当工房では家具等の組み立てに通しホゾを採用することが多いのですが、ホゾの先端(頭)が接合相手の部材の表面に出てきます。これをきれいに仕上げる方法としていちばんスタンダードな方法を紹介します。
1枚目の写真はスツールの幕板のホゾが脚の表に出ているのをノコギリでカットしているところです。ホゾの頭を相手部材の表面と同じ高さにそろえる(面一にする)こともありますが、可能であればホゾの先端を少しだけですが出るようにします。これはほとんどの場合、ホゾと相手部材とは繊維方向が90度くらい異なるのが通例で、そのためにたとえ充分に乾燥した材料であっても経年変化や温度・湿度の影響により、段差が生ずることがよくあるからです。面一に仕上げたはずのホゾの頭が、いつの間に突き出すとか逆に凹んだりするわけです。これは見た目にきれいではありませんし、接合強度の低下にもつながります。
そこで最初から数ミリ程度ホゾのほうを長く仕上げておきます。こうしておけば部材の拡張収縮が多少あっても見た目にはまず分かりませんし、強度の低下を防ぐこともできます。ただしその分、また手間が増えてしまいます。
実際どのくらい長くしておくかですが、製品全体のボリュームとか部材の寸法とかによって異なるとはいえ、家具の場合はたいてい1〜3mm程度です。あまり長いと身体や衣類などが引っかかってしまうなど邪魔になることもありますし、見た目にもうるさい感じになることがあります。過ぎたれば及ばざるが如し、ですかね。
上の例では1.5mm出の仕上げです。しかしながらいくつもあるホゾの頭をきっちり同じ長さに仕上げるのは意外に難しいので、厚さ1.6mmのヒノキの薄板をホゾの周囲に「貼ってはがせる」両面テープで貼付け、それをガイドにして目の細かいノコギリでホゾを切り落とします。ノコギリは背金のある替刃式8寸目の薄手のノコギリを、背金だけ寸詰めにして刃のほうを若干反らせるようにして切っています。目の粗い、また切れ味のわるいノコで切るとホゾの角が折れてしまうので要注意です。
2枚目の写真はノコギリで切り落としたホゾの木口を、やはりヒノキの薄板をガイドにしてノミできれいに整えているところ。材料はアメリカン-ブラック-ウォールナットで比較的刃の通りはいいほうですが、よく切れるノミで慎重にやらないとやはりホゾの角が欠けてしまったりします。基本的には2方向から少しずつ削ったほうが安全でしょう。
3枚目の写真はヒノキの薄板を外し、さらにホゾの頭の四周をノミで面取りしたところです。面の大きさは見付きで1mm。ホゾの頭は最終的にはサンディングペーパーをかけて完全に平滑になるようにします。ホゾの出が1.5mm仕上なのにガイドの薄板が厚さ1.6mmだったのは、それを見込んでのことでした。