片手で操作できるくらいの小型のルーターはトリマーと呼ばれています。エッジの面取りをする際などに用いられ、トリミングするための機械ということからのネーミングです。そのトリマーには10cm角くらいの樹脂製のベースが付いていますが、そのベース下面から刃物(ビット)を任意の出にすることで浅い凹面・溝の掘削や、木端の縁などに丸みをつけたり角面や飾り面をつけたりします。
さて板の中ほどに丸い大きな穴をあけようとした場合、ジグソーまたは糸鋸で切り抜くというのが普通のやり方です。しかしこれには難点もあって、1)切断面が板面に対して完全な垂直になりにくい(多かれ少なかれ曲線で切っていくので刃にかかる抵抗が左右同じではないため)。2)いくら鋭利な刃物であってもはっきりとナイフマークはついてしまうので、これを後できれいに削り落とすのは内部+凹部の場合はけっこうめんどう。3)薄板ならともかく厚板でかつ硬木だと機械や刃にそうとうな負担がかかる(刃が熱をもって弱くなり折れることも)、等々といった不具合があります。
そこで登場するのが、円形穴の倣い型(テンプレート)を作り、ルーターで切削する方法です。高速回転する刃で木を削っていくので微小なナイフマークはやはりついてしまうのですが、ジグソーなどのノコギリ刃で切っていくのに比べれば非常になめらかです。垂直度も実用上問題ありません。板厚も径12mmのロングビットを使えば50mmくらいまでは大丈夫です(1回の削り代は水平方向4mm以下、垂直方向も10mm以下)。ただ、まずそのテンプレートを製作する手間がよけいにかかるわけで、それをどのように正確に効率的に作るかが問題です。
写真はトリマーを使って大きな正円を切り抜くための治具です。もとのベースを外してこの横長のベースを取り付け、回転軸の芯をネジでしっかりと止めてから、切り抜く材料の上をトリマーをゆっくり移動しつつ切削していきます。当工房ではテンプレートは通常5.5mmの合板を使用しているので(重切削用は9mm)、径6mmのストレートビットの出を3mmくらいにして2回転します。もちろん元の材も切り抜く部分の材も作業台に固くネジ止めし、5.5mm合板の下には並ベニヤの捨て板を敷きます。芯(回転軸)の位置を変えれば半径300mmくらいまで切削可能。
これまでも同様の仕組みの治具を間に合わせでこしらえ材の加工をしたことはあるのですが、今回は繰り返し長く使えるような、もっとしっかりしたものを作りました。