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ルネサンスに至る神々

DSCN1353_2私の詩の仲間である相蘇清太郎さんの第一詩集『ルネサンスに至る神々』です。写真は外箱とそれに付けた腰巻きですが、たいへんしゃれた美しい装丁(by 村上修一)です。

酒田市役所を退職されての第一詩集ということは、おおよそ40年間にわたる詩作の果実ということで、ひとのことはいえませんが寡作ではありますね。ただし詩自体はけっして古びた感じはありません。

同人詩誌『カイエ』に載せた連作の「ルネサンスに至る神々」をはじめ、23篇の詩が盛られていますが、いずれも日常的な平易な言葉使いながら、ときおり精神の暗い深淵に降りていく。氏がつねづね言うように、詩は趣味娯楽ではなく自らの生に根ざしそれを探求する切実な道程のようです。ルネサンスとは氏いわく「再生・復興」の意であって、農的環境のなかで生まれ育ち死んでいった者たち、イエとムラという束縛と豊穣との狭間で揺れ動いた精神に、ふたたび光を当てる行為です。氏自身は大学を出て以来ずっと市役所に勤めていたのですが、実家は古くからの農家だったので、精神的ルーツはやはり依然として農にあるということでしょう。

魅力的な詩はいくつもあるのですが、引用するには長くなってしまうので、ここでは目次の裏ページに記された蠱惑的な小文を紹介しましょう。

ルネサンスに至る神々は
お相撲さんではありません
プラトンのイデアでもないのです
人間の尊大さや卑小さを哄笑する巨人族でもなく
もっと暮らしに身近な代物です
さればといって山から下りてきたり
海を渡ってくる神々でもなく
もとより神社に祀る神々でもありません
また「死に至る病」としての絶望を
超越する精神でもありません
ルネサンスに至る神々は
苦しげに労働と幽明からの投企を繰り返し
菫の下を歩む汲々として自縛たる小人族なのです

 

階段

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遊佐町内の某宅の階段です。勝手口が実質的な玄関になっているのですが、既存のコンクリート製の段は高さ22cmあります。階段としてはすこし高めですし、足腰の具合がわるい奥様にとってはかなりきつい状況。それで段差を半分にして段数も倍に増やしました。踏み代が34cm段差が11cmという、たいへんゆるやかな階段です。これであれば誰にとっても上り下りが非常に楽ですし安全です。写真には写っていませんが階段にそって上のほうに横向きの手すり、引き戸をあけたすぐの柱面に縦向きの手すりも設置しました。

材料はすべてスギの無垢板です。踏板は厚み28mm、それを支える箱状の蹴込板と側板は22mmです。コンクリートの段と土間はかなり不陸(水平でない歪んだ平面のこと)があるため、蹴込板と側板の下端をそれに合わせて一枚ずつクセ取りをしています。さらにがたがたしたりずれたりしないように箱の内側とコンクリート面とを、厚いL型金具+ステンレスの木ネジ&コンクリート用ビスでがっちり固定しています。水平・垂直が出ていないところに正確に水平・垂直の構造物を新たに取り付けるのはなかなかたいへんですが、まあそれが腕の見せ所ですね。

踏板には滑り止め用にそれぞれクルミの桟を埋め込みしています。仕上げはポリウレタン塗料の2回塗りですが、必然的に現場塗装となるので、これも自分の工房内で塗装するのとくらべるといろいろとやっかいではあります。

 

水浸し

一昨日の朝、工房に行ってみたら台所のあたりが水浸し状態になっていました。前の晩と当日朝と強い雨が降ったので、てっきり屋根の雨漏れかとぎくっとしたのですが、どうやらそれではなく冷蔵庫の氷が溶けて外に流れ出したためのようです。

この冷蔵庫は、昼食用の食材や湧水のボトル、調味料などを保管する目的で工房のかたすみに置いているもので、容量90リットルくらいの小さなものです。冷凍室はありません。もう10数年ほど前から使っており、値段もかなり安いものだったせいか自動霜取り機能などは付いていません。そのためかしだいに厚く氷結した製氷室の霜が気になっていたのですが、気温が下がってきたのに合わせて庫内温度の設定ダイヤルを押し下げた際に、誤ってスイッチを0にしてしまいました。前日の夕方のことです。それで夜の間に徐々に氷が溶け出してしまったのですね。

溶けて床を水浸しにした氷は、それでも一部分だったので、この際ちょうどいいやということで、庫内の食材などを全部外に出して、土間に冷蔵庫を移してドライヤーで氷を全部落としてしまいました。最低気温が5℃くらいだったので夜間に溶け出した氷は一部分で済んだのですが、これが夏場だったら氷がすべて溶けてもっと悲惨なことになったにちがいありません。まあ二重の意味で不幸中の幸いでありました。

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マーブル

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わが家の飼い猫、マーブルが数日前に死んでしまいました。糖尿病の悪化による衰弱です。写真に撮られたりするのもあまり好まない猫だったので、適当な写真がなくて、1年半ほど前のトントといっしょに写っているものを部分拡大しました。

手の平に収まるくらいの大きさのときに妻が道ばたで拾い、何日も動物病院に詰めてかろうじて命が助かったマーブル。以来9年半の歳月をいっしょに過ごしました。毛布や衣類をめちゃくちゃかじったり、ウンチやおしっこをたびたび漏らしたりという困ったこともいろいろありましたが、わが家族にも他の猫にも多くの幸せをもたらしてくれました。

 

踏台&置台

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酒田市のお客様からLDK用の造り付けの戸棚を頼まれています。戸棚の製作はこれからですが、それに合わせて踏み台と置き台を先に作りました。1)既存のデスクと椅子に合わせた足乗せ用の小さな踏み台、2)戸棚の上のほうの物を出し入れする際のすこし高めの踏み台、3)ダストボックスを収納し、その上部を洗濯籠などを一時置く空間として活用するための置き台、の計3台です。サイズは幅×奥行×高さがそれぞれ以下の通り。
1)330×230×140mm
2)350×270×280mm
3)375×375×880mm

材料はいずれもオニグルミの柾目材で、セラミックタイプの二液型ポリウレタン塗料をつごう4回塗っています(下塗2回+上塗2回)。むろん無着色・艶消仕上げ。

これらは実用的な小家具そのもので、基本的には「用が足りればそれでいい」という類いのものです。しかし日曜大工の工作ではなく本職が他から注文されて作るものであるからには、それなりにちゃんとしたものでなければなりません。一般の方に「これくらいなら自分でも作れるよなあ」と内心思われてしまうようではプロ失格です。

 

紅葉の経ケ蔵山

先日、11月17日は子どもとよその子どもの二人を連れて、旧平田町の経ケ蔵山に登ってきました。この山は標高こそ474mに過ぎませんが、自然林が多く残る急峻な岩山で、多種多様な草木とすばらしい眺望を楽しむことができます。

登山道(ハイキングコース)は北側と南西側の2本あるのですが、いくぶん傾斜のゆるい南西側の円能寺口から登行しました。紅葉は最盛期をすぎたとはいえまだ充分美しく、また今の時期にしては珍しいほどの快晴にもかかわらず他の登山者も数人しかおらず、静かな山行をぞんぶんに味わうことができました。上りが2時間、下りが1時間半ですが、これはかなりゆっくりめのペースでかつ休憩も含めての時間です。ばたばたと駆け足で登下行するのでは逆にもったいないですからね。

私の子どもはこの山にはこれでたしか4回目の登頂ですが、連れの子どもは山らしい山は今回がはじめて。そのため怪我などがないよう私のすぐそばにぴったり付けて慎重に歩きました。途中で太いアカマツに登ったり、山頂では東屋の一部廃材でちゃんばらごっこもして楽しんでいました。

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逆光気味で紅葉がひときわ映えます。さまざまな落葉広葉樹がコースの左右を登山口から頂上までずっと彩る。

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道を行く小学2年生の子どもふたり。すこし山に慣れているほうをサブリーダーとして先頭に配し、リーダーの私は後尾でふたりのようすを見ながらゆっくり登る。

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頂上に近い展望台の座禅岩からの眺め。真東に見えるのはシナゾ森(616m)=写真左側。その右奥はたぶん大ワラソ森(698m)。シナゾの斜面には先日の雪が点々と残っている。

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山頂からの眺望で、シナゾ森の左遠方に小さく猪鼻岳(800m)、トヤソ森(818m)。そして最奥にこの山域の盟主たる弁慶山(887m)が頭をのぞかせている。弁慶山は別名「鳶口山(とびくちやま)」といい、その名前の由来であるチンネ(急峻な三角の衛星峰)もふたつ確認できる。

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頂上の東屋からは真北に雪化粧した鳥海山がよく見えた。

 

鳥海山 朝と夕方

昨日は一日快晴で鳥海山もたいへんきれいに見えました。写真は午前9時過ぎと午後4時に撮影したもの。標高1300mくらいまで白くなっています。平地の気温も最近は最低4℃まで下がっているので、いま見えている雪はほとんどこのまま根雪になってしまうでしょう。鳥海山が雪で真っ白になると朝日や夕陽がいちだんと映えて、ただ美しいというだけでなく荘厳さを強く感じます。

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だめな工業デザイン

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自宅のお風呂の混合水栓の一部をアップしたものです。湯と水がひとつの蛇口から出るようになっている「混合水栓」で、それぞれの水量の比率=水温と合計水量の調整をワンタッチで行えるようになっています(水温調整ハンドルは左側に位置しているので写真には写っていません)。

写真はその混合水栓の右端にあるハンドルで、シャワーと蛇口との開閉をひとつのレバーで兼ねています。上に上げるとシャワーから湯水が出て、下に下げると下方下向きの蛇口から湯水が出るしかけです。しかしその切り替え表示がたいへんにわかりづらいです。

写真中央よりすこし左寄りに、クロームメッキの水栓胴体に細かいエッチングで印した「シャワーヘッドとそれからの吐水」「ストップ位置の丸印」そして「蛇口とそれからの棒状の吐水」という、つごう3つのマークが並んでいます。しかし撮影するために水滴と水垢をきれいに拭き取った状態ですらこのような見え方なので、実際使用する場合にはたくさんの水滴と湯気などにじゃまされてほとんど印が分かりません。

また、ストップの位置はレバーが水平になった位置なのですが、クリック感が緩いので、よほど気をつけないとストップの位置を通過してしまって突然上からシャワーが降ってきたり、蛇口からのお湯が足元にじゃーじゃー流れてしまうことがよくあります。

自宅のお風呂なので基本的には家族3人しか使わず、表示や機構の不備を記憶と習慣で補ってなんとかなっていますが、家族以外の人で初めてかたまにし使わない人はまちがいなくとまどってしまいます。どこをどうしたら水が出るのか止まるのかわからなくて腹を立ててしまうかもしれません。裸ではそう簡単にひとを呼ぶこともできませんし。火傷するほどの熱湯は出ないような作りにはなっているとはいえ、この水栓は工業デザインの悪しき実例です。

お風呂は部屋・浴槽・ドア・鏡・棚板・水栓・シャワーヘッド・手すり・照明などもみなセットになっているユニットバスでTOTOの製品です。TOTOといえばまず知らない人がいない衛生陶器・住宅設備機器の最大手です。そのような有名大企業の現行製品がこのていたらくとは。工業デザインの基本を軽視したデザイナーもほんとうに恥ずかしいかぎりです。見てくれはどうでもいいとは決して思いませんが、道具としての安全性と耐久性、そして常識レベルでの使いやすさという必須要件をまず満たしてからの話であることは論を待たないでしょう。

 

削り直し

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長さ168cm・幅80cm・高さ65cmのダイニングテーブルと、幅・奥行・高さとも38cmのスツールとを削り直し再塗装しています。テーブルは甲板、スツールは座板だけのリニューアルですが、刻印を見ると1991年6月とありますので、22年前に当工房でご注文にて製作させていただいた家具であることがわかります(ほかにベンチと椅子も作ったのですが、そちらはそのままです)。

さすがに長年の使用で傷や染み、反りなどが出ていたので、鉋できれいな地肌が表れるまでせっせと削り、サンディングペーパーをたんねんにかけました。またもとの甲板は耳付きの板だったのですが、白太の柔らかい部分が衝撃等で欠けてしまっているところがあり、ベンチでの出入りの際に衣類がひっかかることがあるということで、結局両方の木端=白太のほとんどを切り落として直線としました。

耳付きの板はたしかに趣はありますが、使い勝手の上では難があることは否めません。ことに湾曲・凹凸の程度が大きかったり白太部分が老け気味、あるいはそもそもが赤味に比べて軟弱な材種の場合は、普段使いの家具には不向きといっていいかもしれません。今回のテーブルはお客様からのご希望もあって耳付きにしたものであったのですが、はからずもそのことによるマイナス面もはっきり出てしまいました。テーブルやデスクなどはやはり直線のシンプルな形がいちばんです。

サイズ的には直線化する前の甲板の最大幅(奥行き)は90cm近くあったのですが、白太を落とした後の寸法は79.5cmです。家庭のダイニングテーブルとしてはこれだけあれば充分でしょう。「大きなテーブル」というと長さだけでなく幅もつい大きくしがちですが、使い勝手とすれば90cmくらいが限度で、それ以上大きいテーブルは相手との距離感がありすぎる、またはテーブル中ほどに置いたものを取るときも取りにくいなどの不都合があります。したがってもっとも実用的で使いやすい甲板の幅は85cm前後かと思います。逆に最小寸法は75cmくらいで、これより狭いと両面使いにした場合は食器等を並べきれないことがあります。

 

夜のキッチン

コーヒーや紅茶などを夜遅くなってから飲んでも、私は睡眠にとくに影響はありません。それで家族が寝静まってからキッチンでお湯をわかすことがときどきあります。全室床暖房なことをいいことに依然として各部屋の建具は未完成のままになっているので、家族の眠りを妨げないようにレンジフードの小さな明かりだけ点けています。

キッチンとリビングとのしきりを兼ねた大きな戸棚の中ほどに窓のような開口を設けてあるので、リビングのほうからもガスコンロの加熱具合など、キッチンのようすが分かります。また戸棚天板と天井とは40cm離れているので、完全な壁でしきられるのと違ってそれなりに開放感があり、リビングが狭苦しくなるのをふせいでいます。

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