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黒柿ブックマッチの象嵌完了

 

4月10日の記事で、黒柿ブックマッチの木口薄板のことを紹介しましたが、これを蓋の一部に象嵌して箱物を3つ作ることにしました。仕上がりの形状としては例によって角形被蓋刳物です。

左右対称の2枚の薄板なので、まず1mm程度の極薄板を裏に貼って一体化。それからベースになる厚板の母材(37mm厚のオニグルミの柾板)に象嵌部分の凹みを掘り込み。深さは象嵌する黒柿材の厚さより0.2mm程度浅くします。象嵌の材は四方の縁(厚みの断面)をほんのわずか下向きに勾配を付け、母材に圧入したときに圧縮気味に収まるようにします。その精度は数値でいうと、凹みより象嵌材を縦・横とも0.1〜0.2mmくらい大きめにするのがポイントです。

今回の象嵌は、猫の顔のようにも見える偶然に現れたおもしろい模様なので、やり直しはできませんし、また欲しいと思っても入手不可能な材料です。そのためいつも以上に慎重に作業をしましたが、3組ともうまくでいきました。象嵌の出っ張りはあとで鉋で削り最終的にはサンディングペーパーで面一に均すのですが、あまりきれいに収まっているので、逆にプリントかなにかのように思われてしまいそうです。

蓋の裏側にはすでに実(み)に被さるだけの掘り込みも終えていますが、写真は象嵌の周囲の余白はまだ仕上がり寸法より一回り以上大きい状態です。

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傘雲と鳥海山

 

傘雲をかぶった鳥海山の夕景です。風がすこしありましたが、代掻きの終わった水田にも姿が写っています。晴れても雲がかかっても、朝でも昼でも夕方でも、春・夏・秋・冬のいずれでも鳥海山はすばらしいです。(写真は5/4のもの)

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タオルがぼろぼろ

 

猫を獣医さんなどに連れていくときに使っているキャリーボックスですが、中に敷いていたタオルが網目から半分外に引っ張り出されていて、ぼろぼろに。これは明らかにアルのしわざ(トントだと腕がすこし太いので、網目に手が入れにくい)。

うちの2匹の猫はふだんは段ボール製の市販の爪研器を使っていて、家具や建物などをひっかくことはほとんどないのですが、この前2日間ほど爪研器の段ボールを無くしてしまったせいで(交換用のを買い忘れた)、たぶん爪がうずいていたんでしょうね。「ありゃ、なんでないんだ〜」と憤慨したのかもしれません。このタオルのほかに、トイレの紙砂を入れてある袋も破って、中身が散乱していました。おそるべしアル。

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経ケ蔵山へ一人旅

 

連休中の5月3日は旧平田町にある経ケ蔵山へ登ってきました。この山にはわりあい子供たちや家族や知人と行くことが多いのですが(年2〜4回程度)、今回は私ひとりです。一人山行のいいところは自分の興味関心のおもむくままに、景色をゆっくり眺めたり花の写真を撮ったり昼寝したりと、完全にマイペースで行動できることです。そのため、他の登山者がいても(今回は5組16人ほど)極力関わらないようにしています。人に会いたくて山に来ているわけではありませんから。

この日はフェーン現象のために日中の気温は27℃くらいまで上がりました。ただ中腹から頂上にかけてはかなり強い風が吹いていたので、それほど汗をかかないで済んだのですが、下に降りてきたらたちまち汗だくになってしまいました。往復約3時間の一人旅でした。

景色はたいへんよかったし、たくさんの花が咲いていました。しかし他の記事でも書いたように、今年は花が咲くのも全般的に早いですね。同時期の、昨年より前の山行メモやブログ記事と比較してみても、やはり10日から2週間くらい開花期が今年は早いようです。これまでならまだ少しはあったオオミスミソウも花はありませんでしたし、スミレの仲間はいくつかあってもスミレサイシンは皆無。イワウチワやショウジョウバカマ、キクザキイチゲ、オウレンも同様です。ユキツバキも終盤です。

かわりにこれまではあまり見かけなかったフデリンドウは今回たくさん咲いていました。地面に這いつくばるような3〜5cmくらいの背丈のリンドウですが、青い色がとても印象的です

例によって私自身の備忘録をかねて、今回咲いていた花を以下に50音順にかかげます。青色のものは下に写真も載せました。間違いがありましたら指摘いただけるとありがたいです。 エンレイソウ、オオサワハコベ、オオバクロモジ、オオヤマザクラ、カエデ数種類、カキドオシ、カスミザクラ、カラマツソウ、キバナイカリソウ、クルマバソウ、シャク、スミレ数種類、セイヨウタンポポ、セントウソウ、センボンヤリ、チゴユリ、ツクバネソウトウゴクサイシン、ニリンソウ、ヒトリシズカ、フデリンドウ、ミツバアケビ、ミツバツチグリ、ミヤマキケマン、ムラサキケマン、ヤマハタザオユキザサ、ユキツバキ。

 

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オオサワハコベ(ナデシコ科)

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カスミザクラ(バラ科)

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ヤマハタザオ(アブラナ科) ※コンロンソウではありませんでした。

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センボンヤリ(キク科)

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ツクバネソウ(ユリ科)

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トウゴクサイシン(ウマノスズクサ科)

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フデリンドウ(リンドウ科)

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ミツバツチグリ(バラ科)

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ユキザサ(ユリ科)

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頂上から眺めた鳥海山

 

コーヒーブレーク 78 「吉祥模様」

 

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ひび割れて吉祥模様や春の泥

自然の造形で蜂の巣であるとか岩石の柱状節理などで六角形がよくみられるのは、その形を連続的につなげていくことによって平面を隙間無く埋め尽くすことが可能であり、少ない画線で閉じた広い空間をつくることができ(材料の節約になる)、縦・横・斜めのどの方向にも耐える力がある(変形しにくい)、といった数々の特徴が六角形にはあるからである。/面的に六角形を基本とする構造をハニカム構造というが、まざまな分野のさまざまな製品に使われている。はじめは自然界の造形にならったんだろうが、あとから理論的にも詰めていったのであろう。

転覆も沈没もあり花筏

桜の散った花びらが水面を漂い流れるのを花筏というのだが、あまりにも散る花が多い場合は池の水面などを覆いつくすばかりか、ときに二重三重なるになることもある。下になった花びらは当然ながら水面下に押し込まれたり、向きが変わって横になったりひっくり返ったりすることもあるだろう。/(ここで「いきなり話は飛躍するのだが、」と石川五右衛門の釜茹での刑についてすこし書こうと思ったのだが、単なる都市伝説かもしれぬとはいえあまりにも惨い話なのでやっぱりやめにした。)

四葉の五葉の六葉のまだクローバー

もともとは牧草として植えられるクローバーだが、多数の白い小さな花を球状に咲かせることや昔は乾燥させて商品などのクッション材として利用したことからシロツメクサ=白詰草ともいい、苜蓿(うまごやし、馬肥やし)ともいう。しかし詳しく調べてみると、シロツメクサとウマゴヤシとは同じマメ科シャジクソウ属ながら、別の植物のようである。ウマゴヤシの花は黄色だが、シロツメクサは文字通りに白花であり背丈もウマゴヤシほど高くはならない。とすると歳時記の苜蓿・クローバー・白詰草を同種の異称という説明は誤記ということになる。/クローバーは小葉は3枚が通常であるが、四葉のクローバーを見つけるとラッキー、幸福のシンボルという俗信がある。しかし四葉のクローバーはそのつもりで探してみるとそれほど珍しいわけではなく、わりあい簡単に見つけることができる。ところがさらにじっくり観察すると4枚どころかそれ以上の多葉の個体がみつかることがあり、最高記録ではなんと56枚とか(ギネスの記録)。

 

(※ 鳥海山西麓の牛渡川。箕輪の鮭孵化場付近ではみごとな梅花藻の群落をみることができる。澄んだ冷たい流水にしか生息しないキンポウゲ属の水草で、ウメの花に似た白い5弁花を水上または水中で咲かせる。)

 

子供たちとのキャンプ

 

4月30日〜5月1日は、子供たちと鳥海山の低山域でキャンプをしました。うちの子供と、いっしょによく遊んでいる子たちの合わせて4人ですが、冬山もオーケーの本格的な登山用のテントを二つ張り、ひとつは子供たち専用、もうひとつは私専用のテントです。

場所はいわゆる「キャンプ地」ではないのですが、たまに遠隔地から鳥海山の登頂を目指す人などが、前日に来てテントを設営していることがあります。電気はありませんが、水場と東屋(炊事場)はあるので、問題はありません。

今回はできるかぎり子供たち自身でテントの設営や炊事などをしてもらうようにしていたのですが、小学5年生だし野外活動に慣れているとはいえない子もいるので、ときどきは私が手を出さざるをえないというのが実状でした。それに夕飯の用意をしているあたりから夜通しの雨になってしまい、気温もおそらく6℃くらいまでに下がってすこし寒かったこともあり、子供たちの動きは鈍かった(自発性に欠ける)です。名実ともに「自分たちでキャンプをする」にはまだまだ遠いですね。

翌日はできればハイキングをしたかったのですが、天気が回復せず行動にやや不安のある子もいたので、野外活動は中止とし、午前8時でテントは撤収し下山。あとは夕方まで室内遊び等に切り替えました。

車1台で移動できるくらいの子供の人数(5名以下)であれば、私の手間ひまは人数にかかわらずほとんど同じなので、今回のキャンプに限らず野外活動の場合もできるだけ他所の子も誘うようにしています。しかし、保護者のほうにそもそも野外活動の経験がある程度以上はないとまず不安が先に立ってしまい、実現しません。それはそうで、自分がろくにやったことのないことを他の大人にゆだねて、連れて行ってもらって泊まり込みで活動するというのはかなりハードルが高いでしょうね。

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新しいインパクトドライバ

 

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インパクトドライバは十数年前から使っていますが、古いほうの機種を知り合いにゆずることになったので、かわりに最新型を導入しました。発売になったばかりのマキタのTD160Dというモデルです。充電器と充電池はこれまで使用してきているのと共用できるので、本体のみの購入です(でないと高くて買えない)。

マキタのインパクトドライバは品番が130からはじまって順番に138まで来ていたのに、いきなり160になったのは、まあそれなりになにか理由があるんでしょうね。

当工房で使用中の最新機種はTD137Dですが、それと比べてみると、外観および基本性能には大きな変化はなく、いわばミニモデルチェンジといったところ。それでも全長がほんのわずかですが短くなったことや、回転数の選択がこれまでは4段階だったのが5段階になったことや、充電池の残量表示も3段階から4段階になったことなど、こまかな改良があるようです。

インパクトドライバは打撃力なしの従来型のドリルドライバに比べると締め付ける力がずっと強いので、注意して使わないと木ネジ等を壊したり、必要以上に奥までねじ込んでしまったりの恐れがあります。それがいやでインパクトは使わないという人もいるくらい。それが、モデル136くらいからだったか回転数(打撃力)を任意に選んだり、充電池の残量を機械本体に表示するようになってから、ずいぶん使い勝手がよくなったと思います。

 

今井アートギャラリー

 

月山の麓の鶴岡市羽黒町にある「羽黒・芸術の森 今井アートギャラリー」にこの前の日曜日に行ってきました。田畠が広がる風景の中の、広い屋敷にある江戸中期の土蔵作りという大きくてすばらしく立派な建物にまず驚きました。かつての鶴岡の豪商の蔵だったものを移築したものだそうです。シチュエーションは抜群です。

前身の「今井繁三郎美術収蔵館」は洋画家- 今井繁三郎(1910~2002)の作品収蔵を主体にしていたものですが、今後は氏の絵の常設展示以外に若手芸術家の作品発表や創作の場も提供していくということで、リニューアルして4月23日にオープンしたばかり。私は息子やその友だち(小5)を連れていったのですが、けっこうおもしろがっていました。今井氏が集めた世界各地の民俗的小物もたくさん陳列されていましたしね。

1階の貸しギャラリーには新規開館に合わせて写真や絵画・染色に取り組んでいる4名の方が作品展示をされていました。なかなかのものです。しかしなんといっても今井繁三郎の大きな絵は圧巻。私は名前は知っていましたし印刷物などで作品をみたことはあったように思うのですが、実物を間近かに見ると圧倒されるような思いがしました。具象と抽象とが複雑に絡み合っているような絵です。

入場料は維持管理協力金として大人500円、中学生以上300円。開館は4月中旬〜11月末の土・日・祝日、10〜16時。電話&FAX 0235−62−3667(開館時のみ) 住所は山形県鶴岡市羽黒町仙道字一本松5−175

なお、室内は撮影不可でしたので、駐車場からの建物概観のみの写真です。よく「撮影禁止」の掲示があるにもかかわらずスマートフォンなどで写真を撮っている方がどの美術館でもいますが、他のお客の邪魔になるばかりか、撮影に気をとられて作品にぶつかってしまうなどの恐れもあるので、厳に慎むべきですね。

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シテ句会 2016.4.20

 

これまでは奇数月ごとに開催してきたシテ句会ですが、今月から毎月行うことになりました。毎月第三水曜日の18:30〜21:00、酒田市駅前にほど近い「アングラーズ・カフェ」というお店をその時間は借りきって句会を行います。『シテ』は現代詩や俳句や短歌等の短詩形文学の作品発表と批評を目的とする同人誌ですが、こちらも年3回発行だったものを6月以降は3ヶ月毎の年4回発行=季刊となります。現在9号まで発行しています。

今回の参加者は相蘇清太郎・伊藤志郎・今井富世・大江進・大場昭子・齋藤豊司・南悠一と、見学の方が二人の、合わせて9名でした。事前に無記名で2句投句し、句会当日は清記された句群=其の一&其の二の中からおのおの2句ずつ選びます。その句を取った人、また取らなかった人がそれぞれ披講を行い、そのあとで初めて作者が明かされます。もちろん作者のその句に対する思いや作句の意図なども話すことになります。このような句会の進め方はおおむねどこの句会でもほぼ同じで、先入観を排し忌憚のない批評を述べてもらうための古来からの工夫です。

以下の記述は句会の主宰をつとめる私(大江進)からみての講評です。ときどき遠慮会釈のない辛口批評を含むことがありますが、どうかご容赦ください。異論や反論はとうぜんあるかと思いますが、コメントをいただければうれしいです。賛同であれ大反対であれ、反応があることはたいへんありがたいことと受け止めています。よろしくお願いします。では其の一から。

2 水仙月の夜会のはじまりぬ
1 春の霜いのつちかの間燦ざめく
5 だめですと言えないままに春の雨
1 寂しさもこれくらいなら春よ来い
4 遠近に舫い往き来て春暮れん
1 花地蔵こちょこちょをして帰りたし
4 ひび割れて吉祥模様や春の泥

最高点は5点句の<だめですと〜>です。私も取ったことは取ったのですが、あまりにも漠然としすぎており、どうかなという感じはしました。春の雨なので、おだやかでけぶるような、静かでほの暖かい雨という意味合いをもともと含んでいるわけですが、それが上五・中七と妙に合っていることがこの句の場合は逆に弱みです。またシテ句会の投句は「おおむね当季の季語を入れる」ということをルールとしているとはいえ、「春の雨」は容易に動くでしょうね。作者は伊藤志郎さん。

次点4点句は2句あります。はじめの<遠近に〜>は「舫い」を最初私はよくわからず、舫う=船の係留かと思っていました。岸につながれた船の「静」と、往来する船の「動」とではミスマッチかなと。しかし作者の齋藤豊司さんによれば舫いは船自体のことだそうです。その船が夕刻に港付近を行き来している光景のこととか。なるほどそれだとよく分かりはしますが、一方ではそれは水墨画的予定調和に陥ってしまうかもしれません。貨物船や客船などの大型の船舶ではなく、もし漁船などの小型の船舶の行き来を意味するのであれば「舟の」とする方法もありそうです。

次点句の二つ目<ひび割れて〜>は、春泥が乾いて亀甲模様などを描くさまを詠んでいます。つまり雪が溶けてどろどろにぬかるみなんとも始末に負えないやっかいな存在、忌み嫌われる存在が、一転して吉祥のシンボルになるというおもしろさを言っているのですが、泥が乾燥した際にえがく形状がぱっと脳裡に浮かばないと観賞は難しいかもしれないですね。作者は私です。

2点句の<水仙月の〜>はじつは『シテ』の最新号の9号のキャッチコピーにも「水仙月の夜会」という言葉が使われており、まあネタばれですね。水仙月(すいせんづき)は宮沢賢治の造語のようですが、そのことを知らなくとも水仙が咲くようなまだ肌寒い早春の頃だろうという想像はできます。淡い照明に浮かぶ白い花の点々とした景が目に浮かぶようで、「夜会」という言葉とも雰囲気はよく馴染んでいます。私も取りました。もっとも水仙は俳句歳時記では冬の季語とされていて、当地の季節感とは1ヶ月ほどのずれがあります。作者は南悠一さん。

1点句は3句あります。<春の霜〜>は中七・下五がそのまま季語の説明になってしまっているようです。<寂しさも〜>は小林一茶の<目出度さも中くらいなりおらが春>をどうしても連想してしまいます。損していますね。また一茶の句は意味合いもそれとなく理解できそうですが、挙句ではなにが寂しくて、それなのにそして「春よ来い」と言っているのか見当がつきません。<花地蔵〜>は桜の花びらが降り掛かっているお地蔵さんでしょうか。口語の「こちょこちょ」が効いているかといえば、ちょっと難しいかな。

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人数も最近のシテ句会としては多めで、しかも新参の見学者もふたりおり、かなり若い方も混じっていることもあってか、発言が活発に成されていました。むしろ時間が足りないくらい。このままメンバーが増えてくれればありがたいですね。さて小休止の後、其の二です。

4 クラス写真の五秒前山笑う
2 四葉の五葉の六葉のまだクローバー
0 帳おり海の果てに雲雀東風
3 バレリーナ アン・ドゥ・トロワと咲きにけり
1 野ざらしの左手首のトルソーよ
5 ちひさきはちひさく咲くよいぬふぐり
3 指先のこごえる朝の初鰹

最高点は5点句の<ちひさきは〜>でした。私も取りましたが、「いぬふぐり」を私は最近の圧倒的に多い外来種のオオイヌノフグリではなく、むしろそれより小型のイヌノフグリ(在来種)やもっとずっと小型のタチイヌノフグリ(外来種)をイメージしてしまいした。しかしいまではほとんどの人がオオイヌノフグリをイメージするでしょうから、花径1cmほどの青色の平開するその花は、私にはけっして「小さい花」という感じはしません。小さいものを小さいと詠むことはなるほどとは思うのですが、それが「いぬふぐり」では常識的で軽すぎますし、きっと他の人が同工異曲の句をなんども詠んでいるにちがいありません。作者は大場昭子さん。

次点4点句<クラス写真の〜>は、それほどはかしこまらない雰囲気の写真撮影で、周囲の山々も新緑で萌えているのでしょう。しかし「五秒前」をどうとらえるかはなかなかくせものかもしれません。「さあ写すよ」という声がかかる前のざわつきを言ってるのか、整列が終わって写し終わるまでの時間なのか、それとも単に五音にそろえるために3秒前とかでなく5秒前にしたのか。いずれにしても「山笑う」という春の季語とはそれなりに馴染んではいるかもです。作者は伊藤志郎さん。伊藤さんは其の一と合わせて9点獲得。

3点句はふたつ。<バレリーナ〜>ですが、作者以外は皆、バレリーナを文字通りに踊り子のことと考えたようです。その衣装が体の動きにつれて開いてゆれるようすを花が咲いたようだと。比喩としては平凡ではあるけれども、最初にバレリーナときて次いでアン・ドゥ・トロワと続く流れるような語調はたいへんいいです。ところが作者の相蘇清太郎さんによればバレリーナとはバラの品種名のことだそうで、それは他者にはまず伝わりませんねえ。

<指先の〜>は、中七が「こごえる」とあるので冬・新年の景とうけとめた人がいましたが、初鰹は6月頃に出回るカツオのことで、夏の季語。そうすると指先がこごえるという表現とは合わないように思います。もっとも今は近場で採れた魚ではなく、全国どこで採れたものでも外国産でも容易に手に入るわけで、季節感が混乱してしまいます。実際、作者の今井富世さんは先頃市場で売られていたカツオを買い求めたのだとかおっしゃっていたように思うので、それは沖縄産のものだったかもしれないですね。

2点句の<四葉の〜>は問題句。クローバー(白詰草、または苜蓿)は3小葉が基本形ですが、ときどき四葉もありそれは幸福のシンボルのように言われます。そのため、ほとんどの人が四葉のクローバーを探したことがあるかと思います。ところがよくよく探すと五葉や六葉やそれ以上の葉をもつ個体もあり、しまいにはクローバーという概念が歪んできそうです。それで「まだ」ということなのですが、わかりにくい句ですね。作者は私です。

<野ざらしの〜>は一読して前回の句会で出た「手袋のやうな手首を拾ひけり」を思い出してしまいました。それに今回の句には季語がありませんし、俳句というより詩のなかの一節のような感じがしてしまいます。<帳おり〜>も問題の句です。「東風(こち)」は東からふく早春の風のことですが、これにさらに他の言葉をつけくわえて「雲雀東風」「鰆東風」「梅東風」「桜東風」などと使われると歳時記では説明されています。しかしやはりこれは西日本あるいは表日本の感覚でしょうし、語源的には陰陽五行説での春=東によるもので、実際の季節風の風向きとはあまり関係がありません。東風だけでも本来の季節感は希薄なのにさらに雲雀東風では訴求力がありません。

 

特大の黒柿角形刳物 完成

 

11月2〜8日に酒田市のデパート「清水屋」の画廊で個展を開きます。それに展示するものをいろいろ製作しているのですが、今回の個展のメインである刳物(くりもの)の箱の中でも、さらにアイキャッチャーになるような特別な品も必要です。

ということで銘木中の銘木といえる黒柿の、当工房で持っている材で可能な最大サイズの刳物を作ってみました。出来上がり寸法は横332mm、縦204mm、高さは41mm、実(み)の深さが28mmです。最初はA4=297×210mmサイズの書類が入れられるようにと思って向かったのですが、干割れや葉節の部分などを除いていったら縦(材料的には横幅)の寸法がすこし小さくなってしまいました。

黒い紋様は大部分が孔雀杢になっており、材料的にいっても最高級の部類といえます。これくらいの刳物ができるほどしっかりした幅と厚みのある乾燥材は、黒柿の場合は入手すること自体がすでに至難の業です。加工しているときも失敗したら取り返しのきかない材料なので、何重にも注意を払いながら慎重に作業をしました。

蓋の縦と横の比率は1:1.628で、黄金比の1:1.618にほぼ近い値になりました。というか長さ方向にはいくらか余裕があったので、そうしました。形は完全に直線にしてしまうと強度的な心配があるので、側面はR4000〜7500mm程度のゆるやかな曲面にしています。仕上げは半艶塗装です。

 販売価格については個展開催の直前にならないと確定しません。しかし製作原価から計算してのおおよその値段を算出することはできますので、仮予約というかたちでの予約は受け付けています。ただし納品は原則として展示会終了後になりますし、お支払いも画廊との売買・契約となります。ご興味のある方はメールにてお問い合わせください。

 この品は売切れとなりました。寸法違い(すこし小さく)&紋様違い(孔雀杢まではいかない)でまた黒柿の角形被蓋刳物を製作することはあるかもしれません。  2016.4.28

 

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