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胡桃の机

 

ご注文をいただいて作ったオニグルミの机です。大きさは幅1300mm、奥行600mm、高さ628mmで、やや小ぶりのサイズです。奥行はあまり深くありませんが、個人の机として使用するのであればこれで間に合います(対面でかつ食卓としても使う場合は最低750mmは必要です)。

甲板(天板)は同じ丸太から採った共木で、ほぼブックマッチ的な板を2枚矧ぎ合わせています。脚部はシンプルな4本脚ですが3面にテーパーをほどこし。幕板と脚、幕板と中桟(根太)の接合は例によって大入通しホゾのクサビ打ち込みです。通しホゾの頭はそれぞれ1.5mm出ていますが、これは材料の伸縮の差をのがすためと、クサビの効き代を増すためです。木口が濃色になるので、構造上必要な措置が見た目のアクセントにもなっています。飾りのための飾りではなく、構造そのものが飾りにもなるというのがベストかと思います。

強度だけでいうなら、脚同士は幕板だけでなく下のほうに貫も入れたほうが確実に丈夫になりますし、事実ほかでは机・デスクの場合はそういう構造のものが少なくありません。ただそれでは見た目に鈍重な感じになってしまいますし、将来的に他の用途に転用する場合は、その貫がじゃまになりかねません。お客様からどうしてもという強いご要望があるのでないかぎり当工房では貫なしのすっきりした作りにしています。けれどもそのせいでぐらぐらしたりしては困るので、とくにホゾとホゾ穴などの加工は念には念を入れて慎重に行っています。

 

5/19の胴腹ノ滝

 

5月19日午前11時すぎの胴腹ノ滝です。水量は多いですが、前回の5月8日と詳細な写真で比較すると、やっと減少に転じてきました。水温のほうも4月3日から5月8日まではずっと一定(右が8.9℃、左8.8℃)でしたが、今回はそれぞれ0.2℃下がって、右が8.7℃、左が8.6℃です。気温は12.9℃でした。

昨年の記録をみると、5月11日に最大水量と冬以降では最高温度を記録(左右とも8.9℃)。その次の5月18日には水量がやや下がり水温も右が8.8℃、左が8.7℃と下がっています。したがっておおよそのところ、水量・水温の変化はともに昨年と同様のパターンを描いていることが分かります。一昨年以前はどうだったかのかは、残念ながら記録がないので不明です。

なお今、滝へ向かう歩道の入口のところ(手前左側)で、すこし前から駐車場の造成工事が始まっています。バスでも入れるくらいの大きめのスペースになるようですが、工事の車両出入り口のすぐ近くに自家用車を停めるとあぶないしじゃまになります。水汲みに訪れる際は注意したほうがいいですね。

 

胡桃の椅子

 

 

 

 

 

 

 

 

地元の女性の方からのご注文の椅子で、材質はオニグルミ。サイズは幅420mm、奥行445mm、高さ850mm、座面高さ360mmです。じつはこの椅子は今回はじめて製作したもので、たった1脚のためにまずスケッチをし設計図を描き、原寸図や型板をこしらえ、専用の治具もいくつか作りました。製作途中でいくらか問題があってやり直ししたところもあり、結局通常の所用時間の2倍半ほどの手間がかかってしまいました。もちろんこれだけで終わってしまったのでは大赤字です。

家具そのものを作るのにかかる時間と、デザインワーク〜原寸図・型板・治具などを作る時間とは分けて考えないといけません。前者は全体の数量(台数)にだいたい比例しますが、後者は作る家具の数量にかかわらずほぼ一定です。1台だけ作るのでも100台作るのでも、それが新作であるかぎり必ず原寸図その他を新規に用意しなければなりません。

後者にかかるコストも、製作した家具の値段の一部に含めて計算し、いずれはぜんぶ回収しなければなりませんが、今回のように1脚だけの注文の場合は実際のところ丸ごとすぐに上乗せすることは不可能です。それでどうするかというと、その後もくりかえし注文していただけるような普遍性のある魅力的なデザインにする=定番化をめざすか、それがとうてい無理そうな家具の場合は、残念ながらはじめから受注を断ることになります。

むろん本体の製作費以外に原寸図や型板や治具等々に実費でこれだけ別にかかることをお伝えし、それをお客さんに丸ごと了承していただければ、どんな特別な家具でも作ることはできますが、そういうケースはまれにしかありません。とりわけ椅子の場合は水平・垂直な部材の組み合わせではなく各所に勾配(傾斜)がついたりカーブがついたりすることが普通なので、新たに1脚2脚だけ作るというのは難しいのです。

今回もはじめは当工房の定番化しているいくつかの椅子のなかから選んでいただこうと考えていたのですが、すこし小柄で非力な女性のそのお客様には「重すぎる」ということで却下。まったく新たにデザインすることになったものです。できるかぎり軽くするといっても、強度・耐久性に不安があるようでは話になりません。もちろん見た目の美しさも無視できません。外形寸法をこれまでの椅子よりやや小さめにし、それぞれのパーツの幅や厚みを2mm、3mmと減らしたりするなどして、全体として3割近く軽くなりました。重量4.45kgです。仕口はいつものように「大入通しホゾ、クサビ締め」にしていますから、細身ながらいっさいぐらついたりはしません。

「なんだ、そんな程度か。まだまだ重いな」と言われるかもしれませんが、耐久性などを考えると私にはこれが限界と思います。軽量化自体が自己目的化しては本末転倒。完成した椅子はお客様に喜ばれ納得していただけたので、それでじゅうぶんです。

 

海岸の湧水

 

 

鳥海山麓西側の山体が日本海に没するところにある釜磯海岸の湧泉です。縁の急崖まで含めて直径2mくらいですが、まるっきっり噴火口のよう。「火口」からは湧水が勢いよく噴出しています。

湧出口はこの海岸のいたるところにありますが、その中でもこれは比較的大きなものです。湧出口に棒を突っ込んでみると岩にぶつかりますが、その深さは50cm以上ありました。満潮で大波が来ると海水が混じってしまい回りの砂地もいったんフラットになってしまいますが、波打ち際が後退するとまた写真のような光景が現れます。その繰り返しです。

地元に住む私たちは、子供の頃から何十年となく見なれた光景なのでこれがあたりまえとしか思っていないのですが、海岸から(海中からもですが)これだけの淡水が湧いて出ているのを他所の人が見るとたいへん驚きます。とくに水文学(すいもんがく)などの専門知識のある方は言葉を失うほどびっくりするようです。このあたりから県境の三崎公園にかけての海底湧水は専門家(総合地球環境学研究所・谷口真人教授 他)の実測値ですでに世界一の湧水であることが分かっています。地域の宝ですね。

 

根開き

 

 

昨日の午後から鳥海山の観光山岳道路=ブルーラインにドライブに行ってきました。残雪と新緑を楽しむつもりでいたのですが、午前中は路面の降雪で、上部標高900m付近より上は一時通行止めだったようです。午後2時半頃に私が行ったときはすでに開通していましたが、連休前からの雪の回廊とは別に道路脇には除雪したばかりの雪が小山をなしていました。

ブナをはじめとする新緑がとてもきれいです。標高1000mの大平あたりから上は霧でよく見えませんでしたが、晴れたときの景観とはまたちがった情趣があって、私はこういうのもとても好きです。下の写真ではブナの樹の根元がぽっかりとそこだけ丸く雪が溶けて地面がのぞいていますが、これは「根開き(ねびらき)」と呼ばれています。もっともこの呼称が一般的になってきたのはおそらくここ10〜15年くらい前からで、俳句で春の季語として用いられるなどしてからでしょう。それまでは雪国の人にとってはよく見かける光景ながら、とくに決まった名前はなかったと思います。

根開きができる原因は諸説あります。なかには春先の活発化した樹木の体温のせいだという人もいますが、動物ではないのだからさすがにそれはないでしょう。実際は降雨のせいですね。とくにブナは竹ぼうきをさかさに立てたような形に枝が上に広がっているので、降った雨は枝や幹を伝って根元に集中します。それが雪を溶かすのですね。いったん穴が開き黒っぽい地面がのぞいたところは雪面とちがって日射熱を吸収するので、以後はさらに急速に雪解けがすすむようです。ときに穴の深さは1.5mほどに達することがあり、まるでこれは塹壕です。

 

サクラチル

 

写真は今年のものではありませんが、地面を埋め尽くす桜の花びら。たぶんソメイヨシノだと思います。滅びの美学などとおおげさなことを言う気はありませんが、これはこれでとてもきれいだと私は感じます。

桜の花自体には特別な思い入れはなく、私にとっては春に咲く「たくさんの花のうちのひとつ」以上のものではありません。ワン・オブ・ゼムですね。桜の花が咲いている光景はもちろん悪くはないのですが、それを言うなら春は、非常に美しい花がほとんど無数といっていいくらいさまざま咲いており、それぞれにとてもみごとでです。頭上にも、足元にも。

桜なら園芸的な品種よりも、野山に咲くオオヤマザクラなどの自然の樹木のほうが好きです。それらを愛でるだけでじゅうぶんで、したがって私には一般的な意味での「花見」の習慣も興味関心もとくにありません。

 

5/8の胴腹ノ滝

 

上の写真は5月8日午前9時の胴腹ノ滝ですが、やはり予想していたとおりで、前回の4月29日より明らかにまた水量が増えています。すごい!としか言いようがないくらいのみごとな湧水ですね。予備知識なしにこの光景に初めて出会った人はこれがぜんぶ湧き水だとはとても信じられないかもしれません。下の2枚の写真は、初めが向かって右側の滝、次が向かって左の滝ですが、アップで見ると水の勢いがさらによく分かります。雪のある3月頃の時期とはまるで様子が違います。

水温は依然として変わらず右が8.9℃、左が8.8℃、気温は13.8℃でした。水量はどんどん増えても水温はここ1ヶ月以上(4月3日〜)同じことから考えても、近場での雪解水や雨水が直接的短期間に流入しているのではないことが分かります。

 

 

壁紙

壁紙といっても建物の内装の話ではありません。コンピューターのディスプレイの背景画像のことです。下の写真は現在使っている壁紙で、経ケ蔵山北面のニリンソウの群落です。白い花が斜面いっぱいに咲き乱れる中を、細い山道がのびている様子はとてもすてきです。

壁紙はもちろん既存のものも初めに付いてくるわけですが、私は自分で撮影した風景写真の中から適宜えらんで設定しています。ただあまり明暗差があったり、色彩が強烈すぎる写真の場合は、肝心の本来のテキストや画像などを見る際に支障をきたします。背景としてじゃまにならず、それでいて見て心地よい写真となると、実際にはかなり限られてしまいます。

いま使用しているコンピューターはアップル社のiMac 27インチです。ディスプレイはほんとうは長方形のごくシンプルな形なのに、簡易な私のカメラで撮るとごらんのように樽型の歪みがかなり出てしまいます。もっとまともなカメラが欲しいでござる。

 

くつろぐ

 

昨日は日中でも気温が12〜14℃しかなく肌寒かったので、ひさしぶりに石油ストーブを点けました。するとすかさずトントがやってきて手足をのばしてくつろぎ始めます。手足を横向きにだら〜んとのばしてリラックス。写真を撮ろうと思ってiPhoneを向けると、なんだ?という顔でこちらを見ています。

携帯電話(スマートフォンの一種ですが)に搭載のカメラとしては性能はかなり高く、悪条件下でも露出・シャッタースピードはまったくお任せとはいえそれなりにちゃんときれいな写真が撮れてしまうところがすごいです。8メガピクセル、2.4fのレンズ、LEDフラッシュやHDR(ハイダイナミックレンジ)機能もあるなど、ちょっとしたコンパクトデジカメを上回る性能を有しているといっていいでしょう。また写した写真はパソコンに取り込む前にiPhone上で相当程度まで編集することが可能です。

 

オオバクロモジ

 

 

鳥海山麓では雪もだいたい溶けて、樹々も葉を展開しはじめています。いま低山域の高木林中で目立つのがオオバクロモジ(大葉黒文字)の若葉と黄緑色の花。なぜか植林されたスギの林の下生えとしても非常に多く、逆光に浮かぶオオバクロモジの半透明の若葉がとても美しいです。私の簡易なコンパクトデジタルカメラではその美しさがぜんぜん捉えられていませんが。

オオバクロモジはクスノキ科クロモジ属の落葉低木で(Lindera  umbellata  var. membranacea)、クロモジの変種。北海道渡島半島と本州の主に日本海側に分布しています。クスノキの仲間なので良い香りをもっています。この樹はごくふつうに見られる普通種で成長も早いので、見かけたら若葉をすこしちぎって嗅いでみるといいでしょう。独特のさわやかな香りを活かして爪楊枝や細工物に用いられるほか、雪折れしにくいその柔軟な若い枝を利用して山仕事でものをくくるのにもよく用いられたそうです。

名前のクロモジの「黒文字」は、新しい枝の緑色の地に黒い斑点模様の樹皮を文字に見立てたものとされていますが、異論もあります。クロモジまたはオオバクロモジは春の新緑もきれいですが、秋の黄葉と光沢のある黒い実の取り合わせもなかなか風情があっていいです。