鉋の刃研ぎ

 

DSCN4810_2

 

塗装の間の乾燥を待っている時間を利用して、ノミ9本、鉋8枚の刃を研ぎました。刃こぼれなどはなく切れが鈍くなったものの研ぎ直しなので1時間半程度の所用時間です。上の写真はその一部分で、ともに48mmの平鉋の穂(主刃)です。左が「甚作」で1989年以来25年ばかり使っている刃、右は「兼友」で昨年から使用している刃です。甚作も最初は兼友と同じくらいの長さがあったはずですが、たぶん1000回以上も研いでいるうちにここまで短くなってしまいました。

当工房では仕上砥石は京都産の天然の砥石を使っているのですが、それで刃物を研ぐと地金の部分は曇った灰色に、鋼の部分は光沢のある銀色(光の加減では黒色)と、くっきりと分かれて見えます。人工の砥石ではこれほどの差はつきません。正確に平滑に研いであれば地金はむらのない灰色一色になるので、これはたいへん美しいです。切れ味も人工砥石より一段上と感じますが、研いだときの見栄えのよさも天然砥石の人気の理由です。

天然砥石を用いてきれいに研ぐと光が乱反射しないので、ぎらぎら輝くようにはなりません。したがって一見あまり鋭い刃がついているようには見えないのですが、これは実際には逆です。写真でも、まだ荒研ぎしかしておらずこれから刃をつけるように思ってしまいますが、これで充分仕上がっています。

ついでに述べると、私は「削ろう会」といった材木の薄削りを競うようなイベントにはまったく興味がありません。そこでの上位者は数ミクロンの削り屑を出すようですが、私でも普段使っている鉋でいつも通りに研いで削っても10ミクロン程度の削りはできます。つまりプロならばそういう薄削りはさほど難しい話ではありません。

しかし実際の仕事では、鉋盤で削ったナイフマークを落とすとか、加工中の細かな傷や汚れ・鉛筆の跡を落とすなどの目的で鉋を用いるので、数ミクロンではなくむしろ20〜50ミクロンくらいの削りをいかにコンスタントにできるかこそが大事なのです。30ミクロンで一度削ればいいところを3ミクロンで10回も削っていたのでは仕事になりません。まあ遊びで薄削りを楽しむには勝手ですが、それを吹聴されるのはね。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA