コーヒーブレーク 4 「石棺」

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かまくらのなかにかまくらつくりいし

雪をドーム状に積み上げ横から穴を掘って中に人が入れるようにしたものがかまくらであるが、語源的には「神座」とも「竃蔵」ともいわれる。私も子どもの頃からよくこしらえたが、積雪がさほど多くないので必要な量の雪を集めてくるのが一苦労なのと、真冬でも気温が0度を上回ることが珍しくないためにせっかく作ったかまくらが短時日のうちに崩壊してしまうのが残念。しかしうまく大きくかっこうもいいかまくらができたときはともだちも呼んで、餅や蜜柑やお菓子を食べたり花札をしたりして遊んだ。なにしろ家の材料が雪なので、壁に厚みがあればしごく簡単に棚を作ったり、大きめのくぼみの中にミニかまくらを作ったりすることもできる。自分だけの秘密のポケットをこしらえたりも。

大寒の石棺のごとくに日本列島

石棺という文字をみるとチェルノブイリの原発事故を思わないわけにはいかない。事故を起こし大量の放射性物質をばらまいた原子炉および建屋を鉄材とコンクリートですっぽりと封じ込めたあの「石棺」である。むろんもともとは死者を祀るために石材でこしらえた棺の一般的な言葉のはずなのだが、チェルノブイリ以降すっかりその意味がかわってしまった。むしろ前後の文脈などもいっさいなしに石棺ということばを出されたときに、第一義としてチェルノブイリのそれ、第二にそれ以外の意味での石棺の意がくるのが当たり前になってしまったように思う。おそろしいことだ。/そして今、2011年3月11日以来、程度や濃淡の差はあれど日本国全体が放射能におびやかされている。宇宙から眺めたらごつごつたる山河が雪に覆われた日本列島は、まるで石棺のようだ。

剪り口に血のにじみや水仙花

水辺に咲く水仙の花。ここらでも雪が溶けて地面が黒くのぞくようになると真っ先に咲く花のひとつである。人家の周りや道路のそばなどでよくみかける花であるために昔からある日本の原風景のように思うのだが、じつは原産地は地中海沿岸地域であって、中国を経由して古くにわが国に渡来した。植物にしろ動物にしろ太古からの「地のもの」とすっかり信じられているものの中には、ほんとうは海外から人為的にもたらされたものは少なくない。/さてスイセンはヒガンバナ科Narcissus(クロンキスト体系ではユリ科)に属する一群の植物の総称で、多年草で冬から春にかけて花を咲かせる。花びらは6枚だが、外側3枚は萼(がく)で内側の3枚が本来の花弁(かべん)、そしてその6枚をあわせて花被片(かひへん)という。また中心部にある筒状のものが副花冠(ふくかかん)である。…という具合に花の仕組みも素人には一筋縄ではいかない複雑さがあるが、ある程度の知識をもっていれば花を眺める楽しみが倍加することは確かだ。水仙は全体が有毒で、牧場などで水際に水仙が連なっていることがあるのは、牛や馬や山羊などが水仙に毒があることをわかっていて食べないことによる。

 

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