引き戸やドアなどの木取をしているのですが、材料のスプルス(スプルース)があまりにも良すぎて逆に困ってしまいました。本来建具用の材料なので、厚さは40mm、長さは2000〜3000mmくらいで、基本的には無地(節や入皮・虫食い・変色などの欠点がほとんどない材)の柾目の板なのですが、問題はその幅です。
写真はその材料の一部ですが、幅が390〜410mmもあります。無地の柾目板で幅を取るのはなかなか難しいのですが、400mmともなればもう超弩級の材料といっていいと思います。樹皮に近い耳の部分と、割れや変形が生じやすい「未熟材」を含む芯部分を除けて製材してあるので、原木の太さは径90cm〜1mはあるでしょう。尺幅、つまり30cmの無地柾板というのが、製材するときの最上級の目安のひとつなので、さらにそれを大きく超える40cm前後の無地柾目板というのは、いかに蓄材豊富なアラスカ産の針葉樹とはいえたいへんなことです。
木取をするには、サイズが大きくて目立った欠点もない無地や準無地の材料なら「どこから何をどう取るか」頭が痛くなるほど悩む必要はなくなるので楽でいいのですが、それも程度問題。あまりにも良すぎる材料をカットするのはコストパフォーマンスの面からいっても、また心理的にも非常に抵抗があります。「良すぎるので逆に潰せない」というやつですね。一度刃を入れたら元には戻りません。できれば細かく切らないでできるだけ大きいままの状態で使いたいという誘惑には勝てそうにもありません。
たとえばですが、上記の40cm幅の板を2枚合わせれば、長さ3m奥行き80cmの「無地柾目のテーブル」などというとんでもないものができてしまいます。突き板(合板の表面に銘木材の極薄板を張り合わせた板)であればどうってことはありませんが、まったくの無垢材オンリーでそれほど大きな柾目のテーブルというのはまず普通ではありえません。
しかしながら、もしこの材料を今回の仕事に使わない(使えない?)とすれば、別のスプルス材を新たに購入しなければならず、それはそれで弱小零細木工所としてはたいそう悩ましいことです。