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庭の花 2

 

いまわが家の庭に咲いている花の第二弾です。くまなく紹介というよりは、名前を忘れがちなものや自分にとって意外性があるものを、備忘録的にピックアップしています。

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ポーチュラカ(スベリヒユ科) これは園芸花。スベリヒユの仲間だが、花は大きく径20〜25mmほど。一日花であるが、炎天下につぎつぎ開花中。

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アカバナ(アカバナ科) 誰も植えた覚えはないのに、高さ20cmほどの一株だけが生えている。先が割れた十字形の花弁がおもしろい。名前は葉が赤く紅葉することによる。

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トキンソウ(キク科) 頭花は直径3〜4mm。舌状花はなく筒状花も目立たず、ただの丸い玉のように見える。地面にはいつくばるように生える1年草で草丈2cmほど。これがキク科の花とはちょっと思えない印象。

 

撮影はむずかしい

 

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27日に発売開始したペーパーウェイトDタイプですが、ブログの「オンライン販売」のページではデータ量制限の関係で画像が粗くなっています。実物の透明感のある立体的な杢の表情は、あれではよくわかりません。お客様からも「もっと詳細な写真を」というご希望があって、あらためて個別に撮影をしメールで添付画像として送ることもあります。

しかしそれでも杢のほんとうの魅力はうまく伝えることができません。もちろん安価なコンパクトデジカメや間に合わせの撮影環境、それにテクニックもともなわないからですが、それらをアップグレードするにはかなりのコストがかかるので、いまのところは半分諦めの境地です。せめてもうちょっとましなカメラがほしいですなあ。

 

裏山の…

裏山の…

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知人でも友人でもありませんが、新しい家のすぐ後ろの山がどんどん削り取られています。ほんとに大丈夫なんでしょうか?

 

ペーパーウェイトDタイプ60本、発売開始

 

ペーパーウェイトDタイプ60本、本日午前7時をもって正式に発売開始しました。材種は7種類で、タモ波杢×16、ウォールナット変杢×9、クリ縮杢×6、黒柿×10、黒柿変杢(スポルト)×3、セン縮杢×12、神代ナラ(埋もれ木)×4です。

ウォールナットとクリ、黒柿スポルト、神代ナラはこれまでのラインナップにはなかった新しい材料です。通し番号は161〜220番までで、それぞれのペーパーウェイトの底面に工房名・通し番号・材種をバーニングペンで焼き入れしています。

基本的な形やサイズはこれまでとほぼ同じですが、中に入れたステンレススチールの丸棒の封入の仕方を変更しました。おそらくその方法(ノウハウ)を知っていてそのつもりで凝視してもまずわからないくらいに巧妙な仕掛けになっているはずです。

今日の発売開始よりだいぶ以前から予約や仮注文をいただいている方も数名おり、すでに品物を発送したものもあります。発売と同時にブログの「オンライン販売」のページで「売り切れ」表示が付いているものが少なくないのはそのため。以降の販売は正式受注の先着順(日時分秒)ですので、みなさまどうかご高覧のほど、よろしくお願いいたします。なお、これまで当工房とお取り引きの実績がある方には、できるかぎり値引きをさせていただきます。

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ペーパーウェイトの発売準備中

 

ペーパーウェイトが60本完成しました。包装用パッケージも用意し個々の撮影も終わりましたが、当ブログの「オンライン販売」に決定稿をアップするのはもうすこしかかります。いちばんの悩みはやはり値段の設定ですね。

これまでは同一材種のペーパーウェイトは基本的に同一の値段にしていたのですが、それだと当然ながら欠点がなく杢がきれいに出ているものが先に売れてしまいます。同じ値段なのに後になるほど「売れ残り感」がどうしてもつのってしまい、不公平感を口にされる方もいらっしゃいました。

そこで今回は個別に値段を設定することにしたのですが、虫穴の跡や細かな傷や染みといった明らかなマイナスはともかく、それ以外のものについては結局各人の好みに左右されます。そこで私自身の嗜好はできるだけ排し、1)杢がより細密で整然としているもの、2)材料の値段や入手の難易度等によって決定することにしました。とはいえ、それでも依然としておおいに悩み中です。

たぶん来週中には発売開始できると思いますので、いましばらくお待ちください。なお先にお問い合わせや仮注文をいただいている方には、ブログにアップする(値段表示をする)日時が決定しだい連絡いたしますので、ご高覧のほどよろしくお願いいたします。

下の写真は今回発売予定のペーパーウェイトの一部です。いずれもよりすぐりの逸品。

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コーヒーブレーク 55 「蘚苔類図鑑」

 

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雨だれの那由他不可思議無量大数なり

わが国では数の単位は4桁ごとに名称が変わっていく。すなわち万の次は億でその次は兆。ここまでは普通に使われているが、その次の京(けい)となるとすこしあやしくなってくる。京は10の16乗。つまり1京は1の後に0が16個連なるわけだ。京よりさらに大きな数を順にあげると、垓(がい)、(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(こうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、無量大数(むりょうたいすう)で、最後の無量大数は10の68乗だ。それぞれの単位が興味深いが、なんといって恒河沙以降の阿僧祇・那由他・不可思議・無量大数がじつにいい。無量にして大いなる数であるとは、これはまさしく哲学であり宇宙の真理ですね。

 はさみいる蛇の衣や蘚苔類図鑑

コケとふつう呼ばれる植物は、分類的には蘚類(せんるい)・苔類(たいるい)・つのごけ類の3群に大別される。ただし、つのごけの仲間はかなり小世帯なので、「蘚苔類」でコケ全体を指すことが一般的である。/顕花植物とちがって蘚苔類は基本的に非常に地味であるが、そこがまた魅力的と思う人もいる。日本国内ですらまだ調べ尽くされているとはいえず、本格的に探求すれば新種発見も夢ではなさそうだが、種の同定には細胞を顕微鏡で調べる必要があるなどの場合も珍しくないようだ。やはり素人にはかなり高いハードルである。

永き日の背丈ややにのびて山と山

夏至は過ぎてしまったものの、依然として日は長い。午後7時を過ぎても空はまだ明るい。冬場の、3時の休憩を終わる頃にはすでに夕闇が迫ってくるのとはえらい違いである。/日が長いと、山や海や川、岩といった自然物さえもなにかゆったりとおおらかに大きく見えてくる。むろんそれは錯覚なのだが、動物たる人間は結局のところ純粋客観的に世界をとらえることはできず、いつも己の心情にそった主観でしかものを見ることはできないようである。

 

シテ句会 2015.7.15

 

7月15日に恒例のシテ句会を開催しました。『シテ』は現代詩や俳句や短歌といった短詩型文学の作品発表&批評を目的とする同人誌ですが、現在7号の発刊を間近にしています。シテ句会はシテ本体の活動とはやや趣旨を異にするもので、シテの会員のなかからの希望者、それから外部からの参加者によって行われるものです。原則として奇数月の第三水曜日に、酒田駅近くのアングラーズカフェというお店で開催しています(次回は9月16日に開く予定ですので、ご興味のあるかたはぜひご参集ください)。

さて7月15日の句会ですが、参加者は相蘇清太郎・伊藤志郎・今井富世・大江進・大場昭子・齋藤豊司・南悠一の7名でした。事前に2句を無記名で投句し、当日は清記された2枚の句群(第一幕・第二幕)のなかから2句ずつ選出。取った弁、取らなかった弁を一通り披瀝したあとに初めて作者が明かされます。これは先入観を排し忌憚のない批評を行うためです。他の句会でもだいたい同じようなスタイルで句会が開かれていると思いますが、昔からの経験則にもとづいたたいへんよくできた仕掛けですね。

以下は当句会で主宰をつとめる私=大江進からみての講評です。辛口ご免。異論反論はどうぞ遠慮なくお願いします。では第一幕から。

0  じゃがいもの花はドレスに実は馬車に
2  飛魚とんで水平線の裏を見ゆ
2  離岸堤そこまではゆけない五月
3  暗闇とじゃんけんぽん夏木霊
3  痩せ蜘蛛のにじり寄りたり五月蠅
1  渓谷を攫ふごとくの青嵐
3  紫陽花や素知らぬ振りはできません

得点はばらけました。最高点3点句は3つあります。<暗闇と〜>はおもしろい句です。私も取りました。夕まぐれに子供が魑魅魍魎かなにかを相手に大きな声でじゃんけんをしているのでしょうか。子供には見えていても大人にはその相手の姿は見えないのか、と想像すればすこし怖い雰囲気もあります。ただこだま(木霊)は一年中あるもので季語ではありませんので、「夏+木霊」で季節感を表すのはやや強引な手法かなと感じます。もっと別の言葉で季節感を出せないでしょうか。作者は齋藤豊司さん。

3点句の二つ目は<痩せ蜘蛛の〜>ですが、下五の五月蠅(さつきばえ)はこれだけで「うるさい」とも読みますし、蜘蛛も蠅もそれのみで夏の季語なので、どうしてもごたごたした感じがします。痩せ蜘蛛は身体形状が細身の蜘蛛ということで、べつに飢えているということではないでしょうから、うるさいくらいに飛び交う蠅との相性もどうでしょうか。私も取ったんですけどね。作者は今井富世さん。

三つ目の3点句は<紫陽花や〜>。中七と下五が意味深な口語ですが、それと紫陽花との取り合わせはどうですかね? 紫陽花は七変化ともいうように心変わりといった心の移ろいや不確かさを意味することが多い花なので、素知らぬふりはできないという心情とはむしろうらはら。たまたま紫陽花があちらこちらにたくさん咲いていたとしても、もっと適切な季語がほしいところです。作者は相蘇清太郎さん。

次点2点句はふたつ。最初の<飛魚とんで〜>の、飛魚は「あご」と読みます。当地だけの呼称かと思っていたのですが、そうではなくて日本海側から九州にかけてふつうにそう呼ばれているとのこと。飛魚は100m以上も滑空するそうなので(大型の飛魚だと600mとも)、水平線とはいわずともかなり遠くまで見ながら空をとんでいることになります。水平線の先まで、といった表現はよくありますが、それでは常套的すぎるので、あえて水平線の「裏」とすることで多義的な世界を出しています。ただ最後の「見ゆ」は文語文法的には誤っているのではという意見も強くありました。作者は私です。

ふたつめの2点句<離岸堤〜>ですが、五月に対する一般的な向日的イメージと、そこまではいけないという諦観や悔悟の想いとは、やはり合わないと思うのですが。離岸堤というやや特異なものをもってきただけに、よけいそんな気がします。事実として五月だったのかもしれませんが、第三者たる読者にはそういった事情はまったくわかりませんから。作者は南悠一さん。

1点句の<渓谷を〜>は、青嵐が渓谷という大きなものを攫うということで、雄大といえばたしかに雄大ですが、観念が先走ってしまっていて実がともなわないと思います。むろん文学ですから現実にはありえないことでもなんでも表現していっこうにかまわないのですが、すくなくともその世界の中ではリアリティがないといけないでしょう。表記的には「攫ふごとくの」ではなくて「攫うがごとく」ですね。作者は大場昭子さん。

1句目の<じゃがいもの〜>は点が入りませんでした。カボチャではなくジャガイモですが、どうしたってシンデレラのようなおとぎ話を連想してしまいます。その先がないので、読者としてはちょっと、「それだけ?」ですかね。作者は伊藤志郎さん。

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さて第二幕です。こちらは点がわりあい収斂しました。

3  風走る風また風や青芒
1  立尿スミレ紫ちょいと除け
1  園の声大紫陽花を超えて来る
6  にんげんの着ぐるみをきて極暑
3  十薬の真すぐの蕊無口なり
0  七月の空の青さを憶えてる
0  知命なり夏三陸の朋の死知る

最高点は6点の<にんげんの〜>です。このところ35℃をこえるような猛暑が日がありますが、着ぐるみなど着ていたらそれこそ炎熱地獄でしょう。着ぐるみを着ているのはもちろん人間自身。だからこそよけい暑いのでしょうし、着ぐるみは着ぐるみそのもの以外の、人間がまとっている諸々のもの=面子・見栄・建前・沽券・嘘・作為等をも意味しています。作者は私です。

次点3点句はふたつ。初めの<風走る〜>は吹き抜ける強い風とそれに大きく揺れるまだ青い芒のようすがよくわかります。中七が「風また風や」と、上五と併せて三重にたたみかけているのですが、効果的ともいえますし、逆にそれで言葉を消費しきってしまわず、具体的な景を入れればもっとイメージが鮮明になるのでは、という意見もありました。私も取った句ですが、たしかにそうかもしれません。リフレーンはうまく使わないと安直・安易とのそしりをまぬがれかねませんね。作者は伊藤志郎さん。

ふたつめの3点句は<十薬の〜>は、4枚の総包片が白く目立つのと、そこから雄しべと雌しべのみからなる淡黄色の花穂がまっすぐに上に突き出ている様子は印象的。とはいえ派手なイメージはなく、日陰や半日陰に咲くことが多いことから「無口なり」ととらえた点はいいと思います。しかしこのままでは「無口なり」がすこし唐突な感じもしますので、いっそのこと「蕊真すぐなり無口なり」と強く言い切るという手もありそうです。作者は大場昭子さん。

1点句の<立尿〜>は「たちいばり」と読みますが、基本的に男性諸氏の所作ですね。草葉の蔭で小用を足そうとしたら足元に紫色のスミレが咲いていたので、それをちょっとよけて放出したという図。よくわかるのですが、やっぱり俗にすぎるでしょうね。作者は今井富世さん。もう一つの1点句<園の声〜>は紫陽花が大紫陽花であることで救われたと思います。紫陽花では当たり前すぎるので。ただ「超えて」は「越えて」か「こえて」でしょう。作者は相蘇清太郎さん。

<七月の〜>は第一幕の<離岸堤〜>の句と同様に、なぜそれが七月なのか(五月なのか)、読者には見当がつかないのでスルーされてしまいますね。青空のイメージにそぐわないような月をもってくれば、そこでひっかかってくれるんでしょうが。作者は南悠一さん。

<知命なり〜>の句はやはり第一幕の<暗闇と〜>と同じく「夏+三陸」(夏+木霊)がどうも私は釈然としません。例えば秋の季語と通常されている月に「冬の月」として冬期の季語として使うのはわかるのですが、なんでもかんでも夏を付ければ夏の季語となるというものではないでしょう。季語を絶対視するつもりはありませんが、ある言葉が季語とされたことにはやはりそれだけの経緯や理由はあるわけで、それを尊重はしたいと私は考えています。作者は齋藤豊司さん。

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今回も参加者が7名と比較的少なそうだということで、前回と同様に、作句するうえで参考になりそうな句を3句、事前に私が選んでおいて当日の句会がひととおり終わった後にそれを紹介し、皆さんに観賞してもらいました。

土よりもすこしあかるく雉あゆむ    川嶋一美
上のとんぼ下のとんぼと入れかはる   上田真治
夏蝶の踏みたる花のしづみけり     村上鞆彦

いずれも比較的若い俳人で、挙句も新しい句です。いちおうは客観的な写生の句ですが、たいへん微細なところをついています。川嶋さんの<土よりも〜>は、一見したところ茶褐色の雉の体色が、樹下薮下の地面の色よりもわずかに明るいということを詠んでいるだけのようですが、しかしそれだけではないでしょう。走っているのではなく歩んでいる、しかも明るいということは雉が平穏な状態にあり、生気にあふれていることがうかがえます。雉は人里に近い林間に棲息しているので、人が安全圏より近づくといきなり遁走するので人のほうもびっくりしてしまいますが、そうした出会いではないところの普段のようすを作者は想像している、あるいはひそかに観察していると思われ、雉に対する作者の親しみがわかります。

2句目。上田さんの俳句信条などについては私は意見を異にする面が多いのですが、句はときおりはっとするような鋭さを持っています。ただし川嶋さんの句と同様に、表面的にはたわいのないありふれた光景を詠んでいるように思われがちなので注意が必要です。この<上のとんぼ〜>も上下が入れ替わると表することで、空一杯に広がる無数のトンボが想起できます。私の子供の頃にはそれこそしごくありふれた光景だったのですが、今はそれほどの景にはまずお目にかかることができません。トンボは空中浮遊して遊んでいるのではなく、蚊などの小さな虫を補食するために飛んでいるので、餌を見つけるとすかさず位置をかえて寄っていきます。つまり実はけっしてのどかな景ではなく厳しい生存競争のうちにあるわけですね。

村上さんの<夏蝶の〜>はこれまたじつにみごとな句です。夏蝶ですから揚羽蝶などの大型の蝶を俳句では意味するのですが、それでも通常は蝶の重さ=体重などを意識することはありません。それを詠んだ句にも出会ったことは私はありません。けれどもどんな小さな生き物にも重さはとうぜんあるわけで、そのことを「踏む」「沈む」という言葉で的確に表現しています。蝶が花に止まって、触れてといった句ならいやというほど目にしますが、踏んでとは驚くべき発見です。

以上3句ともまさしく「細部に神は宿る」というフレーズが口をついて出るような佳句です。「新しい句」を標榜するときに、とかくスタイルの新奇さや一般的とはいいがたい変わった語句が用いられる傾向があります。たしかにそれもひとつの方法でしょうが、半面非常に安直な手法ともいえます。定型のスタイルとごくふつうの言葉でも、じゅんぶんに「新しい句」を成すことができることを上の3句は実証しています。

 

鉋の刃研ぎ

 

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塗装の間の乾燥を待っている時間を利用して、ノミ9本、鉋8枚の刃を研ぎました。刃こぼれなどはなく切れが鈍くなったものの研ぎ直しなので1時間半程度の所用時間です。上の写真はその一部分で、ともに48mmの平鉋の穂(主刃)です。左が「甚作」で1989年以来25年ばかり使っている刃、右は「兼友」で昨年から使用している刃です。甚作も最初は兼友と同じくらいの長さがあったはずですが、たぶん1000回以上も研いでいるうちにここまで短くなってしまいました。

当工房では仕上砥石は京都産の天然の砥石を使っているのですが、それで刃物を研ぐと地金の部分は曇った灰色に、鋼の部分は光沢のある銀色(光の加減では黒色)と、くっきりと分かれて見えます。人工の砥石ではこれほどの差はつきません。正確に平滑に研いであれば地金はむらのない灰色一色になるので、これはたいへん美しいです。切れ味も人工砥石より一段上と感じますが、研いだときの見栄えのよさも天然砥石の人気の理由です。

天然砥石を用いてきれいに研ぐと光が乱反射しないので、ぎらぎら輝くようにはなりません。したがって一見あまり鋭い刃がついているようには見えないのですが、これは実際には逆です。写真でも、まだ荒研ぎしかしておらずこれから刃をつけるように思ってしまいますが、これで充分仕上がっています。

ついでに述べると、私は「削ろう会」といった材木の薄削りを競うようなイベントにはまったく興味がありません。そこでの上位者は数ミクロンの削り屑を出すようですが、私でも普段使っている鉋でいつも通りに研いで削っても10ミクロン程度の削りはできます。つまりプロならばそういう薄削りはさほど難しい話ではありません。

しかし実際の仕事では、鉋盤で削ったナイフマークを落とすとか、加工中の細かな傷や汚れ・鉛筆の跡を落とすなどの目的で鉋を用いるので、数ミクロンではなくむしろ20〜50ミクロンくらいの削りをいかにコンスタントにできるかこそが大事なのです。30ミクロンで一度削ればいいところを3ミクロンで10回も削っていたのでは仕事になりません。まあ遊びで薄削りを楽しむには勝手ですが、それを吹聴されるのはね。

 

三崎の海浜植物

 

秋田県と山形県の県境で、日本海に向かって鳥海山の溶岩が突き出しているところが三崎公園です。ここは昔からの海浜植物が多くそのままに保たれています。急な撮影だったので、漏れているものも少なくありませんが(トビシマカンゾウ、ヤマユリ、カワラナデシコ、アキカラマツ、ハマエンドウ等)、乾燥や直射日光や潮風といった極度にきびしい環境に生きている草花のいくつかを紹介します。

特筆すべきはこれらの海浜植物も「鳥海山の花」であって、ひとつの山で海浜植物から里の植物、高山植物までを連続的に観察できるのは非常に珍しいということです。山の花というととかく高山植物だけにスポットライトが当てられるきらいがありますが、海浜植物と高山植物は過酷な自然環境に生きているためか、多肉質であるとか背丈が低くコンパクトであるなど、姿形にも多くの共通項があります。

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イワベンケイ(ベンケイソウ科)

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オグルマ(キク科)

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クルマバナ(シソ科)

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スカシユリ(ユリ科)

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ツリガネニンジン(キキョウ科)

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ミヤコグサ(マメ科)

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ハマボウフウ(セリ科)

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ハマボッス(サクラソウ科)

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ヤマハッカ(シソ科)

 

ペーパーウェイトのナンバリング

 

製作中のペーパーウェイトDtypeですが、1回目の下塗り(サンディングシーラー)を終えたところで研磨と、底面に工房名・通し番号・材種をバーニングペンで記しました。これまでとは製造方法をすこし変えた関係で、打撃での刻印は難しくなったのと、やはり材種名が後々までわかったほうがよかろうというのがその理由です。

ただ木は当然ながら圴一の素材ではありませんので、年輪などの若干の凹凸がありますし熱の伝わり方も部分によって異なるので、なかなかきれいには焼けて(焦げて)くれません。思いのほか時間もかかります。

1枚目の写真は手前が神代ナラ、後ろがウォールナット変杢です。大きさがずいぶん異なるように見えますが、近接撮影しているせいで、実際には同一寸法。2枚目の写真は3回目の下塗りを終えたところのもので、手前の列がウォールナットとクリ、向こうが黒柿のスポルトとセンの縮杢です。

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