コーヒーブレーク 87 「安息角」

 

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秋めくや山の安息角三十五度

[あきめくや やまのあんそくかく さんじゅうごど] 安息角とは土や砂などの堆積物が崩れないで自立的に安定しているときの最大角度のことをいい、一般に自然の地面では35度くらいといわれている。がっちり固まった巨大な一枚岩であるとか、粘土質などの場合はもっと急勾配になることもあるが、それはあくまで部分的であり例外的。巨視的に眺めてみれば、急斜面といってもほとんどは35度程度にすぎない。鳥海山のような火山の場合は溶岩流や火山灰や岩屑流などが数十万年といった長い年月の間に数えきれないほど何度も積み重なったできたものなので、頂上付近の急斜面でも遠く離れて眺めるとたしかに35度くらいであることが分かる。

十三夜のような網膜剥離のような

[じゅうさんやのような もうまくはくりのような] もう十数年前のことになるが、私は右目に視野の以上を感じたことがあって、眼科医にいったところ網膜剥離のおそれがあるということで、大きな病院での検査をすすめられたことがある。検査の結果、網膜穿孔、つまり網膜の一部に小さな穴が開いてそこから眼球内に侵出物がわずかだが出ている状態だとのこと。そのままにしておくと失明のおそれもあるということで、即日レーザーを使ってその穴を塞ぐことになった。/瞳を大きく開いた状態にする点眼薬を投じ、ついで手術用の特殊なコンタクトレンズをはめてそれからレーザーを当てるのだが、「まぶしくとも絶対に目をとじたりまたたいてはいけない」と厳命されての手術はひどく緊張した。たぶん時間的には2、3分程度のものだったと思うが、「終わりましたよ。確認します」と医師に告げられて気が抜けたとたんに、椅子の上で前のめりに失神したことがある。

ひだひだの茸の空の広ごりぬ

[ひだひだの きのこのそらの ひろごりぬ] 山菜採りは私はまずやらない。茸も採らない。そういうものを採らなくとも野菜などは簡単に入手できる(妻の実家からもらうことが多い)からという実際的な理由もあるが、レジャーで自然の植物を採って食うということに対して、いうなれば罪悪感や羞恥心みたいなものが私にはある。とくに春先に山中で目当ての山菜を採らんがために、萌え出した他の植物を平気で踏んづけていく人たちに出会うとそれを強く感じる。急斜面の土壌は非常に薄くもろいので、早春の場合はとくに人が上り下りするだけでかなりダメージを受けるはずである。文字通りに「生きる」ために野山のものを採る(穫る)のはそれはしかたがない。しかし単なる娯楽で採る(穫る)のはよほど慎重にしないとね。

 

ハードメープル変杢多角形被蓋刳物

 

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通称ハードメープルといわれる北米産のカエデ材で、五角形から八角形までの被蓋刳物(かぶせぶたくりもの)を作りました。皺または布状の複雑な杢が生じているもので、英語ではこういった杢の材料をキルテッド◯◯と呼んでいます。キルト→キルテッドですね。ハードメープルにはいくつかのカエデ類が含まれますが、今回の材料はおそらくはシュガーメープル(サトウカエデ)だろうと思います。

一枚の長い板から蓋も実も連続的に木取したので、大きさと杢の雰囲気はみなそろっています。大きさは基準径で190mmです。板幅は25cmくらいあったのですが、年輪がほぼ中央に来るようにしました。写真では上方の五角形と六角形のものが若干小さいように見えますが、実際には基本的には同一のサイズです。仕上げは3分艶(7分艶消し)塗装。

いずれも11月2〜8日の個展(酒田市の清水屋デパートの4F画廊)に出す予定のものですが、開催まであと2ヶ月を切ってしまいました。もうすこし製作しないといけません。

 

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No.533 ハードメープル変杢五角形被蓋刳物 サイズは径約190mm、高さ36mm、実の深さ21mm=他の3点も同じ。蓋に1カ所だけごく小さな入り皮(成長途中で樹皮が傷や異物などを内部に取り込んで木質の一部となってしまったもの)あり。

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No.534 ハードメープル変杢六角形被蓋刳物

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No.535 ハードメープル変杢七角形被蓋刳物 七角形はどことなく不安定な形に見える。五角形なども同じく奇数角なのにどうしてだろうか。実際世の中には七角形の箱や器類は極端に少ない。360度を7では割り切れない(51.42857……)ので作図が面倒なことも一因か。

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No.536 ハードメープル変杢八角形被蓋刳物 八角形はやはり安定した形である。円形とは異なることが一目で分かり、かつ円形に近い形なので外形寸法に対し内部の有効面積が大きいのも特徴。もっと角数が多いと、丸だか角だか分からない中途半端な形に見えるかもしれない。

 

鳥海山・飛島ジオパーク、認定!

 

鳥海山・飛島ジオパーク、本日認定!(写真は「鳥海山・飛島ジオパーク構想」のHPから拝借しました)。とりあえずはお知らせまで。

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アマガエルとサボテン

 

わが家の玄関先にはサボテンを鉢植えにしたものがいくつか置いてあるのですが、そのうちのひとつ柱サボテンのてっぺんになんとアマガエルが乗っていました。おそらく壁伝いに登ってきて、途中でサボテンの上に跳び移ったと思うのですが、どうみても柔らかそうな皮膚にサボテンの刺はだいじょうぶなんでしょうか? 撮影が終わったら、なにごともなかったように背後の壁に跳んでいきましたけどね。

体色がふつうのアマガエルとはちがってライトグレーになっていますが、建物の外壁の色に合わせてカモフラージュしているのではないかと思います。

そういえばサボテンの原産地である北アメリカの沙漠で、高さ10mはある巨大な柱サボテン(たぶん弁慶柱)のてっぺんにヤマネコが乗っている写真をみたことがあります。するどい刺がびっしり生えているのに、どうやってそこまで登ったんでしょうか。謎です。

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パノラマ写真

 

9月3日のジオガイド上級講座の酒田エリアのフィールドワーク用にこしらえたパノラマ写真(のようなもの)です。鳥海山の南面、標高530mほどのところにある鳥海山荘から東〜南西方向を眺めたものです。コンパクトデジカメで手持ちで撮った写真7枚をA4サイズでプリントし、それを継ぎはぎしてA4サイズ5枚弱にまとめたものです。東のキスカス(切透山)から、南の胎蔵山・月山、南西の温海岳?・粟島あたりまで入っています。

月山などは誰が見てもそれとすぐにわかると思いますが。その他の山はなかなか判別が難しいです。現地でもある程度は見当をつけてはいたのですが、自宅に帰ってから地図と写真とを首っぴきで見比べながら特定していきました。地形図をもとに、この山をこの方向から眺めたらこう見えるはずという検討を重ねていくのですが、肝心のところが写真から外れており決め手に欠けるものもあります。

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ハードメープルの刳物製作中

 

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11/2〜8の個展に出す予定のものですが、ハードメープルを素材とした刳物(くりもの)を4個製作中です。写真は蓋の基本加工=掘り込みと成形が終わったところです。杢がうきたつように撮影ではすこし表面を水で濡らしています。大きさはいずれも径19cmほどの五角形・六角形・七角形・八角形で、一枚の板から連続的に木取しています。

ハードメープルは材木・木工業界の通称ですが、北米産のカエデ類のなかで比較的硬めのカエデの仲間をまとめてそう呼んでいます。対して比較的軽軟なカエデ類はソフトメープルです。もちろんいずれも樹種はいくつかあるのですが、材木としての見栄えや品質は見分けがつかないくらいに似ているので便宜的にハードメープル、ソフトメープルとされているというわけです。

ハードメープルはその名のとおりかなり硬い木で、しかも散孔材で緻密なため、切削加工は簡単ではありません。粗加工には機械も使うのですが、鋭利な刃物ですこしずつやらないと焦げ跡がついたり、最悪の場合は発火してしまうことさえあります。おまけに上記の材料の場合はキルテッドというしわ状の杢が生じているので組織が複雑にうねっており逆目が立ちやすく、欠損が生じやすいのです。

今回のハードメープルはもとの長い板の状態等で判断すると、おそらくはシュガーメープル(サトウカエデ)だろうと思います。カエデのなかでもとくに大きくなる樹で、日本産のカエデではイタヤカエデに近似した樹種です。

 

鳥海橋からの夕焼

 

日向川は鳥海山から庄内平野に流れ出している川ですが、その中流域にかかる鳥海橋付近から眺めた夕焼です。自宅と工房との行き来にいつも通るところなので、川の様子を見たり、帰りにはよく夕焼と出会うことがあるのですが、9月1日はことのほか躍動的かつ美しい夕焼でした。

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万年カレンダー

 

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身内の子供の夏休みの工作ということで、万年カレンダー作りました。最初は電磁石の原理を使った別の工作だったのですが、説明どおりに作ったはずなのにぜんぜん作動しません。どこがわるいのか不明のまま諦めて終了。そこで急遽代替案として出たのが正六面体のキューブを使った万年カレンダーです。

月・日・曜日をきちんと表示するにはキューブは最低6個は必要だと分かりました。それ以下の数のものもあるようですが、一つの面に複数の表示(例えば土曜日・日曜日)になるようで、それは見た目に美しくないと私は思います。また逆にとりあえずその日の表示に不要なキューブを別に保管しておくというのもわずらわしい感があります。

キューブの大きさは一片30mmの正六面体で、これを6個ならべると180mmになります。材料はオニグルミです。木材の正確な加工は小学生には無理なので私が代行し、子供にはサンディングペーパーをかけるのと数字等の書き込みをしてもらいました。時間がないこともありますが無塗装です。

うちの子供はすでに夏休みの宿題は提出済みなのですが、この万年カレンダーの製作は身内の子といっしょに行い、2つ完成させました(※ 当工房の小物類のラインナップに加えるにはさまざまな制約・課題があるので、今回はあくまでも子供の工作の手伝いということで……)。

 

コーヒーブレーク 86 「冷蔵庫」

 

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瀑布なすフロントガラスや雲の峰

[ばくふなす ふろんとがらすや くものみね] 「雲の峰」というといやが応にも芭蕉の<雲の峰幾つ崩て月の山>を思い出してしまう人は少なくないだろう。夏の暑い日差しを浴びて、にわかに積乱雲が発達しているところである。夏でも雪をいだく月山と雲とが同化し一体となってしまうような動的な景が的確に描写されている。とはいえ雲の峰はごく一般的な夏の季語なので、あまり芭蕉句にひきずられるのもどうかという気はする。

白砂の色なきまで白し旱星

[しろすなの いろなきまでしろし ひでりぼし] 白砂青松という言葉がある。海辺の景観をあらわす言葉だが、実際には砂浜だけでなく磯浜であることも多く、砂の場合も赤っぽい砂も黄褐色の砂や黒い砂もあり、また落葉広葉樹を主体とする植生もあるので、場所と季節によっては黒砂枯木という具合だろうか。/山形県の西側は全面が日本海に面しているが、海と庄内平野との間には庄内砂丘という砂丘がある。長さ34km、幅約1.5〜3km、高さ50m前後(最大で77m)という日本最大級の広大なものである。もともとは砂州の上に降り積もった砂が3600年ほどの時間を経て山を成したもので、どこまでほっても、海面下の深さまで掘ったとしても砂また砂である。強い西風によって浜辺の砂が吹き飛ばされたのが成因だが、仮に1年に1cmずつ積もったとしても1000年で10mになる計算だ。まさに塵も積もれば山と成すである。

腑がひしめきおうて冷蔵庫

[はらわたが ひしめきおうて れいぞうこ] 読者諸氏のお宅の冷蔵庫はどんな具合ですか。わが家の冷蔵庫にはときに飲食物や食材がいっぱい詰まっていることもあるにはあるのだが、たいていは胴腹ノ滝で汲んできた湧水のペットボトルが10本くらい入っていたり、妻の実家でこしらえている野菜の幾種類のものがどっさり詰まっていたりすることがあるだけである。スーパーなどで買い求めた肉・魚・野菜がたくさん入っていることはまずないし、賞味期限が切れて無駄にしてしまうといった事態もほとんどない。/冷蔵庫といえば実家にそれが登場したのは私が小学校の4年生くらいの頃。つまり50年ばかり昔のことである。それまでは自噴の井戸水をかけ流している水屋というものが離れの風呂場の近くにあり、その小さめの引き戸をあけると鍋に入れたおかずや、肉や魚が鎮座していたように思う。井戸水といっても13℃くらいの冷たい水なので、冷蔵庫ほどではないにしてもそれなりの効果はあったであろう。井戸の本体のほうの水槽にはスイカやマクワウリ、トマトヤキュウリ、瓶ビールなどが冷やされていた。

 

 写真は遊佐町の青塚海岸から眺めた飛島。島の上にぽつんとひとつだけ雲が浮かんでいるのがおもしろい。)

 

トント永眠

 

13年前に迷い猫だったのを保護して以来、わが家のアイドルだったトントが、先日8月19日午後8時に病気のため永眠しました。私の膝の上で静かに息をひきとりました。年齢はたぶん14歳ちょっとです。

体重はすこし前まで4.9キロあり大柄な猫だったのですが、最近は急激にやせ細りしまいには3キロを割ってしまいました。ただそれほど痛みなどはなかったらしいことと、家族がみなそろっているときに看取りができたことはさいわいだったと思います。あくる日早朝にザックに入れてかついでいって、家族みんなで鳥海山の某所に埋葬しました。

たいへんやさしい猫でかんだり爪を立てたりはまずしません。いたずらやそそうもあまりなく、たいそうよくできた猫です。またとても人見知りする猫で、家族以外の人が来訪するとすかさず物陰にかくれてしまい、その存在すら知られていないことが多かったです。一方で非常に甘えん坊の猫でもあり、私の膝の上で左向きに座る、または寝る時は私の右脇にくっつくというのが定位置でした。ごろごろと大きく喉を鳴らすのも得意です。爪を切るときも私のひざの上でじっとしています。

トント、ありがとうね。

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