すでにピークは過ぎていますが、月光川中流域の増水のようすです。数日前までは水が少なすぎて流れの一部が分断しそうなほどだったのですが、15日の夜からの断続的な雨でみるみる増水してしまいました。河川敷内の低い方の堤防ぎりぎりくらいの水位なので、まだ余裕がありますが、それでもすごい勢いで奔る濁流を見ると、身体がすくみます。
私の工房は、鳥海山から庄内平野に向けて流れ出す二つの川のもうひとつ=日向川の最大支流である荒瀬川のすぐそばにありますが、こちらはもっと激しい増水で、橋桁が水に接するほどの出水でした。堤防の上端まで余すところ2mくらいしかなく、警戒水位を越えたようです。一部通行止めがあり、防災無線の放送も流れました。二河川ともいまのところ目立った被害はきこえてきませんが(鶴岡市や旧平田町などでは土砂崩れ等あり)、大雨・洪水警報は依然発令中で、降雨は明日午前中くらい続きそうなので予断を許しません。
ところでこうした大雨やそれによる洪水、また地震や台風や旱魃などの自然災害が起きるたびに、それを「自然が牙をむいた」云々と表現する人が少なくありません。しかし私はそうした言葉を見聞きするたびに強い違和感を覚えます。自然はいつだって自然であって、たとえ3月11日のあの巨大地震や大津波であってもそれは自然本来の姿であり、異常でもなんでもありません。
同じ自然でありながら、人間にとってはときに「恵み」や「安楽」であり、ときに「災厄」や「恐怖」となるということであって、徹底的にそれは人間の側の問題です。自然は突然豹変して牙をむいたりすることも、裏切ったりすることもけっしてありません。もちろん小規模の洪水ひとつでもたいへんな苦難ですが、自然がわるいわけではなく、人間にはそれを回避する知恵や技術がないというだけの話です。「牙をむく自然」というような感覚と姿勢でいるかぎり、自然にたいする理解がすすむことはないでしょうし、さらなる苦難が訪れるのを避けることもできないと思います。