月別アーカイブ: 11月 2014

コーヒーブレーク 33 「ちいさき骸」

 

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朴落葉ちいさき骸にかぶさりぬ

ホオノキ(朴の木)は一枚の葉としては国内で最大と思われる大きさの葉を有する落葉広葉樹。長さ30cmくらいはむしろ小さいほうで、40cm半ばに達するものさえある。名前自体がその大きな葉を昔は食べ物を包むのに用いられたことに由来するらしい。花も国産広葉樹では最も大きく、春に枝の先に直径15cmほどの白い芳香花を上向きに開く。樹高20〜30mにもなる高木なので、よほど大きな屋敷でもないかぎり庭木には不向きなのが惜しい。幼木の、細い幹の先にパラソルのように開く若葉の姿もじつに美しいのだが。

太陽をおおかた周り十一月

地球は太陽のまわりを半永久的にぐるぐる回り続けているので、実際には始点も終点もないのだが、いちおうは年のはじめの1月1日を起点としよう。さすれば十一月半ばともなればもう1周分のあらかたを回ってしまったわけである。地球と太陽との距離は約150000000kmもあるので、地球は1年間にその2πrの約900000000kmも動いていることになる。すなわち時速100000kmくらいの猛スピードで太陽の回りを駆け巡っている計算だ。驚いたね。

廃線のどこまでも平行線や雁渡し

私はいわゆる「鉄っちゃん」(鉄道マニア)ではない。が、山登りの際などにその麓でときおり鉄道の廃線にでくわすことがある。それは正規の公共鉄路であったり、土木工事や原木搬出のための軽鉄道の跡だったりするが、いずれにしても栄枯盛衰、感傷をさそうものではあるな。赤く錆びついたレールをどこまでもたどっていけば不思議の国へたどり着きそうな空想にかられたとしても無理はない。/雁渡しは雁(ガン)が渡来する初秋から仲秋にかけて吹く北風のことで、別名青北(あおぎた)ともいい、秋の季語である。もともとは船乗りや漁師などから使われるようになった言葉だというのだが、雁そのものを近頃はあまり見かけなくなったような気がする。

 

デザイン住宅?

 

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某住宅部材&機器メーカーの小冊子に載っていた住宅で、これは「デザイン住宅」なんだそうです。軒の出が皆無で、玄関先の目隠しのルーバーは木製で雨ざらし……。高温多雨多湿の日本ではたちまち外壁が汚れそうですし、むき出しの木部はいったい何年保つのか心配です。敷地が狭く隣地との距離がとりにくいとはいえ、これはないよねという感想です(内部の詳細も載っており、私としてはいろいろ言いたいことはあるのですが、それは省略します)。

いわゆるデザイナー系の住宅はかなりの割合でこういうタイプのものが多く、ほんとうにまじめに木造建築・住宅というものを考えているのか、はなはだ疑問です。

単なる装飾的なもの遊びのものならいざしらず、実生活での道具や機器や建築などは、まずなによりも基本的な機能や使い勝手や耐久性をきちんと満たしていることが最低条件です。見てくれはだいじではあっても、決してそれらの条件より優先するものではありません。もちろんデザイン的要素がまったく考慮されていないモノは味気ないのはたしかですが、実質を損なうことなくいかにかっこよく見せるかに、まともなデザイナーや建築家は死ぬほど頭を悩ますわけです。それを上記のようなチープな回答を出されると、ほんとうにがっかりします。

 

スーパー楕円の中型お盆

 

新しくお盆を10個ほど製作しました。材質はクルミの一枚板で、大きさは30×240×300mmで深さは24mmくらいあります。形はスーパー楕円といって、長方形と楕円形を足して2で割ったような形です。普通にただ楕円形としたのでは長手のほうが細くなりすぎて、実際使える面積がすくなくなって使い勝手がよくありません。仕上げは艶消のセラミック-ウレタン塗装。一見白木のように見えますが、汚れは付きにくいですし、お使いになるにつれて色つやが増してきます。

用途的にはサービス盆(ものの出し入れ・運搬)としてよりも、一人用の軽食やお茶などを上にのせ、そのまま飲食するのに向いているようなサイズと作り・デザインです。実際にお買い上げいただいた方々も主にそうした使い方をされているようです。

完成してすぐに半分ほど売れてしまったので、現在残っているのは下記の4個のみです。家具以外のこうした定番的な小物類については底面に通し番号(シリアルナンバー)を刻印していますが、写真は同じものを180度方向を変えて撮影しています。なんだか別のもののように印象が異なりますね。こういう点も天然素材のおもしろいところです。

価格ですが税込小売定価で14000円です。送料は個数にかかわらず一律・一回につき500円。ご希望の方はメールにてご連絡ください。

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007 売り切れ 小さな生節が二つあります

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008 縁に1カ所わずかな入り皮があります。木目の表情はいちばんおだやか

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010 売り切れ 小さな生節が2つあります。実際に見ると4個の中ではいちばん色は濃いめで木目も複雑

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012 縁の内側に1箇所すこし変色しているところがあります

 

サンディングペーパー小片

 

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サンディングペーパーは当工房では基本的にシート100枚入りのパッケージで購入しています。バラで買うより単価はだいぶ安いです。1枚のサイズは 228×280mmですが、いちばんよく使う六切用当てゴム用には3枚とれ、その結果上の写真のように幅40mmくらいの切落としが生じます。あまりたくさん出たときはやむなく廃棄処分としますが、一部分はさらに2〜3枚に切ってからそれぞれを二つ折りにし両面テープで接着してサンディング用の小片にしています。

二つ折りにするのは指先がすべらないようにすることと、家具などの凹部や入隅も磨けるようにすこし腰を持たせるためです。したがって研磨面は片側だけとし、非研磨面にはペーパーの番数(粒度)がわかるように黒または赤の油性マーカーで印をつけます。実際サンディングしてみると400番までは単純に二つ折りでいいのですが、600番以上になると粒度が非常に細かいために指がすべってしまいます。それで600番より上のペーパーでは非研磨面に240番や320番のペーパーを貼り合わせます。

上の写真の場合、左が粒度400番、中が320番、右が600番の非研磨面です。研磨材にはたくさんの種類があるのですが、木工作業では現在もっとも一般的と思われる酸化アルミニウムまたはシリコンカーバイドの研粒を波状に基紙にコートしています。これをオープンコートといい目詰まりの軽減効果があります。

粒度の選択は非常に重要で、たとえば塗装の下塗後の均しには通常400番を使用し、上塗後の均しには600番または800番を用いています。600番で研磨すべきところをまちがって320番でこすってしまってはたいへんなので、一目で区別できるようにしているわけです。数字ではなくドット表示なのは、マーカーのペン先を痛めないようにするため。

 

切削失敗

 

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楕円形と長方形を足して二で割ったような形=スーパー楕円形のお盆を10個ほど製作しているのですが、テンプレート(ならい型)を使ってルーターで内側を掘り込んでいるときに失敗をしてしまいました。

径18mmのリング状のテンプレートガイド+径12mmのビットで徐々に掘り込んでいくのですが、厚さ9mmのテンプレートに対しガイドは2.5mmしかかかりがないので、よほど気をつけないとガイドがテンプレートを外れて乗り越してしまうことがあります。写真で下のクルミ材の側面に黒い焦げ跡がありますが、すなわちこの位置がちょうど切削抵抗がいちばん大きくなる箇所で、最初の深さの掘り込みのときにルーターをぐっと手前に引きつけた際に、勢い余ってテンプレートガイドが外れてしまい、お盆の材料といっしょにテンプレートも削ってしまいました!

テンプレートのほうは欠けた部分を補修してなんとかまだ使えそうですが、失敗したお盆の材料のほうは当然ながら製品にはなりません。捨てるにはもったいないので、欠けた部分を回避しながらさらに深く規定の深さまで掘り込んではいますが、さてこの後どうしましょうかね? 穴を埋めて自家用にこしらえるか、あるいは失敗した穴のぶんだけ全周をカットして浅いお盆にしてしまうか、です。

家具や小物類の製作には充分に注意して作業をしているつもりですが、相手が圴一素材ではないむらのある天然木なので、予測どおり計算どおりにはいかないところが多々あり、こうしてたまに加工に失敗することがあります(とほほ……)。

結局この加工ミスしたお盆は、欠損部分は埋木をし、以後の工程は他のものとまったく同様に仕上げ自家用としました。見栄えはともかく実用的にはまったく問題ありません。「自分で作れる」といっても当然製作コストがかかっているので、なかなか自家用の家具などは製作できませんが、まあ小物くらいはこうしてうまく転用しています。

 

コーヒーブレーク 32 「空深く」

 

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空深く降りてゆけり登山道

何十年も山登りをしているが、よく晴れた日や逆に霧が濃い日などは、登るに連れてだんだんと地上を離れて空に潜り込んでいくという思いを強くすることがある。ことに単独行で、他の登山者もまず皆無といっていいコースや山ならなおさらである。/あるとき登山などほとんど未体験といっていい人と、私が山の話をしていて「下界に近づいてきたら……」と言ったとたんに笑われたことがあった。山だって下界だろうというわけである。下界を天上の世界と対となる現実の世界と考えるのであればまったくその通りなのだが、登山、とりわけ娯楽的なハイキングなどではないいくらか過酷な山登りをしていると、普段の現実世界からの遊離隔絶という思いが自然にわいてくる。それは感覚的な話なので、わかる人にはすぐにわかり、わからない人にはいくら説明してもついにわからないかもしれない。

鳥海山月山の身震いして十一月

十一月ともなれば高い山は完全に冬である。11月から6月くらいまでは氷雪に閉ざされている世界で、冬以外の期間は4か月ほどしかない。春らしい春の季節は高山にはほとんどなく、冬からいきなり夏となって、夏から短い秋を経てまたすぐに冬にもどるという感じである。山肌一面が雪と氷に封印される前に、北西の強い風が吹き荒れて灌木や草の枯葉を一掃する。

銀漢の死にたる星もひきつれし

銀漢は銀河・天の川のこと。一般にはあまりなじみがないが、俳句では普通に使われる言葉だ。漢はまた男らしい男という意味でもある。悪漢とか好漢とか(良きにつけ悪しきにつけ)。もっとも「男らしい」とか「女らしい」とかの言い方や見方はできるだけ避けたいとは思う。それは結局のところ根拠のない固定観念であり、容易に偏見と差別意識に転じてしまうからだ。/この句は9月17日のシテ句会に出した句で、そのときの句会の様子(講評)は当ブログ9月30日の記事として掲載。それにも書いたことだが、星にも生死があり、いまわれわれが見ている星のうちのあるものは実際にはもう消滅しているかもしれない。なにしろ光速で何万年とか何億年とか離れている星もたくさんあるわけだから。逆に実際にはいま新しく生まれている星でも、あまりにも遠くにあるせいでわれわれはその存在を感知できていない場合もあるだろう。星空をみあげてのこのような感慨は現代ならではのもの。

 

(※ 写真は10月中旬、鳥海山の初冠雪から数日後の景観で、頂上=新山と、それを取り巻く外輪山が見えている。)

 

シクラメン復活

 

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昨年の11月に購入したミニシクラメンですが、ピンクと白花の二鉢のうち、春先までずっと咲いていた前者はその後暖かくなってからは急速に元気を失って枯れてしまいました。白花のほうは比較的はやく花が終わって葉だけになってしばらくは洗面所の窓のところで生きていたのですが、だんだん葉が黄色くなり脱落もしてしまい、これまでかと思い玄関先に半ば放置していました。ところがなぜか枯れもせず夏を越し、秋口からはまた花を咲かせるようになりました。念のためと思って、土がからからに乾かないようにときおり水をやっていたからかもしれません。

いまでは元気いっぱいで、蕾もたくさん見えます。うまくいけば今年の冬も室内で白いシクラメンの花をしばらくの間めでることができそうです。外はもう日によっては雪がちらつくようになってきたので、急いで鉢を部屋に入れ枯れ葉を整理するなどの手入れをしました。園芸花は基本的にあまり好みではないのですが、こういう小さめで控え目な花はなかなかいいですね。