カヤの木のこぶ材(バール)を主材にして作ったサイドボード。大きさは幅880mm、奥行300mm、高さ568mmです。表からは見えませんがケヤキも棚口板や背部幕板に使用しています。いずれも何十年も前に作られ長い間裁縫台として利用されていたものの再生利用(リニューアル)です。
その裁縫台2台は昨年暮れにお客様から預かったものですが、針先や砂粒などの異物をかんでいたり、反りや捻れや傷やふけがあるなどだいぶ痛んでいたので、製作はのびのびになってしまいました。とくにカヤのほうはもともとの材料がすでに最初からあまりよくない状態だったようで、あちこちに継ぎはぎや埋木の跡もありました。それらはニカワと釘止めだったのですが、それも多くははずれかかっています。
そこでまず外れそうになっている埋木などは外し、そうでないものは隙間やひびなどをエポキシ樹脂で充填接着したあと、機械や手で削ったのですが、案の定うまくは削れません。逆目が立ったり、異物でカンナの刃が欠けたり……。やっとのことで素材の板ができても、吸付桟や矧合のボルト・ナットの穴などをよけながらなので木取も一苦労です。結局どこをどう切っても削っても残ってしまう穴などは新たに象嵌しました。
下の写真で異なる材を埋めたり付け足したりしていて、その境界線が黒っぽい筋になっているのはニカワまたはエポキシ樹脂の跡。右上の蟻溝を埋めたのは今回ベイヒで象嵌的に埋めた箇所です。こちらは隙間はありません。3杯の抽斗の前板とその下の棚口板は、1枚のカヤの板から4分割したものですが、できるだけ木目がずれないように薄い手鋸で切り離しています。抽斗の摘みはこぶや埋木だらけの主材に負けないように、本黒檀を削り出して裏からクサビで締めてあります。
このサイドボードは昨日夕方にTさんのお宅に納品しました。一時は廃棄処分するかの話も出ていた母上の裁縫台が、こうして無事生まれ変わって、Tさんからもたいそう喜んでいただきました。最近になく製作に悪戦苦闘した家具でしたが、そのかいがあったと思います。