だめな工業デザイン

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自宅のお風呂の混合水栓の一部をアップしたものです。湯と水がひとつの蛇口から出るようになっている「混合水栓」で、それぞれの水量の比率=水温と合計水量の調整をワンタッチで行えるようになっています(水温調整ハンドルは左側に位置しているので写真には写っていません)。

写真はその混合水栓の右端にあるハンドルで、シャワーと蛇口との開閉をひとつのレバーで兼ねています。上に上げるとシャワーから湯水が出て、下に下げると下方下向きの蛇口から湯水が出るしかけです。しかしその切り替え表示がたいへんにわかりづらいです。

写真中央よりすこし左寄りに、クロームメッキの水栓胴体に細かいエッチングで印した「シャワーヘッドとそれからの吐水」「ストップ位置の丸印」そして「蛇口とそれからの棒状の吐水」という、つごう3つのマークが並んでいます。しかし撮影するために水滴と水垢をきれいに拭き取った状態ですらこのような見え方なので、実際使用する場合にはたくさんの水滴と湯気などにじゃまされてほとんど印が分かりません。

また、ストップの位置はレバーが水平になった位置なのですが、クリック感が緩いので、よほど気をつけないとストップの位置を通過してしまって突然上からシャワーが降ってきたり、蛇口からのお湯が足元にじゃーじゃー流れてしまうことがよくあります。

自宅のお風呂なので基本的には家族3人しか使わず、表示や機構の不備を記憶と習慣で補ってなんとかなっていますが、家族以外の人で初めてかたまにし使わない人はまちがいなくとまどってしまいます。どこをどうしたら水が出るのか止まるのかわからなくて腹を立ててしまうかもしれません。裸ではそう簡単にひとを呼ぶこともできませんし。火傷するほどの熱湯は出ないような作りにはなっているとはいえ、この水栓は工業デザインの悪しき実例です。

お風呂は部屋・浴槽・ドア・鏡・棚板・水栓・シャワーヘッド・手すり・照明などもみなセットになっているユニットバスでTOTOの製品です。TOTOといえばまず知らない人がいない衛生陶器・住宅設備機器の最大手です。そのような有名大企業の現行製品がこのていたらくとは。工業デザインの基本を軽視したデザイナーもほんとうに恥ずかしいかぎりです。見てくれはどうでもいいとは決して思いませんが、道具としての安全性と耐久性、そして常識レベルでの使いやすさという必須要件をまず満たしてからの話であることは論を待たないでしょう。

 

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