試し塗り

いま計画中の自宅ですが、できれば内部の壁と天井はぜんぶ左官仕事の塗りで仕上げたいと考えています。ただ30坪の平屋とはいえ、物置と納戸と風呂をのぞいた全室となると床面積で約25坪はあり、その壁と天井の合計はかなりのものになるでしょう。これをすべて左官材料で塗り上げるのはそうとう難問だと思います。あ、もちろん予算的にという意味です。

本来の塗り壁は下塗→中塗→上塗とすすめていきます。下地は現在では室内はほとんどの場合石膏ボード(プラスターボード)となったので、昔よりはすこし簡略化されてきたとはいえ、通常はやはり下塗→上塗の2回に分けて塗るのが基本です。それは家具の塗料などでも同様で、最低2回は施さないときれいに仕上がらないからです。

1回目はどうしても下地の吸収や付着に部分的むらが出るし、下地の材料の細かい凹凸から浮いてくる微細な粉塵や、空気中からの埃などが塗装面に付着します。塗ったものが乾いてからむらや埃などの凹凸をサンディングペーパーなどで均してから2回目の塗装をします。それでやっとどうにか均一な塗膜面ができるのがふつうです。さらに必要に応じて3回目、4回目と塗り重ねていくのですが、塗装それ自体の時間よりも乾燥を待っている時間やサンディングに費やす時間のほうが長いのもふつうです。あるいは塗る前の準備や塗り終わってからの道具類の清掃や養生のほうが手がかかるとか。つまりたいそう手間がかかるということです。

左官仕事が全般的に減り、とくに住宅の場合は壁や天井が左官仕事ではなくサイディングやクロス(壁紙仕上)にほとんどとって替わられてしまったのは、やはりその手間=工賃が敬遠されたことが大きな理由ではないかと思います。また左官仕事で建物を仕上げるには、技術的にそうとうな練度が要求されるし、気温や湿度や雨風にも大きく左右されがちです。

しかし塗り壁や塗り天井はいいですよね。見た目に落ち着きがあるし、消臭や調湿効果もあり、いかにも手仕事で仕上げたという雰囲気もすてきです。わが家の場合は最終的になにで仕上げるか、全体の予算とのかねあいもあってまだ決定していませんが、左官仕事の実現可能性を模索しています。コストを下げるには、結局材料単価が安いものを探すことと、塗る手間があまりかからないものを探すことしかありません。それからもし本職でなくとも素人が、例えば私や家族がへたくそなりになんとか自分で塗ることができるならば、自分の部屋などは自分で塗ればそのぶん工事費を下げることができます。多少失敗しても笑い話ですみますし。

 

それで石膏ボードとコテを買い、いま第一候補に考えている塗り材のいちばん小さな容量のものをメーカーから取り寄せて、昨日の夕方工房で試しに塗ってみました。「1回塗りだけで仕上がる」といううたい文句の手軽な材料ですが、なるほど骨材やつなぎがすこし入っていて、それほど苦労せずに塗ることができました。表面の肌合いの違いをみるために、1)コテでできるだけ平滑にしたもの、2)刷毛で細かい一定方向の筋を付けたもの、3)刷毛で縦・横・斜めに小刻みに不規則になでたもの、の3種類です。あまり大げさな凹凸はかえって嫌味ですが、写真くらいであればちょうどいいくらいかなと思います。たぶんこれも2回塗りにすればもっとよくなるのでしょうが、そこは我慢です。プロの左官屋さんにも塗りを試してもらっていますが、はたしてどういう結果になりますやら。

 

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