメの数が少なくなった。秋になったからということもあるが、そもそもの飛来数が昔にくらべずいぶん減ったと思う。それは絶対数が減少しているということなのか、町場では営巣できるような建物などが少なくなった結果としてツバメが人の目につかなくなってきたということなのかはよく分からない。/私の木工房の作業場でも以前はよくツバメが中に入ってきた。天井が高く、屋根のトラス組の構造材がむき出しになっているので、ツバメが巣づくり子育てをするには絶好の場所なのだろう。しかし、基本的に日中しか人がおらず夜は閉め切ってしまうことと、材木はともかく機械や道具や加工中の部品や完成品に糞が落下付着したのではたいへん困る。それでツバメが入ってくるつどに長い棒を振り回すなどして追い出すのだが、向こうも場所的には非常に気にいっているとみえ、なかなか外に出ていかない。あきらめて外に出てくれるまでは帰宅もできないので、一人で仕事をするようになった10年くらい前からは入口の大きな引き戸はだいたい閉ざして仕事をするようにしている。ツバメの飛来する5月頃でもけっこう暑い日があるので、それはそれで困るのだが。

 

昇降盤ホゾ取り装置での駒の加工

 

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家具の部材のホゾは、通常の大きさと形であれば昇降丸鋸盤に付属している ホゾ取り装置で加工します。ただし専用のホゾ取り盤のように縦と横を同時にカットしたり勾配切りをするとか、ふつうの丸ノコ刃以外の特殊な形状の刃などを使うことはまず不可能で、縦挽用の刃で材料の長さ方向に切ることしかできません。懐もそれほど広くないので、幅広の材に太く長いホゾを付けるなども不可能です。それでも一本ずつ手作業でホゾを切っていくのに比べれば作業効率と加工精度は雲泥の差があります。

写真はテーブル類の甲板と脚部とを締結するための駒止用の駒のホゾ厚を切っているところです。幕板などに開けたホゾ穴の大きさは8mm幅だったのですが、ホゾ厚もまったく同じ8mmだときつすぎるので、0.1mm弱薄く微調整しているところです。

この駒は長さ80mmしかありませんので、駒を直接手で持って加工したのでは非常に危険です。そのため専用の自作のホルダーに駒を入れてトグルクランプでしっかり押さえながらカットしています。

刃はカネフサの径305mm、50枚刃、刃幅2.0mm、台金厚1.5mmという縦挽専用の刃ですが、通常のカタログには載っていない刃で、メーカーに電話して特別に分けてもらったものです。ただし購入はなじみの機械屋さんを通してのみ可です。