黒柿角形凹面被蓋くり物(くろがきかくがたおうめんかぶせぶたくりもの)と名付けた新作の小物です。大きさは152×106×35mmで、鏡面塗装で仕上げています。蓋も実も黒柿の厚板を掘り込んで作ったもので、このような技法でこしらえた木工品を「くり物」といいます(くるは掘るの意味ですが、私のパソコンのワープロでは漢字が出てきません)。
箱物によくあるような薄板を接合して箱にしたもの=指物、あるいは薄板を蒸したり炙ったりして湾曲させて作ったもの=曲物ではありませんので、材料もよけいに使いますし、手間ひまもかかります。しかしできあがりは木目が途切れることなく続いて美しく、木の塊という感じがするので実際以上に重厚感もあります。貴重な黒柿の材がほとんどは製作過程で木屑となって消えてしまうわけですから、贅沢と言えばこれほど贅沢な品物もありません。
蓋のほうは孔雀杢といっていい非常にみごとな杢の材ですが、実のほうはそれとは対照的に黒みのほとんどない白っぽい無地に近い材を使っています。両方ともいかにもな黒柿の材料ではちょっとくどい印象になるでしょう。また蓋の上面はほんのすこしですが凹状に削っています。箱ものだと真っ平らか膨らんでいるのがふつうですが、今回はあえてその逆のパターンとしました。見る向きによっては蓋に水がたまっているように見えると思います。
この品については当ブログの9月22日の記事でいちど簡単に写真のみ披露したのですが、じつは10月2〜3日に酒田市営体育館にて開催された「第42回酒田木製品コンクール」に出品する予定だったためです。審査対象のひとつでもあったので、事前にあまり種を明かすのはよくありませんからね。そのコンクールの結果等については明日またレポートします。
※ 当品はすでに売約済みです。専用木箱入れ・税込で92000円。同等の品物はあと数点は製作可能です。予約受付中。