コーヒーブレーク 86 「冷蔵庫」

 

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瀑布なすフロントガラスや雲の峰

[ばくふなす ふろんとがらすや くものみね] 「雲の峰」というといやが応にも芭蕉の<雲の峰幾つ崩て月の山>を思い出してしまう人は少なくないだろう。夏の暑い日差しを浴びて、にわかに積乱雲が発達しているところである。夏でも雪をいだく月山と雲とが同化し一体となってしまうような動的な景が的確に描写されている。とはいえ雲の峰はごく一般的な夏の季語なので、あまり芭蕉句にひきずられるのもどうかという気はする。

白砂の色なきまで白し旱星

[しろすなの いろなきまでしろし ひでりぼし] 白砂青松という言葉がある。海辺の景観をあらわす言葉だが、実際には砂浜だけでなく磯浜であることも多く、砂の場合も赤っぽい砂も黄褐色の砂や黒い砂もあり、また落葉広葉樹を主体とする植生もあるので、場所と季節によっては黒砂枯木という具合だろうか。/山形県の西側は全面が日本海に面しているが、海と庄内平野との間には庄内砂丘という砂丘がある。長さ34km、幅約1.5〜3km、高さ50m前後(最大で77m)という日本最大級の広大なものである。もともとは砂州の上に降り積もった砂が3600年ほどの時間を経て山を成したもので、どこまでほっても、海面下の深さまで掘ったとしても砂また砂である。強い西風によって浜辺の砂が吹き飛ばされたのが成因だが、仮に1年に1cmずつ積もったとしても1000年で10mになる計算だ。まさに塵も積もれば山と成すである。

腑がひしめきおうて冷蔵庫

[はらわたが ひしめきおうて れいぞうこ] 読者諸氏のお宅の冷蔵庫はどんな具合ですか。わが家の冷蔵庫にはときに飲食物や食材がいっぱい詰まっていることもあるにはあるのだが、たいていは胴腹ノ滝で汲んできた湧水のペットボトルが10本くらい入っていたり、妻の実家でこしらえている野菜の幾種類のものがどっさり詰まっていたりすることがあるだけである。スーパーなどで買い求めた肉・魚・野菜がたくさん入っていることはまずないし、賞味期限が切れて無駄にしてしまうといった事態もほとんどない。/冷蔵庫といえば実家にそれが登場したのは私が小学校の4年生くらいの頃。つまり50年ばかり昔のことである。それまでは自噴の井戸水をかけ流している水屋というものが離れの風呂場の近くにあり、その小さめの引き戸をあけると鍋に入れたおかずや、肉や魚が鎮座していたように思う。井戸水といっても13℃くらいの冷たい水なので、冷蔵庫ほどではないにしてもそれなりの効果はあったであろう。井戸の本体のほうの水槽にはスイカやマクワウリ、トマトヤキュウリ、瓶ビールなどが冷やされていた。

 

 写真は遊佐町の青塚海岸から眺めた飛島。島の上にぽつんとひとつだけ雲が浮かんでいるのがおもしろい。)

 

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