製材された板や角材などを、製作するものに応じて再度のこぎりで引き割ります。たいていは昇降盤と呼ばれている円盤状の刃の付いた機械で行いますが、材木を繊維に沿って縦に切るのか、繊維を横や斜めに断つようにして切るのか、切断の精度や効率はどの程度のものが要求されるのかなどによって何種類もの刃を使い分けます。
写真の刃もそのひとつで、下のアップの写真ではKENEFUSAのブランド名の下に細かい数字で305×2.0×1.5×25.4×50×CNと記してあります。左から刃の直径305mm、刃幅2.0nn、ノコ身厚さ1.5mm、中心の穴径25.4mm、刃数50、タイプはCN、という意味です。縦挽専用の刃で新品です。刃先に溶着されている超硬合金チップはPRO-Kという種類。材木の抵抗による刃先のぶれを抑え、摩擦熱を逃がすための特殊なスリットが2種類、5カ所にほどこされています。この刃は機械刃物の専門メーカー、兼房(カネフサ、KANEHUSA)のものですが通常のカタログには載っていません。掲載されている刃よりもっと薄く、かつ50枚刃のものがほしかったので、兼房の営業所に直接電話し希望を伝えて送ってもらいました。
縦挽専用刃で直径305mmのものは、じつはほかにも3枚あるのですが、1枚はまったく同じもの、2枚は昔購入した他のメーカーのものです。1枚は丸鋸昇降盤を購入した際におまけで付いてきたものだったかもしれません。一見したところでは、さしたる違いはないようですが、実際に仕事で使ってみると切断精度や耐久性に大きな差があることが分かります。他の2枚の刃は値段は安いし、大きめのホームセンターなどでも売っているたぐいのものですが、刃先は肉眼でみても分かるほどぶれるし、長持ちしません。今回1枚同じ刃を追加注文したのも、研磨に出した刃のかわりに装着した刃が、研磨済みの刃にもかかわらずぶれが大きく「これじゃ仕事にならん」と感じたからです。切断面にナイフマーク(刃先の跡)がくっきりというのでは話になりません。
当工房で使用している機械用の鋸刃はほとんどが兼房のものです。もちろんすべての刃が他のメーカーのものより優れているということはおそらくないでしょうが、弱小零細木工所としてはいくつもの刃を試用し比較テストしてから採用&購入などということはできるはずもありません。つまりこれまでの経験則からいって兼房の刃にしておけばまず大きなはずれはないだろう、ということです。