銃床を荼毘に投げ入れカラシニコフ
世界でもっとも多くの人を殺傷した軽火器はAK47である。旧ソ〜ロシアの軍人・銃器設計者ミハイル-カラシニコフの設計になる1947年式カラシニコフ自動小銃は、故障しにくく手入れがしやすいことなどから圧倒的な支持を集め、世界中で約2億丁も生産されたという。そのカラシニコフは病気のために昨年12月23日に94歳で亡くなった。/銃床(じゅうしょう)は銃身を支えるもので、ふつうは木製でできている。この木をクルミ製と説明されることが多いが、それは粘りがあって木目が緻密、重さは中庸で、見栄えがするからだ。もちろんクルミといってもいろいろで、量産型の銃には比較的値段が安く加工しやすいアメリカン-ブラック-ウォールナット、高級品・限定生産品にはヨーロピアン-ウォールナットの一種であるイングリッシュ-ウォールナットが使われるとか。もっともイングリッシュ-ウォールナットといっても英国産のクルミというわけではなく(かつてはそうだったのだろうが)、現在はトルコ産だそうである。/超高級家具材として木工家にはよく知られているクラロ-ウォールナットはヨーロピアン-ウォールナットにアメリカン-ブラック-ウォールナットを接木したもので、生体的な拒絶反応によって非常に細かい独特な杢目を生ずる。ロールスロイスやジャガーなどの高級車のダッシュボードに使われることもあるが、杢があまりにも複雑に入り組んでいるので「実用的な道具」としての銃床には向かないだろう。
地吹雪や村落みな吹き寄せ来
ここ山形県庄内地方は地吹雪の名所である。海沿いに低い砂丘が連なっているとはいえ、日本海を渡ってきた北風がほとんどなにものにもさえぎられることなく吹き付ける。一度降って積もった新雪が烈風に巻き上げられて横向きに飛び荒ぶのである。空はさほど曇ってはいないのに、ときには晴れ間すら垣間見えるのに、地面に近い2mくらいまでの高さの空間だけが猛烈な吹雪でまったく視界がきかないということが珍しくない。ホワイトアウトである。そんなときは平野のあちこちに点在する集落が、まるで土地から切り離され浮遊するように見えることがある。
獅子頭コガネキクイムシに食われおり
キクイムシニ(木喰い虫)は文字通り木材を食べる昆虫の総称で、広義にはカブトムシの仲間。大きさは1〜数ミリ程度で、木材に穴を穿ち生活するのでそれに適応した円筒形の形をしている。日本産のキクイムシだけでも300種以上にのぼるが、コガネキクイムシもその仲間。獅子頭はケヤキ材を彫刻して製作されることが多いが、ケヤキヒラタキクイムシというケヤキ材を好んで食するものもいるという。まさに獅子身中の虫である。/また興味深いのはアンブロシアビートルと呼ばれる養菌性の一群があり、材中に開けた坑道に自ら植え付けたアンブロシアという共生菌だけを食べて生きるキクイムシがいることである。/昔は建築材や家具材にフタバガキ科の樹木の俗称であるラワン材がよく使われたが、このラワン材にはしばしばヒラタキクイムシが付いて材を食い荒らす被害があり大問題となった。そのためと現地東南アジアでの資源の枯渇との理由でいまはあまりラワン材は使わなくなったし、使う場合でも必ず防虫処理が施されている。