厳冬期の猿穴

 

2月26日に鳥海山・飛島ジオパークのガイドの仲間と、鳥海山西面の観音森(685m)と猿穴(763m)に探索に行く予定ですが、計画&呼びかけ人の私は2月19日に下見に行ってきました。「探索行」と名うっているのは伊達や洒落ではありません。観音森は古い火口丘ですが、猿穴は約3000年前に大量の溶岩を日本海まで流出させた噴火口跡です。その噴火口も地図には猿穴ひとつしか載っていませんが、じつは周辺に他にもいくつかあるらしいことがわかりました。

昨年11月12日と16日に行って、猿穴とその東側・北東側に他の噴火口跡があることまでは確認できたのですが、それ以上は猛烈な薮に阻まれたことと時間切れのため中断せざるをえませんでした。なにしろ「道なき道の山登り」をふつうにやってきた私でも根負けするほどの密生し曲がりくねったたいへんな薮です。これでは見通しのきかない夏場は無理だろうということで、積雪のあるうちに下調べをして見当はつけておくべしとひそかに思っていました。

それで2月19日に単独で下見に出かけたのですが、だいぶ締まってきたとはいえ観音森集落から10km近くの雪道をラッセルしながら登るのは、体力の衰えを痛感する私にはじっさいのところかなりきびしい。それで前に冬期に登ったことのある観音森はパスして、猿穴にのみ向かうことにしました。おそらく1週間程度前のものと思われる足跡がついていましたが、その日は他にはいっさい人影がありません。試しにと思って入手したアルミのスノーシューを履いていったのですが、具合はいまひとつです。平地や緩斜面はいいのですが、すこし急な斜面の登行やトラバースはだめですね。やはり輪樏(わかんじき)がおすすめです。

林道と一部林間の登行とを交えて2時間40分かけてやっと猿穴に到着しました。その後1時間半ほど猿穴周辺を探索したのですが、大きな収穫がふたつありました。
1)猿穴の北側一帯にも、明瞭なすり鉢形状ではなく規模も小さいが、10カ所以上の噴火口跡がある。単なる地面の凹凸ではない。
2)猿穴をのぞく他の噴火口跡に風穴(ふうけつ)を少なくとも5カ所確認。

 

追記 2月26日にジオパークのガイド仲間3人と再度猿穴に行ってきました。小猿穴の風穴でできた雪面の穴の温度を調べたところ、外気温マイナス1.1℃に対し穴の中の雪上より1.5m下の気温は0.7℃。つまり1.8℃の温度差がありました。また猿穴の内壁北西面にも2/19にはなかった風穴らしき穴が対岸からですが見えていました。

猿穴&小猿穴の北側一帯の小さな噴火口跡群は、ちょうど標高740mの等高線に沿うような形で小高い縁が半周しており、その大きな凹みの中に噴火口跡がたくさんあるといった案配のようです。風穴による雪面の穴は前回同様いくつかありました。

新たな積雪が前回より多かったので、交替でラッセルしながらも、観音森集落から猿穴の登り口まで3時間もかかってしまい、予定していた観音森登頂は時間と体力の関係でまたもや見送りとなってしまいました。

 


猿穴までの行程の後半は観音森林道をひたすら歩く。カモシカやタヌキやテンとおぼしき足跡があるものの、獣や鳥などの姿はない。風はそれほど強くはないものの、気温はマイナス5℃くらいか。雪は吹きだまりをのぞけば10cmくらいしかもぐらず、歩くには比較的楽なほう。樹々に積もった新雪が美しい。


猿穴到着。観音森集落から2時間40分もかかってしまった(夏だと2時間弱)。積雪は3mくらいか。私のカメラでは猿穴の全景(直径約80m)は1カットには入らないので、左から右へと3枚に納めた。1枚目には遠景に川袋川上流と大平北の噴火口跡などが写っている。3枚目の右端には平野部(遊佐町杉沢地区)もすこしのぞいている。


1枚目は、猿穴の東側にあるすり鉢状の噴火口跡。直径は約25m。形状的には猿穴に似ており近接しているので「小猿穴(こさるあな)」と呼ぶことにする。南東側の縁から北東方向を眺めたもので、噴火口縁の最高点の小ピークの左下になにやら岩が露出しているところがある。その露出したところが2枚目の写真であるが、雪庇をかわして近づくとなんと暖かい空気が立ちのぼって来た。この下に風穴(ふうけつ)があって地中から暖かい空気が煙突のように上がってきているのであろう。穴の幅は2mほど。予想外の発見に小躍りする。


猿穴と小猿穴の北側一帯にも、すり鉢状のはっきりした噴火口跡ではないものの、小規模かつ非円形の噴火口跡がすくなくとも10カ所以上あった。雪面の凹凸がそれである。遠景のなだらかな稜線は猿穴の噴火口の縁。


猿穴と小猿穴の北側一帯の噴火口群のうち、猿穴に最も近い噴火口跡のところにあった風穴(ふうけつ)。幅は3mくらい。雪面にぼこぼこと穴が開いており、覗くと数メートル下まで地下道のようになっている。風穴そのものはその地面のところにあるのだが相対的に暖かい空気が常に出ているので、雪が積もらないのだと思う。


猿穴の頂上(噴火口縁の最も高いところ)付近からほぼ真西に直線で1.25km離れたところにある観音森。遠景は日本海で、観音森頂上の右斜め上にうっすらと飛島が見える。観音森上部には高木が生えておらず麓からも真っ白に見えるのは、一度皆伐されて昭和30年代くらいまで牛馬の採草地であったため。たしかに強風がもろに当たるとはいえ、それだけで樹が生えないわけではない。


同じく猿穴の頂上付近から庄内平野を展望する。日本海と庄内砂丘が鶴岡くらいまで見えている。中景に白く点々とあるのは雪をかぶった建物の屋根やビニールハウスなどであろう。

 

13年前の丸池様

 

自分のパソコンに収納されている、自分で撮影した写真を整理していたら、2004年6月29日の丸池様が出てきました。つまり13年前の丸池様ということです。鳥海山南西端の吹浦地区の箕輪にある丸池様は、鳥海山から約10万年前に流れ出してきた溶岩流の末端にある、湧水だけからなる直径約20m、水深約3.5mの池です。

丸池神社の社叢林なので原生的な自然・植生が比較的よく保たれているところですが、数年前から急激に観光客や写真愛好家が増えたことで池畔の植生、とくに草本がかなり失われてしまいました。とくに歩道・林道に近い東側と北側はほぼ丸裸に近く地面が露出してしまっています。裸地化してしまうとすこし強い雨が降ると土砂が容易に池に流入してしまいますし、景観的にも池の美観が損なわれてしまいます。

これについては昨年(2017)夏の「鳥海山・飛島ジオパーク」認定に対する現地審査の際にも審査員から「早急な保全対策が必要な案件」として指摘されています。遊佐町役場からは年度内に歩道・車道と池畔との境界にロープをめぐらすなどの対策を行うという言葉をきいています。

私は数十年前からたびたびこの丸池様を訪れているのですが、私の記憶に中にあるかつての景観とここ2、3年くらいの景観とのちがいに落胆していました。ただ記憶は一般的にいうならけっこうあいまいなところがあって、思い違いであったり実際のものより美化しがちです。しかし下の写真を見ると池畔の植生が近年まではわりあいいい状態で保たれていることがはっきりとわかります。あらためて現況との落差に驚きました。まさか後年、ここまで荒れるとは予想しなかったので、畔そのものに重点を置いて撮影した写真ではないのが残念ですが。

下の写真の最後の1枚は昨年(2016)6月5日のものです。どうか上4枚の写真と比べてみてください。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

黒柿のキーホルダー製作中

 

昨年11月の個展などで黒柿のキーホルダーがわりあいよく売れて、在庫が少なくなってきたので追加製作しています。もっとも蓋付きの刳物やペーパーウェイトを作った際の残りの端材を利用しての製作です。サイズが仕上がりで16×16×80mmなので、これにて最後までほぼ全部使い切るということになります。

他の材料であれば加工の手間を考えると大きな材料から木取をして一気に下拵えをし、あとは長ネギを切るみたいに個別にカットしたほうが断然コストがかかりません。小物の場合はどだい材料費はたいしたことはなく、コストの大部分を加工費が占めるので、材料を節約するよりも加工の手間を短縮したほうがいいということです。しかし黒柿の場合は別で、材料単価が桁違いに高いことと材料そのものが急激に品薄になってきているので、端材の端材までとことん使うようにしないといけません。

 

上の写真はキーリングを通す穴をあけ、所定の寸法にカットしたものを1個ずつサンディングしているところです。サイズが小さい上に木目も複雑にうねっていたりするので鉋がけはリスクが大きすぎ。そこで昇降丸ノコ盤でよく切れる丸ノコの刃でできるかぎり正確にきれいに4面をカットしたあと(専用の治具にホールドしてです。そうでないと超危険!)、厚手のガラスにサンディングペーパーを貼った上でキーホルダーを前後にすりすりします。ペーパーは番数を変えながら行いますが、機械の刃の跡などが完全になくなるまで研磨します。面取りは当てゴムにセットしたサンディングペーパーで。

一見したところ単純作業のようですが、木口も垂直に立ててこの方式で磨きますし、片減りしないように圴一な圧力を加えつつ水平移動するのはそれほど簡単なことではありません。

 

次の写真はサンディングが終わったものを塗装しているところです。これで全部ではなく、部分的な写真です。小さくて数があることと、穴の中まで塗装する必要があるので、最初の下塗りは刷毛塗りではなく「ドブ漬け」です。つまり品物全体がすっぽりつかるくらいの量の塗料に丸ごと浸して塗料を吸収させます。それを割箸でつかんで釘にひっかけて乾燥させます。

原則として計4回塗装するのですが、2回目以降は塗料はもう中にはしみ込まないので、1面ずつの刷毛塗りになります。塗装後、ステンレスの径30mmの専用キーリングを穴に通せば完成です。

 

コーヒーブレーク 99 「イースター島」

 

 

雪しまき太平洋絶滅孤島イースター

[ゆきしまき たいへいようぜつめつことう いーすたー] イースター島はチリ領の太平洋状にある孤島で、直近の有人島までの距離でも2000kmもあるという究極的な絶海の孤島である。この島の歴史については諸説が入り乱れており、はっきりしないところが多い。名称にしても1722年の復活祭の夜に、オランダ海軍の船によって発見されたのでイースター島というというくらいのいい加減さである(現地名はラバ-ヌイ)。/一般に有名なのはモアイという巨大な石像であるが、これについても起源や意味あいなどについてはさまざまな説があってはっきりしない。かつてはロンゴロンゴという絵文字があったが、1862年のペルー人による奴隷狩りによって識字層が全滅したために、現在にいたるまで解読はできていないという。

凍滝の骨髄を駆くる瀧なり

[いてだきの こつずいをかくる たきなり] 滝は瀧とも書く。見てのとおりで、龍そのものである。落下する水を逆に天に昇っていく龍とみたわけである。それは必ずしも空想だけの産物ではない。体験している人もいるだろうが、滝の落水をじっと眺めていてふと滝のすぐそばの岸壁に視線を移すと、岩がぐぐぅ〜とせり上がってゆくように見えるからである。これは古来より「龍の滝登り」と言われている。/鳥海山の渓流でも龍の名前を付した滝はいくつかあり、龍ヶ滝や竜頭滝などはよく知られている。ただし量の寡多はともかくとしても鳥海山はいたるところに湧泉(湧水が出ている場所)があるので、完全な氷瀑=アイスフォールになることはまずない。表面は凍っていてもその裏の岩肌に接するところには湧水が流れていることがふつうである。そのためすこし気温がゆるむと一気に氷が落下崩壊するので要注意だ。

川に沿うて川の行きたる冬野かな

[かわにそうて かわのゆきたる ふゆのかな] 涸川や涸滝は冬の季語である。歳時記にも、冬になると降水量が減り、湖沼や河川の底が見えたり滝の落水が止まったりするという説明があるが、しかしそれはいわゆる表日本や西日本の太平洋側のことであろう。たしかに当地でも冬は雨ではなく雪に変わることによって、降った水が間を置かずに河川に流れこむ割合は減るので川の水量はだいぶ減ってしまう。夏場とちがって急な増水ということもまずないので、堰堤や堤防を築くなどの大規模な河川工事はこの時期に行われるのが通例である。しかし涸川とか涸滝とかという印象はまったくないな。水はふつうに流れ、落下している。それはつまり冬場でもあちこちから湧水が流れ出しているからであり、気温が低いので夏場とはちがって蒸散量は大幅に減るからである。

 

竹用ドリル

 

「竹用ドリル」と名うっていますが、当然木材や樹脂類にも使用できます。木工用の各種ドリル類で有名なスターエムの製品です。

いつもは木に丸穴を開けるのに先三角(先端の中心部の出っ張りにネジが切られていないタイプ)のショートビットのドリルを使っているのですが、当工房の定番製品である黒柿等を素材としたキーホルダーにキーリングを通す径9mmの貫通穴を開けるのに今回初めて使いました。

木や竹は言うまでもありませんが植物なので物性は均一ではありません。繊維が発達していて方向性が顕著ですし、春材と秋材、白太と赤味など、部分によって硬さの差もかなりあります。そのためドリルで穴をあけても刃先が繊維や硬さの差の影響を受けて逃げてしまうので、正確できれいな穴にならないことがよくあります。それでも通常は隠れてしまう穴なので「まあ、いいか」という感じなのですが、このキーホルダーのリング穴のように完成してからももろに表に見えてしまうような穴の場合は困ります。

これまでは先三角のショートビットのドリルの刃先をまめに研いだり、裏に当て木をしっかりあてたりして対処していましたが、それでも不良品がいくらか出てしまいました。これではいかんとということで、以前から目を付けてはいたものの値段も倍くらい高いこともあってこれまでは手を出さないでいた竹用ドリルを使うことにしました。

結果はすばらしいです。回転軸に対して毛引刃が左右対称に2枚あり(従来のドリルは毛引刃は片側に1枚だけ)、刃先も鋭く尖っているので、材の影響をあまり受けることなくきれいに精度よく穴を開けることができました。いまとところ穴開けの不具合による不良品はゼロです。

1枚目の写真は端材のクルミ材に試しに貫通穴を開けたもので、出口側(下面側)のものです。左が竹用ドリル、右が従来のドリルです。下面に当て木をしっかりと密着させて開けたわけではないということもありますが、右側はあきらかに穴が壊れてしまっています。左側は完全ではありませんが、右とは雲泥の差があります。

2枚目の写真は刃先のアップです。左の2本は竹用ドリル、右の1本は先三角のドリルですが、先端の形状が大きく異なることがわかるかと思います。ラインナップとして径3〜21mmまであり、部分的に0.5mmちがいの径のものもそろっているので、ダボ埋めの下穴開けなどにも最適です。

 

忘れ物のピッケルと輪樏 2

 

2月10日の当ブログで取り上げた、胴腹ノ滝の駐車場のところに誰かが置き忘れたとおぼしきピッケルと輪樏(わかんじき)ですが、友人に頼んでフェイスブックにも取り上げてもらったほかに、11日にその駐車場に行って下のような掲示をおこないました。7日に回収して乾燥や錆び止めを施し、写真を撮ってA4のラミネートをしたものです。フェンスのすぐ下まで積雪があったので、この掲示が雪に埋もれてしまわないように除雪もしました。

これでなんとか持ち主が見つかればいいのですが、しばらく様子をみても音沙汰がないようであれば警察に「落とし物」として届けるつもりでいます。

 

話は変わりますが、この11日は翌日の「鳥海山二ノ滝氷柱探勝会」(有料2000円)の準備のために遊佐町役場や観光協会の方などが10名ほど道付けや資材運搬などで出ていました。ところがこれを幸いとばかりに無関係の一般の人が車で10台ほど乗り付け、その道付けをしたばかりのトレースを利用して二ノ滝に向かったようです。探勝会が終わってからならともかく、その本番前に「ただ乗り」で利用するのはよくないと思います。こういう輩を当地では「つらつけね!(面着けね!)」といいます。

そのうえ、さらに困ったことに翌日の本番にそなえて除雪をきれいに行う予定だった駐車場に、スノーモービルを持って来たらしい車が2、3台置いてありました。探勝会の案内には「現地には駐車スペースはありません」という注意も記されているので、これは確信犯ですね。この状態では除雪車が入れません。ウマシカ野郎です。

胴腹ノ滝の駐車場のところから二ノ滝までは夏道でも徒歩で2時間くらいかかりますが、もしこれを積雪期に自分でラッセルしながら登るとしたら3〜4時間はかかるかと思いますし、かなり体力を消耗するでしょう。それが踏み跡がしっかりついていて二ノ滝まで迷うことなく楽に行けるのは、多くの方の協力があればこそですし、有料で探勝会に参加する多くの方がいるからこそ。再度言いますが、ただ乗りはいかんです。強制はできませんがせめてカンパでもしてくださいな。お願いします。

 

忘れ物のピッケルと輪樏

 

鳥海山南西面山麓の湧水の滝、胴腹ノ滝には湧水の調査と自家用の飲料水の水汲みとを兼ねて月に2〜3回尋ねていくのですが、前回2月4日に行った際に駐車場のすぐそばの雪面にピッケルと輪樏(わかんじき)が差してありました。他の自家用車が2台置いてあったので、その人のものかもと思ったのですが、調査等を終えてもどってきてもまだそのままになっています。

あらためてよく見ると昨日今日残置したのではなさそうです。ピッケルも錆が生じていますし、樏はずぶぬれ状態。しかし一時的なデポ、または忘れ物や落とし物だとしても、冬山には絶対欠かせないとてもだいじな道具なので、持ち主がきっと気づいて取りに来るだろうということで、メモだけはさんで帰ってきました。

ところがその後数日して他の人が胴腹ノ滝を尋ねたときの写真にこのピッケルと輪樏が先日のままの状態で写っていました。フェイスブックにアップされていた写真のなかの1枚にです。ということは私が見てからさらに数日は放置されているわけで、このままでは確実に道具がだめになってしまいます。そこで翌日の朝、そのピッケルと輪樏を回収することにしました。

下の2枚の写真はそのピッケルと樏です。ストーブの近くに置いて乾燥させ、ピッケルの金属部分に浮いていた錆はざっと水研ぎペーパーで落としました。樏は爪がかなりすり減って丸くちびています。ピッケルには東京トップの製造とわかる「Top Snowman」という文字が刻まれています。NO.STEELとあるのは材質が「白紙1号」「青紙2号」などのヤスキ鋼を使用しているという意味かもしれません。木製の柄はたぶんホワイトアッシュかヒッコリーでしょう。

さてどうやって持ち主を捜すかですが、とりあえずは本ブログへの投稿です。その他にもいくつか手だてを考えていますが、追ってまた紹介していきます。 もしこの記事を見てなにか情報をお持ちの方がございましたら当工房までご連絡ください。→電話0234-64-3119  master@e-o-2.com

 

スタンドミラー

 

昨年の11/2〜8に地元酒田市のデパート、清水屋の画廊で行った個展で、展示品の追加製作や特注品としてこしらえた小物類7種類の最後の品物です。個展には壁掛型の450×450mmのミラーを展示したのですが、それより二まわりくらい小さいサイズで、机上に置いて使うスタンド型のミラーをというご注文でした。

材料はオニグルミ(鬼胡桃)で、サイズはフレーム寸法で幅264mm、高さ297mm、厚さ28mmです。ミラーのガラスは厚さ5mmなので、けっこう重さはあります。ミラーは下桟の間から差し込み式とし、またミラーの裏面の反射用コーティングを傷つけないように2mm厚の乳白のアクリル板を添えています。

問題は角度可変式のスタンドの機構をどうするかです。市販品によくあるような独立自立したスタンドに回転式にミラーを付けるというのが常套的な方法です。しかしそれだとどうにもスタンドがじゃまなように見えるので、下の写真のように位置可変の差し込み式のスタンドにしたのですが、いちばん安定的な取り付け位置は結局決まってくるので、「5段階の差し込み位置変更可能」はあまり意味がなくなってしまいました。

軸は位置固定+回転+締め付け式、スタンドの長さは伸縮式とするのがもっとも使い勝手がいいように思いますが、木製の単品でその仕組みにするには手間・コストがかかりすぎます。次回の課題とします。

 

 

地吹雪&まぶ

 

 

数日前のことですが前夜から天気がひどい荒れ模様で、降雪の量はたいしたことがないのですが風がとても強くて当地名物の「地吹雪」が発生していました。一度地面に積もった新雪が強風で舞い上げられて吹雪のようになってしまうのを地吹雪といいます。したがって空は晴れて青空もときおりは見えるのに、下のほうは猛烈な吹雪となって視界がほとんど効かないこともあります。

上の写真は朝、自宅から工房に向かう途中に車から写したものです。もちろんやや地吹雪が弱くなって視界がすこし開けたすきをぬって撮影しました。この直前までは視界一面が真っ白で天地の区別がつかないホワイトアウトの状態。対向車もライトを点けていてもすぐ近くにくるまで分からないので、とても怖いです。だからといってあんまりゆっくり走っているとこんどは後ろから追突されるおそれがあります。四面楚歌ですね。

今は主要な道路には防雪柵が設置されているのでだいぶ良くなりましたが、30年くらい前までは主要道すらも地吹雪のために一時閉鎖されることが一冬の間に数回あったほどです。無理に運転して他の車やガードレールに衝突したり、路肩を見失って田んぼに転落などということも珍しくありませんでした(私はそこまでの事態になったことはありませんが)。

さて地吹雪の中をやっとのことで工房に到着して室内に入ると、窓という窓が下の写真のような状態。ガラスに雪がさざ波のような模様となってへばりついています。こういった風による吹きだまりを「まぶ」と当地では呼んでいます。語源はいったい何でしょうね?

 

鶯餅と桜餅

 

私は昼食はたいてい工房で自炊しています。そのため漬け物や野菜などを買いにときどき地元の産直の店に行くのですが、昨日はなんと鶯餅と桜餅が並んでいましたので、家族のぶんも含めて3個入りを何パックか買ってしまいました。餡子ものが大好きな私は、しかも大手の製菓メーカーのものではなく、地元の方が「手作り」して持ってきたばかりの鶯餅と桜餅とあっては、とうてい素通りするわけにはいきません。

写真は私が10年くらい前に初めて旋盤でこしらえた木の器です。練習のつもりで作ったものなので今いちのできで売り物にはなりませんが、自家用には重宝しています。材質はシナノキ。これに鶯餅と桜餅を載せると、よけいに美味しそうですね。

2月4日は立春で、たまたま今回は晴れて暖かい日でしたが、例年だと厳寒期で地吹雪が吹き荒れたり、室内の水にも氷が張ったりします。春なんてとんでもありません。日差しこそ長くなり春がすこしずつ近づいて来てはいますが、ほんとうの春到来はまだまだ先です。言うまでもないことですが、立春になったから春になるわけではありません。暦上の観念的な季節感にしたがうのではなく、自分がいま住んでいる場所と自然の、自分自身の実感にもとづいた季節感覚をなによりもだいじにしたいと思います。

鶯餅も桜餅も、実際に桜が咲き鶯が樹に飛んできてさえずる頃には、いえそれよりもずっと早くに店頭から姿を消してしまうのが実に残念です。季節を先取りするとはいっても程度問題でしょう。