12月23日頃から住宅内部の壁塗りを本格的に開始しました。その数日前に目立たないところで試験的に塗ってみたのですが、いまひとつうまくいかなかったので、DVDやインターネットなどをあらためて参照して再度トライしました。
塗材は田中石灰工業製の「タナクリーム一日仕上げ」という製品です。主成分は石灰で、あらかじめクリーム状に水で練ってあり、ペール缶から取りだしてすぐに壁にコテで塗ることができます。また通常はこうした左官材料ははじめに下塗用(または中塗用)のものを塗り、それが完全に乾いたら次は上塗用のものを塗って仕上げるという2段階の行程が必要ですが、この「タナクリーム一日仕上げ」は同じ材料の1回目の表面が乾いたら短時間のうちに2回目を塗り重ねて、一つの壁面や小さな部屋なら文字通り一日で塗り上げることが可能です。
製品の特長としてはメーカーでは、1)湿度を調整し、結露からくるカビやダニを防止します。2)有害な化学物質が含まれておらず、廃棄されても環境に優しい素材です。3)悪臭やホルムアルデヒドなどのVOCを吸着する機能があります。4)静電気を発生させず、ビニールクロスよりもはるかに汚れにくいです。5)そのアルカリ性で、抗菌作用が長時間持続します。とありますが、実際に住んでみてどうかはまた報告したいと思います。ただ現在塗り作業をしている感じでは主観的ながら「嫌な感じ」はまったくありません。
同じメーカーの石灰主体の製品に、下塗りと上塗りとに分かれているものや、外壁にも使用できるものなどいくつかの製品があるのですが、その中でもいちばん手軽に使用できる左官材料といえると思います。ドゥーイットユアセルフやいわゆる日曜大工にも最適の材料ですね。ただしこの材料は塗る前に専用の水性シーラーを壁面に刷毛塗りする必要があり、石膏ボードが下地の場合と、アクが出やすい合板等の下地の場合とでそのシーラーの種類は異なります。シーラーは左官材の水分が下地に吸われて速く乾きすぎたりムラが出るのを防ぐためと、下地との密着度を高めるためです。また窓枠戸枠や床・天井などへの付着を避けるためにマスキングも必須です。
他のメーカーにも同様に石灰分をメインにしたものや、珪藻土や貝殻や火山灰をベースにした左官材料などがありますが、私が調べたかぎりでは今回の「タナクリーム一日仕上げ」がいちばん気に入りました。微細な骨材が入っており平滑になりすぎないマットな肌合いがとても好ましく、無垢材のフローリング&造作材や艶消しの木部塗装との相性も抜群です。
今回の施工は私自身で行うので、基本的には材料費がほとんどですが、おおよそ1平方メートル当たり1500円くらいでしょうか。本職の左官屋さんに頼むと材料と手間とで同3000円ほどになるかもしれません。
※じつは上記までは昨年末頃に書いた文章で、まだ乾燥室やトイレ・洗面脱衣室などの一部だけを塗った段階でのものです。その後に正月休みも返上し妻からも手伝ってもらいながら全部の部屋の壁を塗り上げたのですが、正直のところかなりたいへんでした。そもそもコテを使って左官材料を施すという作業自体がほとんど初めての体験で、道具の基本的使い方が身についていません。最初のうちは材料はぼたぼたこぼすし、手や体が汚れるし、当然塗りむらもひどいです。ようすを見にきた他の人は「おお、きれいにできてるじゃないですか」と言ってくれるのですが、自分ではとうてい納得できるものではありません。
それでも日が経つにつれてすこしづつは慣れてきて、時間的にも仕上がり的にも「素人としては及第点かな」と思える程度にはなってきました。水回りの器具の取り付けの関係もあって、トイレなどが先行し、リビングや玄関や廊下がその後、そして3つの個室が最後になったのですが、その最後の個室の塗り上がりが比較的よくできているという皮肉なことになってしまいました。
1回目は下地が透けるくらいにごく薄く1mmくらい塗り、それが乾いてから2回目をやや厚く2mm程度塗るのですが、一日平均で合わせて9m^2くらいのすすみ具合です。施工すべき内壁は全部で213m^2ですので、結局23〜24日(人工)ほどかかってしまいました。天井のクロスを貼ってもらった内装屋さんは、もし壁もクロスでやるとすれば8人工くらいかなと言っていたので、3倍の手間がかかったことになります。
材料の消費量は、メーカーによると20kg入りの一缶で標準施工面積が約10m^2とありますが、実際ほぼその通りでした。一度に厚く塗りすぎるとひび割れなどの施工不良の原因なるとのことです。また乾燥するまでは生石灰はかなり強いアルカリ性ですから、ゴム手や場合によってはゴーグル、また床の養生などは必須です。水で練ってあるので絶対に凍結しないようにもしなければなりません。今回は床暖房が12月28日から使えるようになったのでぎりぎりセーフでしたが、そうでなければ春まで工事を延期するところでした。